燕尾服の榊先パイがどうした
※このお話はアニメ・べるぜバブ34話のネタバレに繋がるお話になっております。まだ見てないー!って方はご閲読にご注意ください。お相手は榊先パイです。




「ふぁああ〜、暇だぁ…」

今日は聖石矢魔の学園祭ッ!!なんだけど…なんでか私たちのクラスの出し物だけは人気絶不調で、閑古鳥がぎゃあぎゃあ泣き喚く勢いです…。校舎の外ではおいしそうな匂いを漂わせるたくさんの屋台に誘われて、たくさんの人が楽しそうににこにこしながら学園祭を楽しんでる…。

なんでうちのクラスの出し物(メイド喫茶)こんなに暇なんだろう…?前評判は結構良かったはずなんだけど…っていうか、あの…絶対に来てくれるって約束してくれた人が来てくれないんですけど…。学園祭という学生に許された数少ないスーパーイベントを堪能できない悔しさと、絶対に来たいって自分で言ってたくせに榊先パイがいっこうに姿をあらわしてくれない寂しさに…あとお客さんが居ないから気が抜けちゃった所為で…私のテンションは下がれるところまで下がったうえにその底をどんどん掘り下っていた。

「ん?おなまえちゃん、元気ないねぇ?メイドは元気だよッ!!元気やる気桃の木ぃ〜!!」
「あずにゃん…うん、そうなんだけど…」

いかがわしいまでにピンクのメイド服のわっふわふのスカートをちょっと危ないくらいにまでわっさわっささせながら元気に跳ね回るあずにゃん。…似合ってるなぁ、って思うし元気ださなきゃたまに来てくれるお客さんに迷惑だなーって思うけど…やっぱりダメだ…。

学園祭の出し物がメイド喫茶だよって私が榊先パイに言った時。榊先パイが優待券とか有るのかって聞いてきた。何が言いたいのかよくわかんなくてどう言う事ですか?って聞き返したら

「みょうじ嬢、1日独占指名する」

って真面目な顔で言うから、噴出してしまった。だってキャバクラじゃないのに嬢とかいうし、たかが学園祭の出し物で独占指名って…榊先パイは大げさすぎる。でも榊先パイは本当に真剣らしく私が笑ったことを怒った。

「残念ですけど、私は教室の装飾係りやるんでメイドさんにはならないんです」

だから笑っちゃったのだ。私はただ、私のクラスでメイド喫茶をやるって言っただけなのに榊先パイは勝手に私がメイドをやるんだって思い込んでた。なんだかそれがくすぐったくて恥ずかしくって…でも榊先パイが絶対に来るって言ってくれてすっごく嬉しかった。

私がメイドをやらない事に榊先パイは納得が行かないらしくずっとメイド服着ようよ、メイド服いいよメイド服、あれ着ると痩せるんだって、って私にメイド服を着させようと必死になってた。それが本当に可愛かったので、メイド服なんて恥ずかしくて死にそうだけど…榊先パイに喜んでもらえるならって思って…思い切って着たんだ。なのに…


『六騎聖が喫茶店やってるって本当ッ?!』
『ゴージャスでセレブな喫茶店なんだってー!!』

廊下を急ぐ女の子たちのきゃあきゃあ騒ぐ声が耳に突き刺さった。六騎聖が…喫茶店?あ、そういえばさっき山村くんとあずにゃんが何かしゃべってたかも…え?マジなの?六騎聖って事は…榊先パイ…?そんなやるなんて私聞いてないッ!!

「あずにゃんごめん!私ちょっと急用でッ!」
「ん?おうッ!!がってんでぃ!!」



先パイが喫茶店…私に黙って喫茶店…私のメイド服を強要しておいて自分は他の出し物で忙しいから私のメイド喫茶には来られない…?!まだ見ぬ『エグゼクティブ・カフェ』にいろいろな思いを馳せて私は走った。何人かの人が「あ、メイドさんだ」って私の事を振り返ってみたり、指差したりして恥ずかしかったけどそんなの振り切って廊下をつっきった。



「榊先パイぃぃいいいい!!!!」

入り口にたかる人の壁を潜り抜けて教室にだいぶして、息をする暇も無くエレガントなBGMにふさわしくない大きな声を出した。お客さん達が優雅なひと時をぶっつり切断しやがった私を振り返った。その中に、見つけた。

エレガントな燕尾服に身を包み、いつもよりずっとずっとセクシーな表情をたたえて給仕をして居る榊先パイを見つけて、私はそのまま榊先パイにまっしぐら。メニューを取っていたらしい先パイは、跪いていた所為で私は先パイを見下す体制になった。ざわつく店内に、榊先パイも心なしか焦っているように見えた。

「みょうじサン、どうしたんでショウか?」
「…ふふ、なんだかいいわね。メイドが給仕係を見下す図って…」
「静サン…?」



「先パイ、なにしてるんですか」
「…給仕」
「見れば分かりますよ、なんでうちのクラス来てくれなかったんですかって聞いてるんですよッ!!」

私が先パイに詰め寄ると、先パイは黒板の前に立っている七海先輩を気まずそうに視線を向けた。私もそれを追って七海先輩のほうを見ると、七海先輩はすごくきれいに笑ってこっちに歩いてきた。由緒正しいメイドさんって感じのシックなメイド服がとても良く似合っていて、私は自分のイメクラのような浅ましいメイド服を着て居ることが恥ずかしくなった。

「ごめんなさい、みょうじさん。私が榊くんに無理を言って手伝ってもらったの」
「…そ、そうだったんですか…」

七海先輩のお願いだったら榊先パイも断れないだろう…で、でも…私にちょっと連絡入れるくらいはしてくれたっていいじゃないか…!!私がもちろん不服そうな顔をして居ると七海先輩は私の手をとって、やっぱりにっこりほほえんだ。

「榊くん借りちゃってごめんなさいね、ただ、後は存分にここでいちゃついてもらって構わないから…私もいいものを見せてもらえてよかったわ」

いいもの?七海先輩の言ってるいみが良く分からないなーって思って居ると、すぐ横からケータイのぱしーっと言うシャッター音が聞えた。それがまるできっかけだったように、私に向かって跪いているような格好をして居る給仕係り・榊先パイと先輩メイド・七海先輩、そしていかがわしいメイド服を着た私は、いつのまにか格好の被写体にされていた。

「う…わああ!!と、とらないでくださいッ!ちょ、ケータイしまって…!!」
「榊くんも、よかったわね?みょうじさんのいいもの、ばっちり見られたでしょ?」
「…ピンクメイドの縞パンばっちり」

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