ただ、貴方の幻想を追う。 | ナノ

告白。 [ 12/23 ]

出会って、初めての冬。高校1年の冬。
クリスマスが近いその日。
俺は先輩を近くの公園に呼び出し、そこで告白した。
好きです、と。
簡単に、一言。
顔は火が出るほど赤かったと思う。

俺は祈るように先輩の手を握りしめた。

先輩は、きっと同じ気持ちでいてくれている。
そう思っていたのに、いざ告白するとなると、不安で仕方なかった。
今も、先輩の手を握り締める手が、冬だというのに少し汗ばんでいる。

先輩は目をしばたかけながら、俺をじっと見つめる。
震える先輩の唇が、そっと開かれる。

「嘘でしょ…」
「ほんと、です」
「冗談」
「冗談じゃないです」

冗談だと否定し続ける先輩に、俺は本気です、と言い続ける。

「そんなこと、」
「どうして、信じてくれないんですか」

嫌いなら嫌いだって、言って欲しかった。
信じられないではなく。
断るならば、ちゃんと断って欲しかった。
俺の気持ちを否定しないで欲しかった。


「断るなら、ちゃんと断ってください。俺は本気で先輩が好きです」
「だって、僕はドンくさくて、君なんかと一緒には」
「俺は先輩が好きなんです。ドンくさいところも可愛くて好きです」
「でも…」
「好きなんです」
「だから、」
「好きです」

嘘と言い続ける先輩。嘘じゃないと言い張る俺。

「先輩が、好きです…」

ついに先輩が根負けしたのか、俺の言葉に真っ赤になって俯いた。

「付き合ってください」
「はい」

先輩はこくりとうなづいて、俺を見上げる。

「…僕で、よかったら」
「先輩っ!」

控えめに告げる先輩に、俺は堪らずに先輩の小さな身体を抱きしめた。
ずっと欲しいと願っていた先輩がこの腕にいる。
俺と付き合ってくれる。

これ以上嬉しいことなんて、他にない。
そう、本気で思った。




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