7.ゴミ箱
はじめてのセックスは仰げば青空のお花畑のど真ん中で、夢でも見るような気分でふわりとはじまって眠るようにとろりと終わってしまうものなのかと思っていた。私が甘かったんだなーと脳みそがぐちゃぐちゃになりながら反省してる。いまどき小学生が読むような少女マンガでさえ。きちんとぱりっとシーツを張ったベッドとふかふかクッション2つとティッシュ箱とコンドームが眠っているだろう意味深な引き出しとか何かしらの描写がほどこされる刺激的で現実的なメルヘンっ子には優しくない世の中だ。そしてそれは私にまたがって、汗がこぼれるのも私が抵抗するのも構わずにずんずん乱暴に腰を打ちつけてくる宮地くんも例外じゃない。何か気に入らないことがあったのか、あるいは私がしてしまったのか今では興味も無いけれど、ただ、今まで、昨今では珍しく清い関係を続けていた私たちの無形文化財的なそのストイックな交際を、私の守り続けていた処女膜もろともブチ破ってしまった宮地くん。アイドルグッズがきちんと整頓されたこの部屋で、唯一いまの乱暴な宮地くんとの関連付けが出来そうなものは、部屋の隅のティッシュのごみで溢れているオレンジのシンプルなプラスチックのゴミ箱だけだ。痛みと重みと熱さと理想とのギャップと宮地くんに耐えながら、私はずっとゴミ箱を見ていた。終わったら私もあそこに放り込まれてしまうのか?なんて考えながら。今日の宮地くんはキスだってしてくれなかった。

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