続・たいへんな火曜日
「…下着を持ってきてない?」
「えっと…ほ、本当にお泊りだなんて思って無くって…」

赤司くんのお家すごい。すごい…だって、おうちの中にお家がある…。一番最初に、なんていうんだ?これ…江戸時代の門?みたいなの…本当にすごい門…!!をくぐると、なんか老舗温泉旅館みたいなお家があって、おーわーすっげぇ赤司くん家すっげー!!うわー!!って興奮して、ああ、私こんなすごいお家にお邪魔してもいいのだろうか?!本当に…菓子折りとか要らないのかな?!平気かな?!って大興奮してわくわくびくびくしてると、電気がついてる扉とは違う方向を向いた赤司くんに呼ばれた。え、お家入らないの?…あ、そうか!!私のような身分の低いものは正面玄関から入れるなッ!!的なアレだね?1そうだよねッそうだそうだ!!こそこそ赤司くんの方に近寄ると、なんでこそこそしてるのって笑われてしまった…ああ…だ、だって…なんだか…すごく、私には似合わないっていうか…お城みたいなお家なんだもん…そりゃあ、挙動も不振になるさ…私、小心者だしね…

「僕の家はこっちだよ」
「…あっちはおじいちゃんのお家?」
「祖父とは暮らしてないよ」
「…えっと、どういうことでしょう?」
「あれは母屋、僕が生活してるのは洋館の離れ」

赤司くんが生活していらっしゃるのは洋館の離れにございましたか…。えーっと、うん。洋館の離れって…うーん、どういうことだ?しっとりしたコケの道を踏みしめて暗い林の中の細道を歩いて進むと(お、お家の敷地内に林がある…?!)ひっそりと見えてきた古い感じの…でもすごく品良く時と雨風にさらされて歳でもとるみたいに穏やかな景観をした2階建ての洋館が見えてきた。…え、映画みたいだ…!!すげぇ…!!

「こっちだよ。ここが僕の部屋」
「部屋ッ?!お、おうち…だよねコレ?!」
「…僕の、部屋、だよ」
「り、立派なお部屋で…」

中に入ると広いリビングはほとんど空っぽで、引越しした後のおうちみたいだった。ちょっと寂しいなーって思ったけど、他の部屋はすごい…なんか、自転車?あの、トレーニングルームごと持って来ましたーみたいなお部屋があったり、シアタールームがあったり(映画のDVDもすごいたくさん在る…!!)書斎もあった(図書館のようだッ)!!あ、赤司くんって本当に…王子様みたいな人だなァ…!!さくっと案内されて、赤司くんが最後に連れて行ってくれたのは、もちろん赤司くんの自室。ベッドと、勉強机と、辞書とかが詰まった本棚と、バスケットボールが転がってるだけの部屋…雑誌とか…読まないのかな?失礼だけど、部屋のなかをじろじろ見回していると棚の中に雑誌が綺麗に並んでるのを見つけた…!!も、もしかして…赤司くん、そ、それって…!!それって…!!

「何を期待してるかなんて考えたくも無いけど、月バスのバックナンバーだよ」
「なッ、なにも考えてませんですッ!!」
「どうだか…、みょうじさんって結構いやらしい性格してるんだね」
「ご…ごめんなさい…」


そして…

「…下着を持ってきてない?」
「えっと…ほ、本当にお泊りだなんて思って無くって…」

赤司くんはトレーニングルームで汗を流してからシャワーを浴びるから、私はバスルームを使っていいよって言ってもらったんだけど、え?!本当にお風呂って、え?!マジでお泊まりとかするんですか?!今の今まで赤司くんの冗談だと思っていた私は、赤司くんが本気だった事に、嬉しいような恐ろしいような言い得ない興奮?恐怖?価値観の不一致?を感じて汗をかいた…。あ、だって…赤司くん…目がめっちゃ怖い…怖いッッ!!ごめんなさいごめんなさい…!!自然に体が土下座体勢になってしまう私は、すでに赤司くんに飼いならされているみたいだ…!!

「あ、の…でも、私たち、高校生だし…そんな…お、お母さんが許してくれないよ…お泊まりなんて…。赤司くんのご両親にも迷惑かけるし…」
「僕に逆らうの?」
「いや、逆らうんじゃなくって…現実的に考えて」

どんって、おもちゃみたいに床に押しつぶされた。驚いて息をするのも忘れてた。私の二の腕を、ぷにぷにの二の腕を握り潰しちゃう位の力で赤司くんがぎゅうっと握る。床に押し倒された事で頭をぶつけたのが痛い、赤司くんが…初めて見る、ギラギラした目が怖くて口が開けなかった。ギリギリっと近づいてくる赤司くんに、乙女心的なドキドキよりも猛獣に食べられちゃうんじゃないかって生命の危機の方を感じた…。こ、わい…赤司くん…、涙が出そうだけど…それだけは我慢した。結局わたしとしても赤司くんが大好きなわけだからこういうのが嫌なわけじゃないんだ…怖いけど…

「僕以外の人間の都合なんて知らないよ、みょうじは僕のペットで僕は主人なんだから絶対にいう事を聞くんだ。僕の命令は絶対なんだから…」
「わ、わかった…ました…ごめん、赤司くん…」

それでもどうしてもってお願いしていったん家には帰らせてもらえることになった。すぐ戻ってくるからね、って言っても赤司くんは返事もしてくれなかった。怒ってるのかな…、嫌な思いをさせちゃったかな…。いや、でも…お泊りしようぜ!!ヘイ!!オッケー!!って2つ返事に外泊が許されるほど私は大人じゃなければ、お父さんお母さんは甘くない…。とりあえず、お風呂に入って寝る準備を済ませておやすみなさーい!!を次げて自分の部屋へ…。お母さん達が寝ちゃうのを待って、その後おうちを抜け出して赤司くん家までダッシュ…!!って思って、どっきんどっきんする心臓を押さえつけながら、ベッドに潜り込む…。あー!!お母さんお父さん、早く寝ちゃってくださいッッ!!


「…もしもし」
『あ、赤司くんッわたしわたし!!』
「詐欺?」
『みょうじです!!みょうじおなまえ!!』
「…あぁ、どうしたの?電話なんて」
『いや、赤司くんのお部屋カギかかってて入れないんだよう!!開けてくださいッ!!』
「犬用の扉が、勝手口にあるからそっちから入れば?」
『あ、そうなの?!じゃあ待っててねッ!!』

…あんな事されて、逃げるんだと思ってたからもうベッドについていたのに…。彼女ったら、案外のこのこと舞い戻ってきた…。静かな部屋で耳をすませば、本当に勝手口のペット用の扉が動く音がした。…あんな小さな扉から入れるとでも思ったのだろうか…。可笑しな子だな…

「あっ、あ…赤司くーん!その、ちょ…すみませーん」

ああ、はまったんだな…
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