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男前で、明るい孝介に、綺麗で控えめな大和撫子のような穂積は男同士にも関わらず、中学の時は皆に祝福されていた。誰も二人の付き合いをどうこう言う奴はいなかった。
二人の親以外は。 あ、担任もなんか言っていたのかな。とりあえず、クラスのやつらはみんないいやつで、男同士にも関わらず、普通の付き合いをしていたと思う。 はやし立てることは多々あったけど。
二人はどこにいても、ラブラブで…正直男同士なんて…と最初は嫌悪していた俺だけど、二人のおかげで今は男同士の恋愛には寛容になった。 といっても、自分が誰か男と…とは思わなかったけど。
こういう愛の形もあるんだな…って、変に差別することはなくなった。 二人のおかげで、見解が広くなったのかもしれない。
「孝介、」
低い不機嫌な、声。 噂をしていた穂積が、孝介の姿を見つけ、むっと顔を顰める。 軟派から助けてくれなかった彼氏に怒っているのだろう。
美人な恋人穂積の登場に、孝介はぽりぽりと居心地悪そうに頭をかく。 孝介は不機嫌に顔を顰めている穂積にわりぃわりぃ、と両手を合わせ、平謝りした。 穂積は穂積で、腕を組んだまま、表情を変えず。 むすっと、明らかに不機嫌そうにしていた。
そんないつも通りの二人が可笑しくて、俺はクスクスと笑う。
「入学、おめでとう、穂積、孝介。これからも、よろしく…な」
新しい出会いに、予感に、俺は胸を高鳴らせ、笑った。 その時は、まだ俺はこれから起こる事なんて全く予想していなかった。
子供、だったのだ。 何も知らない、ガキ、だった。
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