通常運行な緑間の妹は大変
もうやだッ!!あんなお兄ちゃんいやだッ!!お兄ちゃんって捨てる時なに?!何ゴミ?!燃えるごみ?燃えないごみ?粗大ごみ?!お兄ちゃんってどうやって捨てればいいかも分からないので、最近の私は真面目にお家をでようかと思い悩んでいます!! 「おい!おなまえ、ちゃんと俺の用意したパン…」 「ひぎゃあああ!!勝手に部屋に入ってこないでって言ってるでしょッ?!」 「勝手ではないのだよ、ちゃんとノックはした。迷惑にならぬよう、そっと」 「それじゃあノックの意味ないじゃんッ!!」 学校に行くため、自分の部屋で制服に着替えようとしたら無駄に背の高いおにいちゃんがぬめーんと部屋に入り込んできた。カオナシみたいッ…!!気色悪いッ!!ちょうどパジャマを脱いだだけだった私は花も恥らう乙女の下着姿で、家族にはもちろんお兄ちゃんになんて一番見られたくない姿なのに、そのお兄ちゃんはといえば何食わぬ顔で私のベッドに腰を下ろしてこっちをじっと見ていた。体にぼっと火がつくみたいに恥ずかしいのと、苛つきが爆発する。 「お兄ちゃんッ!!見ないでよ出てって!!」 「おなまえ、なぜ俺の用意したパンツを穿いていないのだよ?」 「ッ!!っだまれェ!!出て行けェ!!」 「むっ、兄に向かってなんと言う口の利き方…!!」 「なんで毎日毎日、お兄ちゃんが用意したパンツ穿かなきゃならないのよッ!!今日こそは絶対に穿かないんだからッ!!私は今までの、昨日までの私じゃないんだからッ!!」 「穿かないと言うのなら、俺が穿かせてやろう。どれ、その小洒落たパンツを脱いでみせるのだよ」 「ぎゃあああああ!!!!ちょっ、やっン!!触らっなッい!やぁああぁぁああ!!!!」 「はっはっはっは!!観念するのだよおなまえっ!!!!」 「真太郎ー、おなまえー、いつまで遊んでるのー?朝ごはん食べちゃいなさいよー?」 お気に入りの下着を引きちぎられて強制的にお兄ちゃんが用意したパンツ(天ぷらのイラストワッペンがついた白い綿のパンツ)を穿かされた…。もちろん私だって力の限り抵抗したんだけど…身長195cm体重79kgの現役バスケットマンにか弱き乙女が敵うはずも無く…今日も結局お兄ちゃんの特性パンツを穿いて学校に行く事になった…。もう嫌だ。もう本当に嫌だ…!!玄関でお母さんからお弁当を受け取ると、最後の確認と言わんばかりにおにいちゃんが私のスカートを捲って、お尻のワッペン部分をぱしんって叩いた。 「ようし!さぁ、行こうかおなまえッ!!」 「黙れッ!!お母さんッ!!もう私こんなお兄ちゃん嫌だッ!!家出するッ!!探さないでくださいッ!!」 「あら…おなまえ、遅くなる前に帰ってきなさいよ?」 「家を出るって言ってるのにッ!!この兄にしてこの母親ったら!!」 「おなまえ!お前の携帯電話にはGPS機能が搭載されている!何処にいても何をしててもお兄ちゃんにはぱっくり丸見えなのだよ!!」 「どんなGPS機能ッ?!」 というか、そもそもなんで私はお兄ちゃんが用意したパンツを穿かなきゃいけないんだ?しかもいつも、いつもいつも謎のイラストワッペンが…パンダとかウサギとか、まだ許容範囲の日もあれば、びっくり箱とか山菜とかデジカメとか!!到底パンツの柄としては不採用過ぎる理解不能なワッペンの日もある…!!きっとお兄ちゃんがアイロンとかでじゅーってやって貼り付けてるんだけど…。なんであれ、あんなわけの分からないワッペンついてんの?嫌がらせか?しかも柄かぶった事ないし…なんだろう?もしかしてなんかの呪い?お兄ちゃん独自のぱっくり丸見えGPS機能搭載型パンツ?! 「ねぇ、お兄ちゃん…」 「どうしたおなまえ」 …今日はラッキーアイテムが招き猫だったらしいお兄ちゃんは、重たそうな招き猫の置物を背負って私の隣を歩いている…。顔は、顔はっていうかスタイルとか容姿?はすごくいいんだよお兄ちゃん…。背高いし、顔は甘い感じ…?でも凛々しくて、誠実だし、とりようによっちゃあ優しいし…。でも占い狂って言うのが珠に傷…傷って言うかもう、その所為で珠が粉砕…。 「なんで私に変なパンツ穿かせるの?」 「それはお前が自らラッキーアイテムを身に着けようとしないからなのだ」 「いやいや、だって…私あんまり、占いとか…」 「俺のようにラッキーアイテムを独自のルートで入手するのが、お前にはまだ困難だろうと思い!!俺は甘んじてお前のラッキーアイテムのイラストワッペンを!!早朝、綿100%穿き心地満点の婦人用パンツに施しお前に穿かせてやっているのだよ!!感謝されたいくらいだ!!」 「そういうのが迷惑なのよッ!!もう本当にやだ!!ってか天ぷらのイラストワッペンって何?!天ぷらがラッキーアイテムならおごってくれればいいじゃん!!」 「天ぷらがラッキーアイテムだと教えれば、お前はどうせ反発して食べようとしないだろう?!」 「そうだよッ!!」 「ほうら見るのだよっ!!!!」 だからパンツにしておいたのだよ!!なんてプンプンしてるお兄ちゃんは実に不愉快だ!!ムカつく…くっそう…いかにも、自分は親切な事をしている正しい事をしているってていで話されるのがムカつくお兄ちゃんがムカつく…!!だいたいお兄ちゃんは本当に占いを信じすぎだッ!!前に、夜学校帰りにたぬきの置物持ち歩いてたら、怪しすぎて警察に職務質問受けたりしてお母さんとお父さん呼び出されて大変だったくせに…!!それでもまだ占いだとかラッキーアイテムにこだわって…!!思春期の所為かなんでもかんでもお兄ちゃんに関することはムカつく!!気持ち悪い!! 「もうやだ!お兄ちゃんと一緒にいたくないッ!!」 「…!!一緒にいたくないなんて言うなッ!!いいか?俺とおなまえは血液型、星座、誕生石、誕生花、どうぶつ占い…!!何をとっても最高のパートナー、運命の相手と称されるほどまでに相性がいいのだっ!!兄妹と言う戸籍上の縛りが無ければ、俺はおなまえお前を伴侶として迎え入れたいくらいに思っているのだよ?!」 「気持ち悪いッ!!お兄ちゃんと結婚?!」 「いやいや…お前が俺と結婚したくてたまらない気持ちも分かるのだよ?だがしかし、法を犯すわけにはいかない…なぜならば俺たちは兄妹」 「結婚したいなんて言ってないッ!!」 「だがしかし!生涯一緒にいられれば、これからも今までのように一生俺がおなまえのラッキーアイテムの用意をしてやれるのだよ!!」 「…そういえば、お兄ちゃんってその…招き猫とか、どっから持ってくんの?」 「…っ!!」 急にお兄ちゃんが黙った。時間が止まったみたいに、口を開いたまま、じっと私を見つめたまま…とっても深刻な問題でも突きつけられたみたいに。…なッ、なんだ?!怖いッ!!身長195cmの大男が招き猫を担いだままじっとこっちを見つめてくるってすっごい怖い…!!ど、どうしたんだ…?!いくら嫌いだって言っても…さすがにお兄ちゃんが急に壊れちゃったってのは、不安になるし、心配になってしまう…。 「お、お兄ちゃ」 「…おなまえ、お前…そんなにも俺の事が気にかかるのか?」 「もう知らないもういい一生お兄ちゃんとは口きかない」 |