恋する笠松くんのネジが緩い
おッ、女の子、と!付き合うってことが、そもそも初めての俺だ…(万が一誤解されちゃ困るから、男と付き合ったことも無いって事を一応ここに記しておく)。必要以上に触れた事だってないし(歳相応に見たいとか触れたいとか頬ずりしたいとか舐めtげっほゴホっ、あー、ああ…うん、えっと、思ったことは、もちろん…あるし、それは、こう…生物として当たり前の欲求って言うか…不可抗力ってやつであって、それにッその、特定の誰かに触れたいと思ったことは無いんです、ホント、だから、その…エロい奴だとか思わないで…ください…)女の子をじっと見つめたことなんで無い、というか出来ない。まともにしゃべることだって叶わなかった俺だ。ああ、笠松幸男だ。「女性恐怖症」とか「ウブ松(笑)」とか「サクランボーイ」とかバカにされ続けていたが、とうとう、こ、恋…!!なんてものをしてしまった訳だ…!!隣を歩く、丸い頭がかわいいみょうじ。同じクラスのみょうじおなまえ…さんに、こう、なに…蕩けそうな…顔面蕩けてマジで目玉とか歯とか零れ落ちそうなくらいドロンドロンになっちまうわけで、まさか自分がこんなアホになるなんて思っても見なかった…怖ェ…正直怖ェ…恋って怖ェ…

「でね!笠松くん待ってる間にサッカー部の子が」

あー可愛い…部活上がりに沁みる笑顔だよなァ…。俺、自分で知らなかっただけで本当は女の子大好きなんじゃないだろうか?って自分でちょっと心配になるくらいみょうじが可愛く見える。感情に上がり下がりする眉とか、もう、つるっとした鼻の頭とか、楽しそうに縦に横にぱくぱく動くくちび、くちびあーくちびるゥー…触ったら、ダメだよな…おいおい、落ち着けって、そんな、気持ち伝えて付き合うようになって何週だよって話ですよそうですよ。いきなりくちびる触ったらそれはもう痴漢だ、痴漢。事件にはならずとも学校新聞に載ったら死ぬ。クラスの奴に知られたら死ぬ。森山にバレたら死ぬ、今世紀最大の笑いのネタにされる…ってのもあるけど、絶対ダメ。みょうじの事、怖がらせたりしたら嫌だし、そもそもそんな度胸ねぇし…。あーでも、くちびる、かーわいいなー…ぷるっとしてて、柔らかいんだろうな…、…うん、あんま考えないでおこう。都合が悪いぞ…こう、年頃の健全な、かッ、下半身的に…。

「バスケ部がんばってるねって!笠松くんは偉いねッ」

弾む声に耳がとろかされてしまいそうだ。みょうじがいる左側が、あったかいような気がするとか言う頭おかしい錯覚まで起こしてる。それくらい好きで、そうそう、好きなんだよ。みょうじ。偉いねなんて手放しで褒めてくれるとことか、もう、その笑顔がたまらなくって、写真とって額にいれて部屋に飾っておきたいくらいご執心だよ、でもお前はそんなの全然知らないんだろうなーみょうじの所為で俺がどれだけおかしくなってるかなんて、これっぽっちも分かってくれていないんだろうなー、そっちの方が俺としては都合がいいんだけど、そうなんだけども、あの、えっと…それくらい好きなんだよみょうじ…。授業中に先生がみょうじの事呼んだだけで、ちょっとニヤけちまうくらい好きで、教室で、みょうじのしゃべってる声が耳に入ってくるだけで幸せな気がして満たされて、本当に…それくらいお前は俺に影響してるんだって事で…好きで、すっげぇ好きで…あ、いや…口に出さない俺も悪いのかもしんねぇけど、その…そんなの言って、気持ち悪がられたくねぇし…多分、普通に学校生活の中でみょうじ好きだーって思ってふわふわしてる分には、その部分なら、みょうじに、伝えられない、どうしても言いたくないッッ!!って、わけじゃ…ねぇよ?ねぇんだよ?でも、ほら…俺、男の子だし…身長178cmあるし…?…うん、その、いかがわしいことも考えてるけどなんだよ、もう、仕方ないだろ、好きなんだもん…みょうじさん、好きです。あーん、もう大好きーってみょうじの耳の穴に侵入したいくらい好き。穴に侵入ってのはちょっとごめん、やっぱ無し…ってかね、その、ほれ…なに?

「みょうじ…さ、てッ…てて、手」
「…えっと、ダメ…ですか?」

小さな手が、きゅっと俺の右手を握る。なんかもうサイズの所為で握るってかすがりつくみたいに…。手が手に抱きついてるみたいだ。あったかくて柔らかくって、触れてる部分が夢見心地でたまらなくって、手が手のまま手として指5本支える土台としての仕事をこなして形状を保ってることが信じられないくらい…なに?あーもう…好きで溶けそう…いっぺん溶けておきたい…。

「だ、ダメじゃ…無い」
「へへっ、よかった」

手を、繋ぐと…みょうじは、嬉しいのか…。俺も嬉しいことがみょうじも嬉しいって、すごいよな…。嬉しくて、こんなあったかくて、気持ちよくって…好きで…あーわけわからん…好き、みょうじ可愛すぎ、幸せで溶けて見せようか?そういったら笑うか?笑うなみょうじは。でも明日には森山にチクって(自慢して)そうだから、言わねぇ、絶対言わねぇ…。けど、俺も手がつなげて嬉しいってことは、ちゃんと伝えたくって、気合を入れて、こっそり深呼吸して、ふにゅっと痛くないように、ゆっくり握り返してみる。う、わ…柔らかい…。ちらっとみょうじの顔を見てみれば、ちょっと驚いたような、恥ずかしそうな、嬉しそうな複雑そうな顔ではにかんだ。5ファール即退場のレベルの反則で、もう、感想が間に合わねぇ…。手の中ではっきりと、みょうじの細い指とか、硬いつめとか、柔軟な手の平を感じて…あ、やばい、勃ってきた…

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