ただ、貴方の幻想を追う。 | ナノ

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先輩が、可愛い。
先輩を俺のものにしたい。
俺は先輩に骨抜きにされてる。
先輩は、ただ俺に笑いかけているだけなのに。

それから、俺は理由をつけては図書室にいき、先輩との仲を深めていった。

先輩が読んでいる本は大抵読んだし、先輩が好きそうな本は、近くの図書館で借りたりもした。先輩と本の貸し借りをするためだ。

先輩は、本好きなこともあって、すごく博学的で、俺が知らないようなことも知っている。
俺が知らないからと馬鹿にするでもなく、俺にわかりやすく話し、俺が興味のあることは俺の時間が許すまでずっと話してくれた。

先輩が好きだった。初めは、文字で気になって、実際見てみたらもっと気になって。
あってみて話したら、もっともっと、気になって。

日に日に先輩が好きになっていく。
知らなかったことを知れば知るほどに、先輩の魅力にはまっていく。

気づけば俺は親友の孝介や穂積よりも、クラスメート達よりも、先輩の元に行っていた。


好きな本のこと、趣味の事、将来の事。
先輩に会えば、いつだって話題がつきなかった。
何時間だって時間が潰れた。
他愛のない話も、くだらない話も先輩の前ならできる。
先輩となら、ずっと話していたかった。


「先輩って、結構渋い話が好きなんですね、」
「君は結構…、ホラー好きなんだね」
「ええ。今度一緒にホラー映画見に行きませんか」
「や、やだよ。僕ホラー嫌いだもん」
「泣いちゃう先輩も見たいな、俺」
「もうっ」

むぅっと頬を膨らませる先輩。
そんな無自覚な可愛い仕草が俺をもっと夢中にさせることなんて、きっと知らないだろう。
先輩が好きだ。
先輩といると、時間を忘れるくらい、居心地がいい。
知れば知るほどに先輩を好きになっていく。
胸が、たかなるのだ。
先輩は俺を捉えて離さない。
こんなの初めてだった。


「先輩は、俺の事どういう風に見てる?」
「どどど、どういう風って?」
「先輩から見て、俺はどういう風に見えるかってこと」

本を読んでいた先輩に投げかける。辞典なみに分厚い本だ。
先輩は少し悩んでから、

「朔夜君は…そうだな…、柔らかな光、かな…?」
といった。

「光…?」
「優しくみんなを導いてくれる…光。
みんな、その光に誘われて、寄ってくる。けして、君は曇らない光なんだ」
「光、ねぇ…。先輩ってすごい例えをしてくるね。流石文系」
「そそそそ、そんなことないよっ」
「俺にとっての先輩は…じゃあ、――」


俺にとって先輩は、希望だった。
先輩は俺を光っていっていくれたけど。

実際の俺は光でもなんでもない。
先輩と会うまでは、全て適当だった。

一通りできてしまうから、全て力を抜いていた。
何が楽しいのかなんてわからずに、周りに合わせて、笑っていた。

全て、どうだってよかったんだ。

 親友である孝介が怪我した時だって、可哀想だと心配しながら、実際は大丈夫だと笑いかける孝介に何もできなかった。
孝介のことに気落ちしていた穂積に、何の言葉もかけられなかった。
俺は薄情ものなのだ。親友だったのに。


だから、俺は光なんかじゃない。
もし、俺が光だというのならば。
それは、先輩がいてくれたからだ。

俺を癒してくれる、俺の希望である先輩がいたから。

先輩がいて、俺は初めて輝けるのだ。先輩のことを思って。


先輩って、俺のこと好きなのだろうか・・・。
先輩は時折、俺をじっと見つめてくる。俺と同じ恋するような目で。
だから、俺も期待してしまう。
先輩も俺が好きなんだと。




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