悪い姫川と金持ち幼女
おおきなホールを貸しきったパパとパパのお友達が集まって私にはちょっと難しいお話し合いをして、おいしいご飯を食べておいしいお酒を飲みながら楽しく過ごす会が開かれると、私は仲間はずれにされちゃうから寂しいんだけど本当はちょっぴりだけ嬉しい。大きなホールの中を竜也くんを探して歩き回ってるとみんなが私に優しく声を掛けてくれる。お腹はすいてない?のどは渇いてない?誰か探してるの?おトイレならあっちだよ、大きくなったね、可愛くなったね。みんな優しくてみんな大好き。

「あ、竜也くん!」

会場のふちっこにおいてある大きなソファーに寝転ぶみたいにして座ってる竜也くんを見つけた。私は急いで竜也くんのところにはしって行って挨拶をした。でも竜也くんはまるでわたしなんてここにいないみたいに何も聞えなかったみたいにして、何も言ってくれないし私のほうを見てもくれなかった。機械のノートみたいな、大きなケータイみたいななんだか難しそうなテレビを細長い指でさっさって撫でたり払ったりしてる。

私は竜也くんの横に座ってその機械を見せてもらおうと覗き込んだけど竜也くんが私よりもずっとずっと大きいから何も見えなかった。竜也くんの腕しか見えない。

「ねぇ竜也くん、私にも見して」

声をかけても聞いてくれない。腕を引っ張っても動いてくれない。私は悲しくて涙が出てきそうになった。なんでみんなは私に優しくしてくれるのに竜也くんだけはこんなにも私に意地悪するのかな。私は竜也くんのことがこんなにもこんなにも大好きなのに、なんで竜也くんは私の事いないふりなんて悲しい事するんだろう。喉の奥から絞られたサルみたいな声が出る。

「本当に面倒くさい子だね、おなまえちゃんは」

やっとわたしを見てくれた竜也くんは大きなため息をついて私のほっぺたをきゅうっと摘んだ。おもちみたいにむにーんと伸びる私のほっぺたをじっと見てる竜也くん。竜也くんにやっと名前を呼んでもらえて嬉しくなった私の涙は引っ込んでしまう。

「竜也くん、なに見てるの?わたしにも見して」

そういうと竜也くんはわたしのほっぺたを放してまた機械の方をむいちゃった。みしてって言ったのにまたみしてくれない。竜也くんは意地悪だ。

「ねぇ、竜也くん。なんで竜也くんは私にいじわるするの?みんなは優しくしてくれるのになんで竜也くんだけ意地悪なの?」

私が竜也くんの腕を掴んでゆすぶって竜也くんの顔の横でそうやって言うと竜也くんは私の事をにらんだ。恐かったけど泣くほど恐くないし、竜也くんが私の事を見てるってことだから平気だった。竜也くんが私の手を竜也くんの腕から引き離してとんって私の肩を押した。それで邪魔だよって言った。

「ねぇなんで」
「おなまえちゃんがお金持ちだからだよ、俺はお金持ちの女の子は好きじゃないの」

分かったらパパのとこに戻りな。そう言って犬とか猫とかをしっしってやるみたいに竜也くんは私の事もしっしってした。私はそれが悲しかった。だって私はぜんぜんお金持ちじゃないのに竜也くんは私の事をお金持ちだって言った。私のお金じゃなくてパパの会社のお金なのに竜也くんはそれを私のだって言うみたいにして私の事嫌いだよって言った。竜也くんだってお金持ちだ。竜也くんがお小遣いたくさんもらってるのを私は知ってる。だって前に竜也くんがたまに優しい時があったとき、私がキャラメルが食べたいって言ったら、私には難しくてわかんなかったけどすごく有名なホテルのおじさんに私のためにキャラメルを作ってって頼んでくれた事があった。すごく可愛くておいしそうなキャラメルがなん粒が大きなお皿に乗って持ってきてくれたとき、竜也くんが私に一粒ずつどんな味がするキャラメルなのかお話してくれたのも覚えてる。

「わたしは竜也くんが好き」
「俺はおなまえちゃんの事嫌いだよ」
「どうしたら好きになってくれるの?」

また竜也くんは私の事いないふりをする。私はまた竜也くんの腕をつかんで竜也くんが一生懸命見てる機械を覗き込もうとする。ちょっぴりだけ見えた。金髪のおっぱいの大きなお姉さんが映ってた。竜也くんはこういう女の人が好きなのかな?

「この人、竜也くんの恋人?」
「勝手に見ないでよ」
「竜也くんはこういう人だったら好きなの?」

返事をしてくれなかった。やっぱり、竜也くんはこういう人のほうが好きなのかな?だから私の事は好きじゃないのかな?私は全然この人みたいじゃないから好きじゃないのかな?私もこういう人になったら竜也くんに好きになってもらえるのかな?

「ねぇ竜也くん、わたしもこういうのになったら好き?」

返事をくれないから、何回も何回も訊いてると竜也くんはすごく怒った顔で舌打ちをして私の事を振り払った。私はボールみたいにソファの上をぽんぽんって弾んでソファから落っこちそうになった。竜也くんは立ち上がって私の事をずっと上の方から見下ろしてた。ちょっと顔が笑ってるように見えたけど、ほとんどが機械で隠れちゃっててよく見えなかった。

「おなまえちゃん、面倒くさい。そういう子は嫌いだよ」

そう言って竜也くんはお部屋を出て行っちゃった。私は竜也くんに嫌われちゃって悲しくて、さっきまで竜也くんが座ってたところに座って泣いた。ちょっとあったかいソファが竜也くんは居ないんだって言ってるみたいでよけいに悲しくてたくさんたくさん涙が出た。

私はこんなにも竜也くんのこと好きなのに竜也くんは私の事見てくれないし、お話もきいてくれないし、機械もみせてくれなくて意地悪だから、もうきっとずっとキャラメルも買ってもらえない。きっと竜也くんは私の事も一緒にキャラメルの事も嫌いになっちゃったんだ。そう思ったらもっともっと悲しくなって寂しくなった。私はキャラメルが食べれなくなってもいいから竜也くんに好きになって欲しかったのに。好きじゃなくってももっとちゃんとお話できたらいいのに。竜也くんはおっきくて私はちっちゃいけど、一緒の事おはなしできればいいのに。


ぐずぐず泣いてるとみんなが集まってきておなまえちゃんなんで泣いてるの?どこか痛いの?お腹すいたの?パパを呼んでこようか?って優しくしてくれるけど、わたしはどれも要らないからずっと首を振った。ソファのクッションを抱きしめたままずっとずっとみんなの言葉に首を振った。違うもん違うもん、どこも痛くないもん何も欲しくないもんパパが居なくて寂しいんじゃないんだもん。

「本当に困った子だね、おなまえちゃん」
「…竜也くん」

いつの間にか竜也くんが私のことソファからふわっと持ち上げてだっこしてくれてた。さっきも機械はもう持ってなくって両腕とも私に触ってた。私の事嫌いになっちゃったんじゃなかったんだ。よかった、竜也くん竜也くん!嬉しくって涙も引っ込んじゃって竜也くんにぎゅうってしがみつくと竜也くんもまわりのみんなの笑った。走って来たパパもみんなに迷惑をかけてって私の事ちょっぴりだけ怒ったけどすぐに笑った。

竜也くんが私に優しくしてくれるのが嬉しいし、みんなが笑ってるのも嬉しかった。パパが何か喋ってみんなが私と竜也くんから放れて行っちゃったけど私は竜也くんが居てくれればよかったから誰かを呼び止めるなんてことしなかった。竜也くん、竜也くん。ぎゅううって首にしがみつくと竜也くんがさっきとは全然ちがう声でため息をついた。

「ったく、本当に面倒な奴」

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