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楽しみだった新しい生活も、数か月もたてば、新鮮味がなくなり、徐々に気持ちもだれてくる。 新しい気持ちがなくなり、目新しさもなく、ただなんとなくで毎日が過ぎていく。 学生生活ってそんな事の繰り返し。そして、いつの間にか卒業していく。
穂積と孝介とは、結局違うクラスになった。俺は1年C。穂積はD。孝介はEだ。 高校でも、腐れ縁が続けばいいとは思っていたけれど、そこは無理だったようだ。 大人数のマンモス校だから、はなから同じクラスになれるとは思っていなかったけど。
放課後は、たまに三人で帰り馬鹿をしたり、カラオケにいったりするが中学の時より交流がなくなっていた。
穂積も孝介も、俺には何も言わないがそれぞれ忙しいらしい。 二人とも、どこかピリピリとした空気を纏わせていた。 表面上は変わらない二人だけれど、俺に笑いながらも、どこか今までの二人の関係とは少しズレが見えた。 二人ともそれは俺に悟られたくないらしく、上手く隠しているようだったけれど。
なんだかそれまでとは違う、俺たちの距離≠ンたいな溝が見えた。 見えない壁みたいな、拒絶が見えたのだ。 少し距離を置かれ、さみしい気もしたが、二人が何も言わないようなので、俺も知らないふりをしていた。
俺も俺で、新しいクラスになれるのに必死だったから、そこまで真剣に気にしていなかったのかもしれない。二人の間に流れるギクシャクしたものを。
そんなわけで、親友二人とは少し疎遠になり、クラスメートとの友情に力をいれた。 放課後や休み時間などは、いつもクラスメートらと一緒に行動している。
クラスメートとの親交を深めつつ、どこかなにかが足りない≠ニ感じながら毎日を過ごす。 勉強もスポーツも、友人も充実しているのに、何が足りないんだろう。わからないまま日々は過ぎていく。
中学からやっていた、剣道部にも入った。 中学の時部活で嗜んでいて、ほどほどに強かった俺だけど高校ではもっと強い先輩がうようよいた。 そんな先輩たちに学びながら、部活に打ち込んでいく。
楽しい、楽しいと思うけれど、なにか足りない。部活でもない。
物足りなさを感じながらも、一日一日が過ぎていく。 気が付けば、入学して数か月がたっていた。
「富山、富山って、彼女いたっけ?」 「あ?」
昼休み。母親の作った弁当をつついていたところで、一緒に昼を食べていた友人から切り出された。周りには、俺のほかに、3人の友人。今日は天気がいいので、屋上で陣をとってのんびりとした昼食を取っていた。
「んだよ…。いないよ、いませんー」 「うわー、朔夜くんもリア充じゃないんですねー」 「うっせー」
余計なお世話だ。じゃれ合いながら、軽く友人を小突く。
「でも、朔夜くらいだったら、中学時代、結構こくられたんじゃね?」 「うーん、まぁなぁ…」
曖昧な返事を返す。 中学時代…は、まぁ、モテた。 それでも、孝介っていう、サッカーのスーパープレイヤーがいたから、そこまで目立ってはなかったと思うけれど。
中学時代は、生徒会長なんかもやっていたから、まぁ、それなりに…モテたと思う。 どれも長続きしなかったんだけど。
俺の理想って、意外に高かったらしい。
俺の事を一番に考えて、俺を大好きって言ってくれて、でも控えめで、遠くから俺をサポートしてくれるコ、それが理想だったから、中学時代はそんなコには巡り会えずことごとく振ってきた。
これだ、って言う子がいなかった。 ある意味、とっかえひっかえだったと思う。 誰でも良かったのかもしれない。 恋愛に、相手が重要だとは思わなかった。 ただつまらない日常に暇つぶしにでもなれば。 そんな俺の心が透けて見えたのだろう。 最初は俺をしたっていてくれた女の子達も、次第に俺から遠ざかっていった。
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