葛藤する日向先輩
朝練の時にタオルを体育館に忘れたことに気がついたのが昼で、どうせ昼飯食ったら体育館で3Pの練習するつもりだったからいいかって思った。それでもどうして、タオルって、無いって分かると無性に欲しくなる。禁断症状じゃねぇけど、手洗うときにやっぱ要るし、昼飯食ってるときに茶とかこぼしたらすぐ拭けねぇと困るし…タオル無しの俺にはどうしてもタオルが必要になる場面がくるんじゃないだろうか?という不安に苛まれる。

「しょうがねぇ、取りに行くか」

弁当ももってって、体育館で食ったらすぐ練習すれば時間もうまく節約できるし。そう思って机に開きかけた弁当をたたんで体育館へ急いだ。

昼休みも始まったばかりで、体育館は自主練に励む生徒の姿もまだ見られず静かなもんだった。静かなうちに集中練習しておこうか?体育館前方の舞台に忘れ去られていた自分のタオルを見つけて、取りに近づくと、とんでも無いものを見つけた。

「…おなまえ、ちゃん?」

バスケ部のマネージャーが居た。居たってか、寝てた。死体みたいにきれいな姿勢で真上を向いて寝てた。…この様子じゃあ、昼休み入ってから寝にきたって感じじゃねェな…けっこう熟睡してる…。授業サボって寝てんのか?いや、まぁ…俺たち部員より先に朝練の準備してくれたり、洗濯とか水分補給とか体力要るだろうし疲れるし…帰りも遅きゃあ、眠くなるよな…って、だからって…体育館で寝るか?もっと、見つからないとこ探して…って!!そういうんじゃねぇよ!!授業サボっちゃダメだろ?!監督にバレたらクビにされかねねぇぞ?!

「ちょ、おなまえちゃん!おなまえちゃん!!」

声かけても起きやしねぇ…ピクリともしねぇ…。規則正しい寝息を立ててるおなまえちゃんは何にも悪びれた感じがなくて、なんだか見てると気が抜けてくる。…おなまえちゃん、可愛いな…。…?!あ、えっと!!違うっ!!違う!!無防備に寝こけてるおなまえちゃんがちょっとエロいなーとか思ったわけではないッ!!断じて俺がそんな色気違いみたいなこと考えるわけねーだろだアホッ!!…俺のだアホッ!!だ、だがしかし…その、ちょっと半開きになった唇とか、そっから覗く歯とか、真っ黒なまつげとか、流れる髪の毛とか、腹の上でしおらしく組まれた小さい手とか、その…呼吸に合わせて、上下するむ、むむ…胸!とか…小さい方じゃ、ねぇよな…おなまえちゃん…ぜってぇ監督よりデカい…。夏合宿が楽しみ…

「とか思ってねぇよ!!だアホッ!!いっぺん死んで来いッ!!」

こともあろうか自分の部のマネージャーを…!!そんなエロい目で見てんじゃねぇぞ?!くっそ!!くっそ!!思春期とか言い訳にしたくねぇッ!!年頃の男の子だからとかッ!!全然キャラじゃねぇしッ!!違う違う!!むしろこれはいっそおなまえちゃんだからだ!おなまえちゃん、部活のマネージャーとしてがんばってくれてるし、いい子だし可愛いしいい子だし、バスケの勉強がんばってていい子だし!優しいし、プロテイン割るのうまいし、蜂蜜レモンとかちゃんと作ってきてくれるし気遣いうまいしいい子だし可愛いからッ!!だから!だから…だからだ…うん。そうだ、決して俺は色気違いなんかじゃない、決して…。…ってか、おなまえちゃん…無防備すぎでしょ?最初に見つけたの俺でよかったと思う。

「起きなよ、おなまえちゃん」

ほっぺたつついたって起きやしない。これ、本当…この子、危機感無さ過ぎ。危ねぇよ本当に…。だ、誰かに…その、本物の色気違いに、なんかされたらどうするつもりだよ…、まぁ…学校じゃそんなやつ滅多に居ないとは思うけど…分かんねぇだろ?ほら、水戸部とか!!あいつなんでか部活中もおなまえちゃんにだけはすげぇ愛想良いし!!あんましゃべんねぇから、そういう…何しだすか分かんねぇってか…体でけぇから!!もしも、その…おなまえちゃんとか、襲われたら…!!絶対抵抗できねぇだろ?!覆いかぶさって、きたり…したら…、…あ…ちょ、そ…あー…なんだそれ…エロ過ぎ…ちょっと自分で考えてエロ過ぎたから引いた、やめた。…部員の事、悪く言っちゃダメだぜ、俺…。

「…おなまえちゃん」

ちょっとぶっ飛んだ考えだけど、おなまえちゃん…俺に何かされそうになったら、抵抗するのかな…いや、する。絶対する…するに決まってる…だろう、けど…。もしかして…なんて事、ないだろうか?いやいや、主将とマネージャーがそういう浮ついた関係、許されるわけねぇけどさ、もしも…もしも俺がここでおなまえちゃんに覆いかぶさって…そ、の…キ…キスとか、しようとしたら…嫌がって、暴れて、泣いたりするんだろうか…それも、ちょっと見てみ…たいとか思ってんじゃねぇよだアホッ!!でも…今だったら、気づかねぇんじゃね?寝てるし…起きそうにもないし、ってか起きねぇし…

「おなまえ…ちゃん?」

返事は無い。抵抗も、多分無い。顔を近づけて、仰向けになってるおなまえちゃんと対面すると、眼鏡が重力に引き寄せられる。ヘタな試合よりも緊張する…。キスとか、もし…して…おなまえちゃんが嫌がらなかった…俺たちどうなるんだ?

「主将?」
「ッ黒子ォォオオ?!おっま!!おまえッ!!いいい、いつからッ?!」
「…主将がタオル取りに体育館に」
「はじめからかァァアア?!?!」
「あ、日向先輩…?おはようございます」
「みょうじさん、おはよう」
「あ、黒子くん!おはよー」
「なっ、なっ…(全部、黒子に見られてた?!)」
「寝るなら体育館で寝たほうが、おもしろいものが見られるって言ったでしょう?」
「ね!黒子くんすごい!起きたら目の前にすごい顔した日向先輩が居たー!!」
「謀ったなッ?!」

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