学パロ犬塚が年上彼女に…
「はい、いらっしゃーい」
「ほーい、お邪魔しマンモスー」

開くとぎぃっとうるさい比較的ボロアパートの一室の、重たくてふちっこがちょっと錆びてる扉を開けながらおなまえさんはわははって声を上げて、白くて小さな手で髪を梳いて「何それー?」って俺の方を振り返って小さくて白い歯を見せて笑った。ああ、そんなん…その笑顔がたまんないからたまんないくらい好きだから言うに決まってんじゃん、俺普段はこんなアホな事いわねぇよどっちかってーと突っ込みのほうだよ、でもおなまえさんが楽しそうに笑うからわざと言うんだよ、あほなこと。あーもー可愛いなー!!

俺はまだ学生でおなまえさんは見た目を裏切る成人済み。いや、この人セーラー服とか着たら絶対に学生でいけるってマジで…コンビニで酒買うときに絶対に身分証明書出せって言われてるし、なんかいまいち垢抜けてないって言うか…ああ、いやそれは失礼だよな…でも俺はそういうとこ、好きだけど…ってかセーラー服のおなまえさんってヤバっ…!!自分で提案しておいてだいぶツボってしまったのでこれは今晩だいじにベッドの上あるいは風呂場で愛でよう。一足先に部屋の中に入っていくおなまえさんの後を追って俺もおなまえさんの部屋に入る。

いつも同じにおいがしてる。すっげぇすっげぇいい匂いで、初めて来たときになんか芳香剤でも使ってるのか?って訊いたら「へ?」って聞き返された。これはもちろん「屁」ではないし、「え?なに?今なんて言った?」の「へ?」でもない。あの時のおなまえさんの驚いた間抜けな顔…「なんでそんな事訊くの?」の「へ?」だ。…結局、この部屋には芳香剤もなければお香とかなんちゃらフレグランス〜みたいなのも無かった。…というわけでこれはおなまえさんの生活臭というか、彼女自身の匂いであって…自分の匂いには疎いっていう…あれなわけだけどよ…これが本っ当にいい匂いでいい意味で酔っちまいそうになる。

おもちゃみたいなテーブルが部屋の中央にあって、ベッドに沿うように座布団が敷いてある。いつも通りそこに座るとおなまえさんは水色とか透明な玉の連なりののれんをくぐって流しに入る。かちかちぶつかり合うおもちゃの宝石は光を反射して部屋の天井にも床にも壁にも縦横無尽に光の玉をちりばめる。いい匂いとちょうどいい狭さのおなまえさんの部屋、ぺったんこの座布団にけばが出来たカーペット光の玉、その向こうのおなまえさん。お湯を沸かす音とインスタントコーヒーの蓋を開ける音、芳ばしいにおい。

おなまえさんの部屋はあんま広くないから、台所で作ってるものとか何かを開けた匂いがすぐに部屋に充満する。2人が暮らすには狭く、1人がすこしだけ持て余す広さ…犬とか飼えばいいのに…。ミニチュアシュナウザーとか?ちょっと賢そうな小型犬とかぜってー似合うと思うんだけどなー。おなまえさんの足元うろうろ引っ付いてさ、「もー、ちょっと、邪魔だよ?蹴っちゃうよー?」って心配そうに犬に気遣って足元ばっか見て歩いてると壁にぶつかったりするんだよこの人…やべ、可愛い…。大型犬とかは…飼えねぇし、おなまえさんにはちょっと釣り合わねぇよな…赤丸とかさ、おなまえさんと遊ばせたらマジで食われそうだもんな?…うん、なんだ?…食われる、って…なんかエロい…。

あぐらをかいた太ももの付け根に乗っけるみたいに放ってあった両手が無性に気になる。…食う、だけでエロい事に直結させる…俺がエロいのか?おなまえさんを見れば短いスカートからのぞく真っ白な太もものうらっかわ。無防備さになんでか罪悪感を感じて視線を外す。倒れこむように机に突っ伏すとゴツンって結構でかい音がした。気恥ずかしさと罰の悪さに勝手に頭ん中でおなまえさんに謝る。いつも勝手にエロい事かんがえててごめんなさい…。

「お待たせしましたー、コーヒーはいったよー」
「あざーっす」

机の向かいに座ったおなまえさんは受け取ったマグカップに口をつける俺の顔を見て何がそんなに楽しいのかずっとニコニコしてる。それが本当にたまらなく好きなんだけど…近頃は、それじゃ…足りない。…正直、年上の女の人と付き合ったら勝手に相手がリードしてくれるもんだと思ってたけどそんな簡単なもんなじゃねぇらしい…。俺はおなまえさんとまだキスだってしたこと無いのに、たまーにテンションでぎゅうって抱かせてもらえるだけなのに…!!なのに平気で自分の1人暮らしの部屋に俺のこと上げちゃうし、だからって何をするわけでもねぇし!!でも部屋にはどどーんとベッドが配置されてるし!!部屋着かわいいし良い匂いするしおなまえさん可愛いしでもなんもねぇしッ!!何これ?何この拷問?って関係が続いてる…。そろそろ限界…。

自分勝手だって事、ちゃんと分かってる。でも俺がおなまえさんの事好きでおなまえさんも俺の事が好きでそして俺は健全で元気な男の子だって事も…おなまえさんに分かってほしい…。いつまでも焦らされてたくねぇし、いつまでも我慢できねぇ…

「おなまえさん」
「ん?」

立ち上がっておなまえさんに寄ると、どうしたの?って心配された。…なぁんでこの人は、こう…危機感とかねぇのかな…?無防備さに、愛しさはもちろんいっそイラつきさえ覚える。乱暴になり過ぎないように、おなまえさんの肩を掴んで床に押し倒す。体に跨って身動き取れないようにして、下から上へ体をなで上げればさすがのおなまえさんもスイッチ入るだろうと思った。…俺だってこういうこと、経験が無いわけではない…。ちょっと強引なのが好きな女だって居るんだから、もしかしたらおなまえさんもそういうのを待っていたのかもしれない。

「キ、バく…ん?」
「…シてぇ」

片手で肩をおさえてもう片手できゅっと胸を掴む。おなまえさんのを触るのは初めてで正直くちから心臓が出そうなくらい緊張して興奮した。困惑してるおなまえさんの鼻先に自分の鼻がつくかつかないかの距離で、俺の少年的願望をおなまえさんに突きつける。勝手だって事、分かってるけど…ズボンの下ではそんなのお構い無しで酷い事になってる。おなまえさんが俺のことばを聞いてあからさまに身をこわばらせた。目がうるうるしてる…ああ、だめだめそんなんされたら余計…

「ちょっ…と、待って!キバくん、その…キバくんはまだ学生さんで、私はもう大人で…あの、…あのですね、世の中には未成年淫行ざ…」

うるさいから口に噛み付いてやるとおなまえさんは電源を切られたみたいにぷちっと動かなくなった。初めて…おなまえさんと、キスする…。これでおなまえさんが俺の首に腕でも絡めてくれたら速攻でベッドの上に放り投げて次のステップも難なくクリアなんだが…どうにもおなまえさんが動こうとしない…。ただ、どんどん熱くなっていく体に興奮よりも不安を覚えた。

「…おなまえ、さん?」

唇を離して見ると、おなまえさんは顔を真っ赤にして涙をぼろぼろ零して泣いてた。…?!

「え?!わ、あ…おなまえさん?!え?!あ、あの、俺…ごめん、うーあー、ごめんな?ごめん…大丈夫?」

肩を掴んで抱き起こしてもおなまえさんは泣き止まなくって、どうにかして泣き止ませてあげたいのは山々なんだけれどもなんだこれ?いっそ俺が泣くの我慢するのに必死な状態だわ、好きな人にキスしたら泣かれた…泣かれた泣かれた泣かれた…!!

「う、わ…わたし…初めてだったのに…!!」
「え?!」

涙と鼻水でべたべたになった顔を手で拭いながらもらしたおなまえさん。心臓がぎゅーんってなる。

「う、奪っちゃった?」
「キバくんのばかッ!!」


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