三木くんの困った顔…!ッつって
「けつまんこッ!!」

朝イチで、背中に浴びせられる罵倒として、これ以上の胸くそ悪い屈辱的な言葉があるとしたら、是非教えて欲しい。

「今日は、なんなの…みょうじ」
「いやいや!おはようけつまんこ!ひゅーひゅーかい?!」
「会話を成立させてくれ…」
「ねぇねぇ『おちんちんでおまんこずぼずぼされるときもちいの〜』って言ってくれたら、先週借りた200円返してもいいよ!!」
「そんな事言わないし、聞きたくもなかったし…そもそも僕はみょうじにお金貸してないから…」

はぁ…みょうじは、どうしてしまったんだろう…?昨日は僕を見つけるたびに「おぱんちゅ!おぱんちゅなめなめッ!!」と小さな女の子のような声で叫んだり、急に後ろからタックルしてきたし。一昨日はどこからとも無く現れて、真正面から急に僕に抱きついて…あ、いや…それ自体は…別に、嫌…ではなかったけど…。ぎゅうっと厚い抱擁を交わしたあと、「おっぱいあたった?!」とか「興奮した?!」「これくらいじゃ勃起しない?!」とか…あまりにも、その…女性らしくない、恥ずかしい発言を繰り返しては僕を困らせた。そして今朝の「けつまんこ」に続く訳だけど…僕は彼女に何か恨まれるような事をしたのか…?

3日前、実は…みょうじに、僕の想いを伝えた。僕にとってみょうじと言う存在が、どれほど特別なもので、もしみょうじからも僕の事をそう想ってもらえたら嬉しい、と。正直、断られてしまうのではないかと思った。彼女はクラスでも人気者だったし、明るい性格は誰からも受け入れられるような気持ちのいいものだった。活発で、人懐っこくて、なんと言っても…笑顔がたまらなく可愛いのだ…。

気持ちを伝えた後、みょうじは何も言わずに走って去っていってしまった…。いきなりの事で、気持ちの整理がつけられないのだろう…。その日はそう思って、彼女の返事を聞きたいという自分の気持ちを押し殺して、翌日に返事をもらえないかどうか訊いて見ようと思った…のに…。これだ…、なんだって言うんだ…

意中の人に、しかも相手もそれを認識している上で…こんな嫌がらせ…辛すぎる…。はっきりと断ってくれればいいのに…。まるで僕の気持ちをもてあそばれているようで、本当に、信じられないけど…胸が苦しかった…。みょうじの口から、汚い言葉を聴くたびに、悲しい気持ちと辛い気持ちは僕の体の中で渦を巻き、そのことについて言及できないまま…重々しい、気持ちの悪いため息となって体外に零れ落ちる。

ここの所その繰り返しで、疲れてきた…。

みょうじは…そんなにも僕の事が、嫌いなのだろうか…?


こんな風に、僕の品格を落とし入れ屈辱を味わわせなければ気がすまないほど…僕の告白は、彼女の事を傷つけてしまったのだろうか…?

悩む日々が続いた。出馬さんに相談しようかと思ったけど、こんな個人的なことで迷惑をかける気になんてなれなかった…。片想いをしていた時でさえ、こんなに辛い気持ちになったことは無かった…。僕は、僕はぼうすればいいんだ?みょうじ…


「けつまんこ!!」
「…みょうじ」

それでも、こんなに嬉しそうに僕に話しかけてくるみょうじは…やっぱり可愛くて、目の前に現れた瞬間、胸がどきりと高鳴るのは、何度蹴落とされたって、何度裏切られたってやめられなくて…。そのたびに、わかって居るくせに傷つく自分が嫌だった。

人通りの少ない廊下で、曲がり角から飛び出してきたみょうじ。ニコニコと嬉しそうに近づいてくる。両の手を体の後ろで組んで、意味深長に…じりじりと間合いを詰めてくる。

「けつまんこ!今日は私けつまんこのために自家製ヨーグルトをもってきたよ!」
「え…僕のために…?!」
「そッ!けつまんこのために!!」

このさい、呼称なんてどうでもいいと思った。みょうじが、僕のために…。なんでヨーグルトなのか、とか…そんなのどうだっていいんだ。みょうじが僕のために。心臓がドキドキするのが、体中から湧き出てくる嬉しいって気持ちが、高揚する気持ちが止められなかった。ああ、わかってる…もしかしたら、それは嘘で…どこかで集めてきた泥かもしれない。そうだ、近頃のみょうじなら、僕に対してそんな事平気でするかもしれない。突き落とされるかもしれない、僕の期待は裏切られ、大好きなみょうじは僕の心をズタズタに引き裂いてしまうかもしれない…

そう自分に言い聞かせてはみても、みょうじが差し出した可愛らしい柄のタッパーを見て、僕の感情は制御不能になってしまった。少し酸っぱそうな匂いが漂う。ああ、本当に、僕のために…みょうじが…

「じゃあ、パンツ脱いで」
「…あへ?」

言うのが早いか、手が伸びてきたのが早かったか…あまりの衝撃に、僕にはみょうじが何をしようとしているのか、さっぱりわからなかった。みょうじの小さな手は、僕のズボンをぎゅうっと力いっぱい握って、放そうとしなかった。ぬ、脱ぐ…?!僕が、ここで?!なんで下着を脱ぐ必要があるんだ?!

「みょうじ、放してくれッ!」
「だめッ!けつまんこは、けつまんこからヨーグルトを食べるのッ!」
「?!な、何を言ってるんだ?!…やめろッ放せ…」
「いやッ放さなッ…あッ!!」

ほとんど僕に引きずられるような形で、みょうじが自身の維持できるはずが無いのだ。僕は身体は大きいほうではないが、男だ。力なら負けるはずが無い。ズボンが少し下がった状態で、みょうじに怪我をさせないよう気をつけて抵抗していたけど…とうとうみょうじが体勢を崩して…手にしていた自家製ヨーグルトは…


「…あ、み、三木く…?!」

宙を舞ったヨーグルトは、余すことなく僕の頭上に降り注ぎ、空になったタッパーはまるでコメディ映画のように、帽子のように僕の頭に乗っかった。ぺこっと間抜けな音が響く。顔を伝うヨーグルト。制服にじわじわとシミを作りながら、独特の鼻を付くにおいを放っている。顎をなぞって滑り落ちるヨーグルトと一緒に、ずっと、我慢していたものがこぼれてしまった。

「もっ、う…いい…」

一粒こぼれてしまうと、我慢が出来なくなって次々とこぼれてくる涙。みょうじが目を丸くして僕の顔を見つめている。もう、いい。…本当に、もういいんだ…。ここまで、こんなにまで…僕を馬鹿にして…

「僕っは、ただ…っみょうじの事、が…」

涙と嗚咽が止まらなくなる。しゃくりを我慢しながら出す声は、不自然に震えているし、すこし鼻にかかっていて、まるで子どものような声になってしまった。

「好き、な…だけなっのに…」

肩まで震えてきてしまった…ああ、情けない。でも、そのくらい、みょうじの事が好きだったんだ。こんな事になるのなら、むしろざっくり断って欲しかった。嫌いなら嫌いといってもらったほうが、楽だった。嫌いと言われたからって、僕のみょうじへの気持ちが変わることはなかっただろうが、少なくともこんな風にみょうじに醜態を晒す事にはならなかっただろう。

「わ、わたし…」

口を開いたみょうじの声は、なぜか僕に負けないくらいに震えてて、驚いた事に、目には涙まで溜めていた。…?!どうしてみょうじが泣く必要が…?!

「三木くんッ…!!」

みょうじの泣き顔を見るか、見ないかの瞬間で、みょうじが飛び掛るように僕の頭をぎゅうううっと抱きしめた。

「ちょッみょうじ…!!」

みょうじの、その…やわらかい…その…!!あの、ふ、ふたつの…!!あの…!!う、わ…あああああ!!

「三木くん…!!三木くぅん…!!」
「うッみょうじっ…くるし…」

必死に抵抗しようにも、みょうじの力は凄まじく、実のところ僕としても…この、あれ、は…嫌ではないので…その、力が抜けてしまう。ど、どう言う事なんだ…?

「ごめんね、三木くん…私、三木くんの事大好きで、それで、三木くんの困った顔も、好きで…その、わざと困らせるような事してたんだけど」

みょうじの言葉に、体中が熱くなるのを感じた。みょうじも…僕の事…

「そ、そしたら…三木くん…泣いちゃうんだもん…!!か、かわ…かわああああああああああ!!!!!」

あとそのヨーグルト、顔射っぽくて凄くいい!!
気持ちが通じ合った今、もうみょうじがどんな言葉を使おうと僕は…僕は構わないよ…

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