笠松くんのオスを醒ましたい
「ってことで、よろしくね!黄瀬くんっ」
「いやっス無茶っス無理っス」
「ちょっと!!先輩のいう事が聞けないって言うのか?!こンの似非モデルっ!!」
「正真正銘のモデルっス!!」

ちくしょう!!自分より背の高い黄瀬くんの胸倉を引っつかんでぐらぐらさせてみたけどいまいち迫力に欠けるというか、黄瀬くんは私に胸倉ぐらぐらされてぴーぴー泣いてるけど、これ実際には全然こいつ辛くないんだろう?!可愛い子ぶってぴーぴー言ってるけど本当は私の攻撃なんて全然通用してないし怖い顔したって知れてるしこんな可愛い手じゃこんな大男泣かすことなんて無理ってこと私だってちゃんと分かってるんだっ!!まるっとぱくっとお見通しだったわけだけど!!

「だって!脅してでも、力ずくでも黄瀬くんが協力してくれなきゃ、私も笠松くんも大事に貞操を守ったままの健全高校生(笑い)の称号を誇らしげに掲げる事になるんだよ?!先輩がそんな不名誉な称号受けていいと思ってんの?!」
「別に悪い事じゃないと思うんスけど?!」
「うるさいっ!!私としては早く笠松くんに男らしい、というか男の部分?!を見せ付けて欲しいわけだよっ!!分かるかこの乙女心がっ!!分からんだろうちくしょう!!」

バスケットボール部主将の笠松幸男くんと健全な交際を始めてそろそろ2年になる。バスケだーい好き☆な笠松くんは、部活がどれほど忙しかろうと、部活に時間を割くあまりおろそかになってしまいがちな勉強だって寝る間も惜しんでがんばって、むしろクラスではトップの郡に入るくらい頭が良くて、それでもそれでもちゃんと私と会う時間をどうにか作ってくれたり、あえない日にはメールないし電話をくれたり、甘いときなんて手紙なんて書いてくれちゃったりなんかしちゃったりして…!!本当に女子力高い彼氏でありまして!!彼女の私としては大変誇らしいし嬉しいし大好きだし可愛いしかっこいいし、公式試合は友達を無理やり連れて観覧しに行った挙句その一生懸命にきらきら輝く笠松くんの姿にとうとう涙まで流しちゃうくらい大好きでたまんなくって、あのー、たまんないわけなんだけど…!!

笠松くん!!女子力が上回っちゃって、相当スパイスが足りてないって言うか!!手繋ぐ時もわきわきしながら女子中学生みたいになっちゃうし、キスするときなんて!!ぎゅううっと目を瞑って顔真っ赤にして私からキスするのを待っちゃうような可愛い…可愛い子で!!本当に、なんで私のほうが彼氏じゃないんだ?!ってくらいの、そういう、笠松くんで…!!

「『どうしたら笠松くんが辛抱たまらんで私を襲ってくれるかを真剣に考える会』っスか…」
「そうなんス」

ベタだけど、誰かに襲われている私を笠松くんがキーック!パーンチっ!!でギッタギタに伸したあと、あられもない姿で恐怖に身を震わせているか弱い私の姿に、いけないと分かっていても男性的な部分が自然に反応してしまい…いやっ!!でも俺は…俺はみょうじにそういう事を求めているんじゃないんだっ!!我慢しろ俺っ耐えるんだ俺っ!!ここで彼女を本能のまま狼のように襲ってしまっては、さっきの不届き者と同等の底辺の人間に成り下がってしまう…!!みょうじを怖がらせるわけにはいかねぇぜ!!ここはぐっと抑える所だっ!!ってぐっと本性を隠して、自分の上着を私にかけるでしょ?そこで私が悲しい声で「笠松くん…抱いて」って!!そしてこの一言で笠松くんの中の全てのフタ?ダム?的なものがぜーんぶばーん!!ってはじけちゃって、今まで我慢してた、私の事を思って我慢していた性欲に忠実に解き放たれて本能のままに乱暴にがっつんがっつん私にくらいつくって言うシナリオを…!!そういうシナリオを!!私としては用意してあるので、後必要なのは、私を演技で襲ってくれる協力者。もちろん本物の変態なんて怖すぎるので、それっぽい演技が出来てなおかつ内情をしっかり理解してくれるような人材…を!!見つけ出して屋上に連れてきたしだい。

「俺ぜってー嫌っスよ?キャプテンの反感買いそうだし…」
「えー!!なんで?!私がこんなに頼み込んでるのにっ!!ほら前金だって!!」
「前金って!!この飴、こないだ俺がみょうじ先輩にあげたやつじゃないっスか?!ひでぇ!!」

ポケットを探ってみたらなんでか飴がころっと出てきたので、とりあえず突き出してほっぺにぐりぐりしてやると、とうとうイケメンモデル期待の1年生スーパーバスケプレイヤーKISE☆は涙を流しちゃって、あー!もう!!なんかいたたまれないっ!!ちくしょう!!これじゃあ私すげー嫌な先輩じゃんっ!!ただの純情乙女なのにっ!!酔っ払い絡みおじさんの如しじゃないかっ!!

「…もういい、そこまで嫌がるなら他の人に頼む…」
「へ?ほんとっスか?!やったー!!」
「うーん、そこの反応はもうちょっと気遣って欲しかったなァ!!」

飴をぐりぐりした所為で赤くなったほっぺを擦りながら、片手でガッツポーズよっしゃよっしゃー!!をしてる黄瀬くん…。く、くやしい…!!私ってそんなに重荷だったのか?!

「もう、いいもん!森山くんに頼むっ!!」
「え?!森山さんっ?!」

笠松くん曰く、残念なイケメン…。つまり色ボケ大ボケな森山くん…。本当は森山くんには頼みたくないんだけど…だって、話がこじれそうだし、森山くんとか突然本気になって襲い掛かってきそうで怖いし、そのあと作戦が成功したとしても森山くんに痴漢役を頼んだことを笠松くんにこっぴどくお説教されそうだし…。…でも、黄瀬くんがやってくれないならしょうがない…

「じゃあね、黄瀬くん。私、森山くん探しに…」
「ちょっ!!待ってくださっ」

脱力仕切ってた私の腕を、ぐっと引っ張るは身長189cm、体重77kgの大男。焦った様子の黄瀬くんに力加減なんて出来るわけなくって、さらには私は体育の成績アレなくらいの軟弱者でしてそういうわけでありまして…。ぐらりと傾く視界に、一瞬映ったのはプレイボーイ黄瀬くんじゃなかった。ネクタイを少し緩めて気の抜けた表情をこわばらせる大好きな人。気づけばたくましい胸板に抱き止められてて、そのまま崩れちゃわないようにぎゅっと、これまたたくましい腕が体にからみつく。頭の上からは必死そうな声が降り注ぐ。笠松くんが居ることに気が付いてないようで、なんでか腕を放そうとしなかった。目が合った笠松くんは顔を青くして赤くして汗をかいたり青筋浮かべたりはたまた泣きそうになったりと、大変…大変な事になってる。あーん、かわいい

「急に倒れるから!驚いたっスよ!!」
「ん…笠松くん助けてっ黄瀬くんに犯されるっ!!」
「黄瀬てめぇええぇええ!!みょうじに触るんじゃねぇえぇええ!!」
「げっキャプテっぁああぁああぁぁあ!!!!」

黄瀬くんを蹴っ飛ばして吹っ飛ばして殴って殴って蹴って殴って激しい罵声を浴びせて踏んで蹴って叩いて引きずって蹴って殴ってから、一瞬ちらっと私のほうを見て「もう大丈夫だよ!」的な眩しい笑顔を見せてくれる笠松くん。まぁ、今回はその笑顔で満足しておくとしよう…!!あと、黄瀬くんにはなんでも食べたいものをおごってあげよう…

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