海常マネさんと森山先輩
海常マネさんと森山先輩 「好き、愛してるを使わずに気持ちを伝えてみてください」 ふんっと得意げに、さも「簡単だ」とでも言いたげに鼻を鳴らす森山先輩。さらっと前髪を流すと切れ目の美しい視線で釘付けにされてしまった。ほのかに香るシトラスが先輩の愚直さを思い知らせる。彼のやすい言葉に乗ってはいけない。私と言う恋人がありながら、それでもインターネットや雑誌を駆使して、いつだってモテるための情報収集に余念が無い。それについて、私が寂しく思っていようが怒っていようが…きっと先輩は気が付かないんだろうな。変なとこ敏感で、大事なところで鈍感な彼が、いま、目の前で、ひざまずく… 「俺はおなまえちゃん以外の女性にも積極的なわけだが」 「自覚してるんですね」 「自分磨きに余念が無いのは、きみの為だよ?」 「…」 「俺はそろそろおなまえちゃんに見合ってきたかな?」 「…まだ、もうちょっとがんばってみてもいいですよ?」 「あ、照れてんだ。かーわいー」 「うるさいです」 |