わざとらしく脚を組む

私、みょうじおなまえは、最近なんだかとっても面白い人に好かれてしまったようです。彼は運動部が盛んな事で有名なうちの学校でも、特に抜き出たバスケ部の、レギュラーで5番を背負ってるという大変な猛者なわけだけど、すらっとした見た目からはそんなの全然。全然感じさせないくらいスマートで、えっと、体格的にもごりごりしてるわけでもないし、バスケの事しか考えられねぇぜ!!ボールが恋人!!ゴールが帰るべき所!!コートが俺の世界だぜイェーイ!!な熱い感じも微塵も感じさせないくらいさらっとしてる、って意味のスマートで…バスケ部のキャプテンの笠松くんは、どちらかと言うとこういう熱血漢だよね。ごうごう燃え盛ってる感じ…しゃべったこと無いけど。じゃなくて、そうそう、かっこいいんだよ。顔が。

いう事やる事けっこうすっ飛んでるんだけど、切れ長の目を細めて笑うとまわりの空気がキラキラするのが心地いい。細長い、真っ白な手で、適度に前髪をいじる仕草も、ちょっと自意識過剰っぽさが臭うけど、がさつで見た目気にしなーい!なタイプに比べれば全然マシ。全然いい。特に彼はそういう仕草が自然で、女の子みたいに脂とり紙つかったり、指先のささくれを気にしてたり、意味深に腕を組んだり、気障に手を振ったり…なんてのがすごく似合うんだ。かっこよくってスタイルもよくて人気もある(面白いこと真面目に言うから)そんな彼が、なんで?どうした?病気?って訊きたくなるくらい執拗に私に構ってくれるんだから、面白い。暇さえ見つければ…あ、ほら。私の様子を見て、近づいてきた。私に固執した彼の大胆なアピールに、友達が恥ずかしがって面白がってくすくす笑う姿が視界に映った。たしかに必死で面白い。でも、私は滑稽だとは思わないよ

「森山くん」
「みょうじさん、今日も可愛いね」
「ありがとう、森山くんも輝いてるよ」
「本当?じゃあそれはみょうじさんが居てくれるお陰だ」
「ふふっどうやっても私に返すんだ?」
「うん、どうやってもみょうじさんに返すよ」

やっぱり面白い。だってさ、私たちは付き合ってる訳じゃないんだ。どろんどろんに褒められはするけど好きだとか愛してるの類の言葉は聞いたことがないので、こちらとしても、跳ね除ける・受け止めるの選択が仕切れないわけで…毎日こんな感じにふわふわした会話を続けるんだ。けど…今日の森山くんは、なんか変だ。

ガタっガン!!

さっきから、その長い足を机にイスにぶつけている。…そういう年頃?学校の備品に八つ当たりする事によって反学校意識を主張しているのか?いや、まさか。森山くんに限らずとも、そんな昭和的な行動…今の世の中ありえないでしょうに…ことさら、森山くんだよ?学校に何か不満を抱いて居るようにも見えないし、むしろ謳歌しているほうだと思う。…じゃあ、なんだ?足…かゆいのかな?かきむしると痛くなっちゃうから?ぶつけて気を紛らわすの?…バスケットマンが?そんな風に体粗末に扱っちゃあダメでしょう?

ガガッガッギィッガ!!

そして、なんだろう…その、爽やかな表情は…。涼しげな流し目でちらっと私を見る森山くん。お得意の前髪を指先でサラリ、からの真っ白な歯をちらつかせての薄い微笑み、口角を上げて少しだけ眉を動かす愛嬌たっぷりの仕草という3コンボをぶちかまして、きたんだけど…ど、どういう事なんだろう…訳もわからず微笑み返すと、とんでもなくキラキラを大量生産させて、花が咲くかのようにプァアア!!っと満面の笑みを零す森山くん。な、ど、どうしたんだ本当に?!調子悪いの?!あ、いや…調子いいのかな?

「森山くん、足…」
「う、うん!!あ、えっと…!!ちょ、っとごめん!!」

大きなカブトムシを見つけた少年のように、森山くんは凄まじいエネルギーを体中から発しながら、もうどうにもとまらない!!といった様子で教室から飛び出していってしまった…。な、なんだったんだろう…足は、大丈夫だったのだろうか…あざとかになってないといいんだけど…。森山くん…本当に面白い人だなァ…呆れと感嘆のため息に、話のネタが出来たと友達が寄ってくる。ああ、もう君たち…森山くんの事をなんだと思って居るんだ…



「なぁ笠松!きけよ笠松!」
「うるせぇよ、ちゃんと聞いてるだろ」
「ちょッ笠松!!マジ笠松!!本当にッうわああああ!!」
「叫ぶなうるせぇ!!迷惑だ!!」
「『相手を誘うエロチックな動作 2、わざとらしく脚を組む』!!実践してきたんだが、コレが大成功だったよ笠松!!みょうじさん、俺に微笑みかけてくれて…!!ああもうあれ天使だった!!みょうじさんって多分24時間天使体勢なんだろうけど、さっきの一瞬は本当に大天使さまだったよ!!だって空気が!!キラキラしてたもんなッ!!すっげぇ眩しかったなんだよアレ?!召喚術?!汗が飛び散ってキラキラ爽やかキャー!!の比じゃねぇぞ?!笠松!!魔法だ、大天使さまの魔法だ…!!しかし俺の『相手を誘うエロチックな動作 2、わざとらしく脚を組む』動作…あのハートブレイカーな1000万ボルトの超雷撃の微笑みの裏では…お、俺のセクシーな仕草にぐっと…グッときちゃったってことだよな?!そういうことだよな…!!あああ!!今度デート誘ってもいいかな?!いや、でも急いては事を仕損じるなんて先人のありがたい格言もあるわけだし、まだここはじっくり…」
「出て行け」



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