28.催眠術
「俺がもう一度手を叩くとみょうじちゃんは目を覚ましマス」午前ラストの授業の終わりがけ。高尾からメールが届いた。『お昼チョット付き合って(^ω^)』誰も居ない、机も片付けられている教室に呼び出されて、窓に背を向けるように配置された一脚のイスに座るよう促された。晴天のお昼の、真っ白な光が教室に差し込む眩しさに目がくらんで、出入り口の扉に手を添えたまま、その教室に入れずにいた。イスの背もたれに両手をつき「急に呼び出しちゃってごめんね〜」なんて笑う高尾。光が強くて、目がつぶれそう。光に背を向けて立っている高尾の顔が陰ってて、でも切り抜いたように目だけははっきりしてて、ちょっと不気味。こっちこっち、と手招きされて、ようやく足が動いた。座って、と促されて腰掛けたイスは信じられないくらいひんやりと冷えていた。「なんか用があったんじゃないの?」そう問いかけても高尾は笑うだけで、大切なお昼休みの時間を割いて来てやったのにそんなのあんまりだ。訳も無く呼び出したって事なら、即行に教室に戻ってやる。「ねぇ、ちょっと」にらみの一つでも入れてやろうと振り向くと、その前に高尾に後ろから両手で目隠しをされた。「俺が5秒数えて手を叩くと、みょうじちゃんは眠ってしまいマス」はぁ?ふざけるな、と口を開けば、私の言葉を押しつぶしてしまう位の語気で、そして俺が、と続ける高尾。初めて見せる威圧的な態度に、萎縮した。「俺が一度もう手を叩くとみょうじちゃんは目を覚ましマス」目に当てられてた手が外されて、そっと両肩に触れた。高尾の影に入ってたおかげで、窓から差し込む強い光に目が眩むことは無かった。それでも、タイミングよく廊下に現れた長身眼鏡野郎の姿に、意識が眩んだ。両肩に乗った高尾の両手にぐっと力がこめられて軽くゆすぶられる。それにあわせて私の前髪がゆれる。1…こっちを見ろ…2…チラッとでいい、3…私に気づいて、…4…いかないで…「5」高尾がパチンと手を鳴らす。廊下を通り過ぎていった彼はその音にも気が付いてくれなかった。「ちゃんと目ェ覚ませよ…」

27.ネクタイ 同設定(?)

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