29.キャンディ
「怒ってる?」困った顔で笑って、しゃがみ込んでる私の顔を覗き込む木吉。バスケ部大好きなこいつはお昼にお弁当を一緒に食べたいって私のささやかなちっちゃなかわいい幸せを意図も簡単にすっぽかして部員に呼ばれるがまま屋上でプチ会議みたいなのしやがってどうせわいわい楽しくピポッドとかダブルドリブルとかの話で盛り上がって、それはそれは親密で愉快な時間を過ごしていたのだ。今日は一緒にお弁当食べるって前から約束してたから楽しみにお弁当と水筒を持って木吉のクラスに行ったのに、教室の入り口近くの子に「木吉なら弁当持ってバスケ部と出てったよ」って言われて、その子もそこでとどめて置けばよかったのに「ほんとバスケ部仲良いよなー」なんて私の神経逆撫でするような事いうんだから噛み付いてやろうか?!って思ったけど、違う。いま私が噛み付くべき相手はこの子じゃない木吉だ。私との約束をころっと忘れて部活のメンバーばっかり大事にするあのボケナスくそでくのぼうだ。…で、駆け出してわきあいあいしてるバスケ部メンバーの輪に飛び込んでわーぎゃー騒いで木吉に思い知らせてやるほど私は野生的でも情熱的でも無いし衝動的でもないし、そもそもそんな、勇気?ないし…だってさ?私よりさ?彼女よりさ?部活をとったわけですよ?そんなさ?価値観おもいっきり天秤にかけられて火を見るより明らかな差別見せ付けられてね?どの面下げて会いに行けっていうんですか…。もうやだあいつ膝もっと壊れろぐじゃぐじゃになれバスケなんか嫌いになれ、そういう怨念に満ちた私の禍々しい体操座り。昼休みも終盤、木吉が現れた。「おなまえ、怒ってる?」怒ってる?怒ってるに決まってるじゃんってかもういいよバスケ部の人と一緒にいれば良いじゃん「ごめんな、急に午後練習に変更があってさ」「…もういいよ、木吉なんてどっか行っちゃえ、死ね、苦しんで死ね」そんなひどい事言うなよぉ〜なんて情けない声で泣いちゃってさ。でもそれはお互い様でしょ?「飴あげるから、機嫌直してくれよぉ、な?」「黒飴なら要らない」「残念、おなまえ専用のいちごみるくキャンディだ」「ばか、きよしばか」

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