8.生意気
「黒子くんのためなら死んでもいいよ」ふと口をついた言葉の甘さと残酷さに自分でも驚いた。きっと本をよく読むようになったからだ。黒子くんが好きな本を何でも薦めてもらってなんでも読むからだ。おなかをすかせた赤ちゃんがたくさんミルクを飲むみたいに、乾いたスポンジがたくさん水を吸うみたいに、私の脳みそは黒子くんからの情報をすべて一滴もこぼすことなく吸い取って、それでもまだたりないまだたりないと胸まで焦がす。私の突然の言葉に黒子くんはつまんでたフライドポテトをぽろっとテーブルに落とした「え」って気の抜けた乾いた声が聞こえて、そんな意味の無い言葉ですらじゅるっと吸って私の一部にしてしまいたくなった。部活上がりの黒子くんとマジバに寄る。時間制限有りの逢瀬は彼の好きなバニラシェイクほど甘くないにしろ、私が薦めもらった本の感想とか黒子くんの部活の事について2人の意見を交換し合ってふとした瞬間に口元が緩むのが同時だったりするだけで文字では言葉では表せられない親密さを感じた。私はただ黒子くんが甘ったるいバニラシェイクを「今日の練習はハードだったので自分にご褒美です」といつものSサイズから今日はMサイズにサイズアップさせて照れ笑いしたのを見て、シェイク用の少し口の大きいストローを幸せそうにくわえる黒子くんを見て"痩せの糖尿病がいちばん恐い"って言葉を思い出したのだ。それでも黒子くんが幸せそうで、じっと見つめる私を見遣って意地悪に上目遣いで微笑んで「みょうじさんも一口どうぞ」ってくれたバニラシェイクが甘すぎて、黒子くんとの間接キスが幸せすぎて、あーもう糖尿病でもなんでも黒子くんと私が幸せなら死んだっていいやって思っただけだ。だけど黒子くんが「二葉亭四迷ですか…みょうじさん、生意気ですよ」顔を真っ赤にして耐えられないって風に口元を隠すからそれが愛おしくてたまらなくて「時よとまれ、黒子くんが愛おしい」結局死んでもいいのかも知れない。

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