笠松くんがマゾ松くん
「シバくぞ?!」
「もうシバいてるじゃないっスか〜!」

今日も体育館には元気な怒号と悲鳴が響き渡る。朝一番に学校に来て、笠松くんたちバスケ部が練習してる姿をこっそり眺めて、練習が終わったら笠松くん達に交じって一緒に教室に行く…というのが私の日課でありまして。本当は、笠松くんと2人っきりでイッチャイチャラッブラブ(無理だけど)しながら朝一番を楽しみたいんだけど、森山くんがそれを許してくれない。笠松1人だけ女の子と一緒なんて許せるか?!って…ね?許せるかって…森山くん…何様よ…

ドカっと効果音の文字でも降って来そうな勢いで、笠松くんが1年生の黄瀬くんの背中にとび蹴りをかます。かわいそうに黄瀬くんは腰を擦りながら泣いちゃってる…。笠松くん、乱暴は、よくないよ!よくない!!暴力はなにも生まないよ?!むしろ問題の種だよッ!!人と人ならお口で話し合いが出来るでしょう?!もっと、もっと穏やかに…!!蹴っ飛ばしたり殴り倒したりで人を支配しようとするだなんて言語道断!!鬼畜外道の所業だよ?!そんなのよくない!!良いわけない!!


パチン

みるみる赤くなる笠松くんのほっぺた。キレイに指の形まで残って、まるでスタンプみたいだなーって思うの。毎度毎度。空き教室の真ん中で、正座した笠松くんは、ぽかんとしたまま赤くなったほっぺたの、私の手形に合わせるように自分の手を添えた。ああ、叩かれたんだ。って今分かりました現状理解あーなるほどなるほど…って時間をかみ締めて、そのうちに、くりっとした瞳に気色のいい涙が滲んでくる。きゅっと結んだ唇が、歓喜と興奮にふるふる震えてるのが可愛くてたまらない。

「どうして黄瀬くんに、あんな風に乱暴するの?」

斜め上から吐き捨てると、大袈裟にもビクリっと肩を揺らす笠松くん。ああ、こんなアングル普段じゃ考えられないなー。笠松くんの方が私よりずっと大きいんだもん。見下ろすなんて到底無理。つむじが可愛いなーってのも、つい最近知ったこと。そう、笠松くんの意外過ぎる性癖と同じに。

「ぅっ…ご、ごめんなさッ」
「謝って欲しいわけじゃないの」

普通に、普通にね?考えればね?可笑しいでしょ?いくら笠松くんの恋人だからって、部外者であることは変わりない私が、バスケ部の教育方針に口出しするなんて変な事だ。だから、もしも笠松くんがみょうじには関係無いだろ?って叱ってくれれば、私はしおらしく謝ってへこへこしてごめんねごめんね笠松くんおなまえでしゃばったことしちゃってごめんね?いや、嫌いにならないでッおなまえの事嫌いになっちゃやだよう笠松くんとお別れなんて絶対に嫌だよう笠松くんの機嫌が直るんなら私なんだってするよ?おちんちんお口でしてもいいし、笠松くんがお尻の方の穴に入れたいって言うんなら私3日間絶食してお尻キレイにしておくよだからねぇ笠松くん嫌いにならないで私の事嫌いにならないで!!って位なんだけど…

「ぅうッ…や、だ…ァごめっなさッ…みょうじっ、ごめッやァ、だ…嫌いにッな、らな…やァ…俺ッ、あ…みょうじっ、やだァ…うっ」

何の許しを請うのか、笠松くんは必死に私の足にすがり付いて呂律の回らないごめんなさいを繰り返す。耳まで真っ赤にして、ぽろぽろと涙を零す様はまるで、粗相を咎められた子どもだ。懸命に私にすがる手はいつもと変わらない、たくましくて大きくて、余計な肉が無い筋張った男らしい…その、とっても、大好きな笠松くんの手な訳なんだけど…

「謝って欲しいんじゃないの」

触れてた手を、振り払うように足で空を蹴って、そのままお行儀良く正座してた笠松くんの太ももを踏みにじる。かかとの方で、ぐりィっと。

「ッみょうじ…」

きゅうっと悲しそうに眉をひそめる笠松くんだけど、私は知ってる。ちゃんと分かってるよ笠松くん。その目が嬉しい気持ちいたまらない!って涙と光に満ちてること。はい、ここできちんと笠松くんの性癖を振り返って見ましょう。簡単だね、こいつ実はマゾヒストなんだっていう。

「ねぇ、蹴り飛ばさなきゃいけないくらい黄瀬くんは悪いことしてたの?」
「違ッ…ごめんなさいッ、みょうじ…はッあ…」

筋肉がついてて丈夫だって言っても、一方的にかかとで踏みにじられれば痛いに決まってる。可哀相な笠松くん。可哀相で可愛い笠松くん。私なんかに、咎められる必要の無い事で理不尽な暴力を受けて…さらにはそれが気持ちいいなんて…どうしようもない。大変に可愛い。

「だから、謝って欲しいんじゃないの。理由がききたいの」
「みょうじッ…ふゥぐ…アっ、足…ンぅ」
「ねぇ、下見てちゃ分かんないよ笠松くん」
「ふぅンッ!」

ぎゅっと笠松くんの顎を掴んで無理やりに上を向ければ、真っ赤かに蕩けた表情に心臓がきゅーんと痺れた…けど、ここで私が笠松くん大好きもう本当に大好き!ごめんねこんなひどい事してッ本当はこんな、こんなことしたくないんだよ?!許して笠松くん大好きッ大好きー!!って本性バラしてぎゅうぎゅう抱きしめてむっちゅうキッスかました処で笠松くんは嬉しくないんだ…!!あ、いや…嬉しくないってのは極端な言い方になっちゃうけど、今、この状況の笠松くんとしては!それじゃあ満足いかないわけで…。普段の笠松くんなら私がぎゅうってしたら喜んでくれると思う。うん、ていうか喜んでるよね?

「ねぇ、理由」
「うぃうゥ…」

うるうるに潤った瞳が泳いで私から視線が外れる。はぁ、可愛い…。顎を固定されてる所為で啜りきれないよだれでべたべたてかてかぷるうるに輝く唇が、困り果てた眉が、まだうっすら残ったほっぺの跡が…

「しょ、しょりぇふぁ…きしぇが」

パチン

「私と2人の時に、他の人の話しないで」
「…あッみょうじ…みょうじー!!」

腰にがばっと抱きついてきた笠松くんの勢いで、姿勢が崩れて思いっきり尻餅をついて…う、わ…尻餅って尻餅とかちょっと可愛い感じだけど全然、なんかもっとこれ、暴力的な名称にしたほうがいいよ…すっごい痛い…もう、これは…すごい…

「みょうじッ、みょうじッ…うぅッみょうじー!!」
「か、笠松く」
「みょうじみょうじッ…んむぅう」

おっぱいともお腹とも言い難い絶妙な溝に顔を押し付けてむむむっと私の体に入り込んで来るかのようにぐりぐりーっと顔を押し付けてくる笠松くん。か、かわ…かわいい…!!尾てい骨の痛みも腰への振動も全て忘れてみょうじみょうじしてくる笠松くんの頭を抱っこして笠松くん笠松くんしたいのは山々なんだけど…なんだ?笠松くん…足に当たってる、熱いものは…

「ふぅェ…みょうじ…あ、の…俺…」
「勃っちゃったの?」
「あぅ…ご、ごめんなさッ…」

甘い言葉も甘い仕草もなしでその気になれる笠松くんもちょっと考え物だけど、それに乗せられちゃう私も問題だ…。あ、でもそれで上手く行ってるんなら良いか?発情した目で見上げてくる笠松くんが可愛すぎて思考回路が完全にショートしたので私はキスしかできなくなりました。(それ以上は流石に学校では無理だよ笠松くん)(…みょうじ)(学校で発情した罰)(えッ…)(学校終わったらお仕置きね)(…みょうじっ)





人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -