ろくさんとハロウィン
「ろくさん!ろくさん!ちょっとこっちいらしてくださいッ!」
「なに?」

おばあも山蔵もみんななんだかんだ用事があって家を空けてたから、これ幸いって家でのんびりしようと思ってらおなまえに呼び止められた。障子を少しだけ開けてこっちを覗き込むように顔を出すおなまえは明らかに何かを隠しているようで…あんまりいい予感はしなかったけど、暇だし。誘われるがままに茶室に入る。

「何これ?」
「ろくさん!はろういんしましょう!はろういん!!」

着物の袖をたすきがけにしてきゃぴきゃぴはしゃぎながらおなまえが興奮して言う。はろういんって何?ハロウィンの事?え?もしかしてこの机の上に並んだご馳走は…ハロウィンのための準備?二人分にしては多くね?もともと時事に弱い…というか、世の中の行事(正月、端午の節句、桃の節句とかは抜きにして)に疎いおなまえが、まさかハロウィンの事を知ってるなんて思っちゃいなかったけど…いや、今もまだ、信じられねぇけど…

「おなまえ、ハロウィンって何か知ってんの?」
「はいッ!今朝、ちらとテレビで見たんです!どうですか?!立派なはろいんでしょう?!」
目を輝かせながらガッツポーズを向けるおなまえ。がんばったんですよー!って机の上で小皿やら、箸やら飲み物やらの準備を始める…のはいいんだけどさ…

「これ、かぼちゃの煮つけだよな?」
「はい!こっちはかぼちゃとあずきのいとこ煮で、こっちはかぼちゃのお吸い物。かぼちゃのコロッケにかぼちゃの天ぷら…それから」

やっぱり…どんな番組を見たのか知らないけど、絶対にこいつハロウィンの事勘違いしてる…。かぼちゃ使った料理を楽しむ日だとか思っちゃってるよ…。嬉しそうに小鉢の料理の説明を続けるおなまえは、可愛いんだけど…。違うって…これ、ハロウィンじゃねぇよ…。

「あのさ、おなまえ」
「はい?」
「ハロウィンってさ、外国で悪霊退散させるための祭りだって知ってる?」

ああ、だめだ。全然理解してない顔してる…。口だけが三日月みたいに笑ってるのに目がぜんぜん笑ってない…。どうしてやろう…?ちょっと意地悪な考えが思い浮かんだ。

「ハロウィンはさ、かぼちゃの料理じゃなくて菓子が要るんだよ。飴とかチョコとか」
「へ…?これじゃ、だめなんですか?」
「うん、全然だめ。で、菓子とか持ってないと悪戯されんの」
「悪戯?!なんですかそれ?!お店の外壁に落書きされるとかですか?!」

おばあに叱られます!ってあわあわ困り果てるおなまえ。なんで…こいつはこんなに馬鹿なんだろう?笑いがこみ上げてくるのを我慢して、神妙な顔つきでおなまえに迫る。ぐっと肩を掴んでたたみに押し倒すと、きょとーんと呆けた様な顔で俺を見上げる。なぜにこんなに危機感だとか警戒心だとかがないんだろう?

「ろくさん?」
「菓子持ってなきゃ悪戯しかねぇな」
「え?…あッぅ」


お菓子の代替は君で結構。
(チョコなんかよりずっと甘いよ)
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