16.真夜中
人間のどこにそんなスイッチがあるのかは分からないけど唐突に泳ぎたくなるときって確かにある。暑くて汗をかいてベタベタする肌に嫌気がさした時とか体を動かしたくて仕方が無い時とか、ああやっぱり人間って神の子じゃなく猿の子虫の子海の子だったんだなーって実感せざるを得ないくらい体全身が水を求めるときがある。なんか言ってみたけど要約すればたんに久々に泳ぎたくて仕方ないだけなんですよ私。でもプールっていちゃつく目的のカップルやら鼻たれションベン小僧やら露出目当てのクソ変態野郎やらで混雑してて鬱陶しいし地味に入場料高いし好き勝手泳ぎ回れないし屋外じゃ暑いし日焼けするし虫がいるしハトやらなにやらの羽が浮いてるしきったねぇし、スポーツジムじゃあ本気の泳ぎを強要されるし使用料半端じゃないし会員登録必要な場合多々だし面倒なので、私は必死に目の前のフェンスをよじ登る。近所の岩鳶高校のプール。今は真夜中。月明かり揺らめく塩素くさいプールの水面が私の目には命のオアシスに映る。泥棒もびっくりの手際の悪さでフェンスを乗り越え、迷い迷ってパンツ一枚になるまで服を脱ぎ捨て畳むことも準備運動もせずに大股開いてプールに飛び込む。じゃぶん。ひんやりした水が素肌にまとわりつく感じ足をかけば浮き、腕をかけば進む。うっへー気持ちいー。真夜中に近所の高校に不法侵入してパンツ一枚おっぱい丸出しでプールにぷかぷか浮いてる背徳感と開放感。潜水からの急浮上、背泳ぎで浮きながら月を眺めてぼーっとしてると何かにぶつかった「あんた、誰だ」驚いて見開いた綺麗な瞳にパンツ一枚おっぱい丸出しで不法侵入してる私を映すのは、綺麗な顔にがっしりした体(上半身裸)の男の子。「あっ!わ、わたし…ここっ、プール…泳ぎたくてっあのっ「水、好きなのか?」え?!み、ず…っす、き!好きです好きです!!水大好きです!!だからお願い通報はしないでッ!!お願いします土下座します足も舐めますなんならこのまま1回だけなら犯されたっていいですだから警察だけはゴボボガバっ」謝罪の言葉を並べながら不法侵入・変質者なりに誠意を示そうとプールに沈んで水中土下座を披露しようとしたら、上半身裸の男の子は私の肩に手(心なしか熱い)をかけて真剣な顔をずいっと私のアホ面に寄せた。わ、なにこの子イケメン・・・「水が好きな奴に悪い奴はいない。通報なんてするわけないだろ」ぐっと体を寄せられて裸の胸が触れ合った。真夜中、プール。どうにかなりそう。

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