まさかの水曜日

目が覚めると。体は死ぬほど硬くなってて、腕とか足を動かすとゴキボキっと不吉な音がした…。ゆ、床で寝かされるとは思ってなかった…。一緒にベッドでーなんて考えては無かったけど、恐れ多いけど…せめて客室とか、お客用のお布団とか…用意してくれるのかと思ってた…!!赤司くん、昨日の夜はペット用の扉に挟まった私を後ろから、お尻を蹴っ飛ばしたり(すごく楽しそうだった)腕を引っ張ったり(本当に楽しそうだった)私が痛い痛い言えば言うほど「うるさいよ」とか「自業自得だよ」って言ってた…なァ…。無事にペットの扉から抜けると、さっさと寝るよってお部屋に連れてってもらって、私は自分の分の布団が無い事に戸惑いながら、平然とベッドに潜り込む赤司くんを見ていた。…う、わ…目の前で…赤司くんが、あの赤司くんが…ね、寝るのか…す、すごい…なァ…指先から頭のてっぺんまで満遍なくむずむずしてとっても恥ずかしいような気持ちになった。

「みょうじさん寝ないの?」
「え?!お、お布団は…?!」
「…おやすみ」

ぽーんと投げられたのはふかふかのクッション。すごいふかふかで気持ちいクッションなんだけど…赤司くんのクッションなのか?!って思うとそりゃあ大変な興奮恐ろしい幸運なわけだけど…えっと…クッションでは、寝れないよね?!せめてコタツとか…あったら…クッションがあれば十分だけど…!!まさか床で?!クッションだけで?!

「えっと…赤司くん」
「風邪を引くような季節でもないよ」
「クッション…」
「ペットには勿体無いくらいだ」

結局、赤司くんは本当にそのまま寝ちゃって(寝息すら立てなくて死んじゃってるのかと思った…!!)私としては、本当ならこっそり寝顔でも覗いちゃいたいなー!!だってこんな千載一遇のチャンス逃すわけには行かない…!!って気持ちだったんだけど、赤司くん…ちょっとの物音で起きちゃいそうだし…赤司くんの睡眠の邪魔なんてしたら、今度は蹴っ飛ばされるとかじゃあ済まなさそうな事くらいはさすがに察しがつく…。ので、私は大人しく、本当にわんちゃんみたいに体を丸めてクッションを抱っこして、床で眠った…明日の朝は、お母さんが私の部屋に私の事を起こしに来る前に…帰らなきゃ…なー…

「みょうじさん、起きて」
「…ふぁ、…!!…赤司くん」
「ランニングに行くよ、みょうじさんの散歩もかねて」
「…い、やァ…走るのはあんまり…」
「リードが欲しい?引きずってあげようか?」
「さぁ!!ラジオ体操から始めましょうか?!全国の皆さんおはようございます!!」
「よろしい」

という事で、まさかの早朝ランニングに出かけることになってしまった…。そして、起こしてもらった時にはすでにお着替えを済ませてしまっていた赤司くん…。く、くそう…もっとちゃんと、パジャマ姿を見ておきたかったのに…!!なんて、ほか事考えてる暇は無い…あ、あかしくっ…あかしくん…!!走るの、速っ…!!む、り…!!ちょ…ついてけ、るわけ…ないじゃな、い…かァ!!というか、あかしくん…私の事…わ、わすれて…るんじゃ…?!息が続かなくって、赤司くんに追いつこうと必死に走ってるけど、差がドンドン開いていくだけで、泣きそうになった…

「みょうじ」
「…はっ、はァ…い」
「遅れてるなら声をかけてよ、置いて行っちゃうだろう?」
「ご…ごめん、なさい…」
「もう少し、スピード落とすから。隣、走って」

私がへばってる所まで戻って来てくれた赤司くんが、ちょっと意外で…呆気にとられてしまった…な、殴られるかと思ったよ…わたし…既にパブロフの犬…赤司くんの犬…勝手によだれが出てしまうみたな…。赤司くんの隣を走るのはとっても名誉な事で、とっても尊い事で、とっても楽しい、嬉しいことだ。赤司くんが見てる景色を、私も見てるんだと思うと…なんだか、赤司くんととっても親密になったような気がした。同じ歩調で進んで、同じ信号で同じ時間を費やして、同じ角を曲がる…私はランニング中にしゃべったり出来ないけど、赤司くんは平気みたいでたまにぽろっと言葉を零した。声では答えられないけど、私は頷いたり、首を振ったりしてそれに答えた。朝の光がとっても心地よくって、きっと隣で走っている赤司くんのすがすがしい表情は、今まで見たどの赤司くんよりも一番に格好よくって、ランニングの所為じゃないドキドキが止まらなかった。

「じゃあ、僕はここで」
「…へ?」

急に立ち止まった赤司くんに合わせて私も止まると、赤司くんは私の事を置いて走り出そうとした。急いでついていこうと思ったけど、違和感…ん?

「みょうじさん、ここは君の自宅だろう?」
「え?!わッ!!本当だッ!!」
「…それくらいは分かってほしかったな…」

ランニングしながら、いつの間にかお家に着いていた…まだお母さん達は起きていない時間…こっそり窓からお部屋に戻れば、夜中に抜け出していた事もバレない…。すっと伸びた背筋、じっと私のお家を見つめている赤司くんを見てると「早く帰ったら?」って言われてしまった…あ、うん…そうだよね…

「今夜から、僕が部活終わったら連絡を入れるから。それまではお家にいなよ」
「…あ、はい」
「帰りは早朝、こうして送っていくから」

じゃあ、学校で。

そう言って、走り出した赤司くんの背中を…見ていると、今までのきゃー!!赤司くんかっこいいいいいい!!うっひゃあああ!!!って爆発しそうな強烈なドキドキとは違う…もっと穏やかであたたかく、とくんとくん心臓がうずうずした…。赤司くん…ほ、本当に…かっこいいんだから、困ってしまうなァ…

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