8.ずっと夢だったから

大きくてたくましい体、染み付いたタバコのツーンとするにおい。ヒッピーみたいな額のバンダナに、硬そうな無精ひげ…やる気のなさそうな気だるい態度とにじみ出るおじさん臭…汚い言葉遣いに荒っぽい素行…はぁん、ぎゅうってされてもっちゃもっちゃして欲しい…!!

「ってことで、早乙女先生、大好きです私の処女を貰ってくださいッ!!」
「くそったれ、そんな不穏当なこと職員室で叫ぶんじゃねぇよ!!」
「くそったれでいいです!!毎朝わたしの作ったお味噌汁をお尻から注入させてください!!」
「出来るかッ!!」
「じゃあ尿道でも可です!!」
「出て行けッ!!!!」

追い出されてしまった。

どうしてダメなんだろう?こんなにも大好きなのに…。やっぱりアレか?石ヤバの邦枝さん?なんか可愛いーとか言ってたもんなァ早乙女先生…。教師という生き物はどうして不良生徒が大好きなんだろう…みんなGTOとかの見すぎだ!!絶対そういうのにあこがれて教師になったんだ…!!ごくせんとかハンマーセッションとかさ!!ダメなお前らをまとめられる俺SUGEEEEEEE!!状態なんだ…くそう、そういうの本当に虫唾が走る…。早乙女先生もそういうタイプなんだろうか?彼はそういうのとは違うと思っていたんだけど…もしも、そうだとしたら…それは、とっても…悲しいなぁ…

さすがの私も、想い人にフラれちゃえば悲しいもので…涙のひとつやふたつ零れ落ちる。早乙女先生…せめてもの思い出に、あの胸板でぎゅうぎゅう抱きしめて欲しかった…。「気持ちはありがてぇが…俺とみょうじは結ばれちゃならねぇ関係でなんちゃらかんちゃら」みたいなさ…そういうボーナスがあっても良かったんじゃないだろうか?…まだ、あきらめるのは早いか?私…。慰めてもらえるくらい早乙女先生に縋り付いてみるのもありだよね。大号泣しながらしがみついてさ、先生が好きになってくんなきゃ死ぬ!!とか…脅してみたって、いいよね?ようし、やる気出てきた

「早乙女せんせー!!」
「ん?みょうじか」
「愛してます!!付き合ってくれなきゃ飛び降ります!!」
「唐突ッ!!」

廊下で突き飛ばされた。そのまま男子トイレに飛び込んでしまって、中に居た男の子にきゃー!!って叫ばれた…

「せ・ん・せ?」
「またみょうじか」
「先生…実は私のおなかの中には…」
「大腸菌がわんさか居るってか」

職員室で待ち伏せてたらすごい素早さで逃げられた。忍者みたいに速い…いや、忍者なんて見たことないけど…

「ちょっ先生ッ!!」
「だァ!!もう!!みょうじしつこいッ!!」
「先生ッわたし先生のこと好きなんです!!」
「だめだ!!教師と生徒だぞ?!お決まりの禁断だ!!あきらめろ!!」

教室で捕まえてみても振りほどかれてしまった。いよいよ私も乙女なところが暴れだす。涙をごまかすために顔いっぱいで怒って、もういいって、先生から離れて走って帰った。あきらめれるなら…とっくにあきらめてるってぇの!!先生のくそったれ…

下駄箱で、とうとう嗚咽まで漏れてきて息がしづらくて、顔もぐちゃぐちゃだから、ちょっとこのままじゃ外出れないって座り込んでた。もうだめだ最悪だ。こんなに好きなのどうしていいか分かんない。私の事、こんなに辛くさせるなんて、先生は悪い奴だ…私の好意に応えてもくれないし、否定があからさま過ぎてさすがに傷つくってもんですぜぃ…

「…早乙女なんて、孤独死しちまえ」

ぽつっとこぼした言葉が、冷たくて…腹いせに言ったつもりだったのに、全然すっきりしなくて。それどころかもっともっと切なくなって、余計に涙を誘った。私はバカだなぁ

「どうせなら誰かに看取って欲しいもんだけどな」
「…邦枝さんと腹上死しろ、あと爆発しろ。私の事好きになってくれないんなら先生の方が100万倍くそったれだ」
「おうおう、可愛い顔してよく言うぜ」
「ハゲろ、太れ、口臭がひどくなって歯が黄ばんで、痴呆症になって自分ひとりでトイレも行けなくなって、それでみんなに嫌われちゃえ」
「…ハゲろは禁止だ、危ねぇんだから」
「…ハゲろ!早急に焼け野原と化せ!!そうなったらもう、好きになってくれるの私くらいしかいないんだからね。邦枝さんに捨てられて素っ裸で路頭に迷ってる先生の事ひろってくれるなんて私くらいしかいないけど、先生は私の事きらいって言うからもう望み薄。残念だったね」
「おい、聞き捨てならねぇな」

ぐっと腕を引っ張られて、無理やり顔を上げられる。ぐにゅううっと顎をつかまれて顔が変形しそうになる。でも抵抗なんてしたら格好悪いと思って、じっと先生を睨みつけてやった。ああ、ちくしょう…くわえタバコがたまんない、どうしてそんなにかっこいいんだくそったれ

「嫌い、なんて言った覚えはねぇぞ」
「だって付き合ってくれないんでしょ」
「いや、責任持って男女の事を教えてやるつもりだけど?」
「…好きでもないのに?これってボーナス?」
「いや、みょうじちゃんの事、じつは大好きだけどね」
「…?!じゃあどうして」

にっこり笑ってふざけたことを口にするくそったれ。

「女子高生が必死に言い寄ってくるのあしらうって…、いいよなァ!!男教師のロマンだッ!!」




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