ミルキーときみ
ころころころ…口の中に甘く滲むミルキー。赤いパッケージにイヤらしい女が舌なめずりをしながら私の事を見てる。むむむ…なんだこいつオーバーオール着てるくせに私の事をこんな…こんな小ばかにした顔で見やがって…!!

「おい、おなまえお前すげぇ顔してるぞ」
「療治…この子絶対に私のことバカにしてるわ、ミルキーしゃぶってまだ乳離れできてないわけ?って…絶対に私の事馬鹿にしてる、そういう顔してるもの」
「…本格的な治療が必要だったらいつでもいい医者紹介してやるからな」

私の肩にぽんっと手を置いて私の事を哀れむような酷い目で見下ろしてくる療治。くっそ!!なんだよお前ッ!お前のほうが医者必要そうな顔してんじゃないのッ!!いいかげんその八重歯どうにかしなさいよ!あんたの八重歯はもうチャームポイントの域を超えてんのよ!人外よ人外ッ現代版ドラキュラよッ!!

「あ、ねぇねぇなんでドラキュラって血ぃ吸うか知ってる?」
「なんで急にドラキュラの話になるのかが分かんねぇんだけど」
「長生きするためかな?長生きの秘訣って人間の生き血?」
「というかドラキュラって本当に存在したのか?」
「え?嘘なの?だって映画いっぱいあるじゃん!」
「さぁ、自分の目で見なきゃなんとも…映画なんてほとんどフィクションだぞ」

ええええ?!ドラキュラって居ないの?じゃあ私が見たキアヌの映画も全部嘘なの?!あれめッちゃ怖かったのにッあれ嘘とか酷いッ私アレ信じて本当に怖かったんだぞ?!マジでもしも私になにかおかしなことがあったらすぐにアンソニー・ホプキンスに連絡するようにお母さん達に言っといたけど…ああ!!そうか、アンソニーだってアレ役かッ!!本物の霊媒師?とかじゃないのか?!くそおおおお!!騙されたぁああ!!

「でも、母乳は血から出来てるらしいな?」
「え?そうなの?じゃあ私長生きする?」
「いや…だとしたら全世界ご長寿さんで溢れかえるだろう」
「へー、母乳って血が元なんだー!なんか気持ち悪いねー」
「気持ち悪くは無いだろう…」

ん?だとしたらアレ?コレ…私がしゃぶってるコレ…ママの味って事は母乳の味?ってことはあれ?血?血の味?こんなに甘いのにもしかして血でできてる?え、え?うそうそそれはないよそれはないさすがにそりゃないけどなんか気持ち的な問題でミルキーしゃぶってるの嫌になってきたどうしよう…

「療治、ちゅうしよう、ちゅう」
「なんだよ急に…」
「いいからッ!ちゅうちゅう」

なんだよ急に…とかいっといて顔がまんざらじゃなく赤くなってる療治はバカだ。馬鹿で可哀相で可愛くて好きだ。ぶちゅうっと口付けた療治のくちびるはいつもどおり柔らかくて、でもやっぱりいつもどおりドラキュラみたいな大きな八重歯に私の歯がかちっと当たる。私が療治の歯に舌を這わせると待ってましたと言わんばかりに療治が私の頭に手を回して覆いかぶさるようにして抱きすくめてべろりーんっと私の口の中に自分のべろを入れてきた。さぁここだ!!

「ふぶぇッ!!なんだよッこれ?!…甘ッ!!」
「へへへ、ミルキーはママの味ぃ〜。療治お母さん好きでしょ?ママのおすそ分けー」
「残さず最後まで自分で食えッ!」

がぶり、似非ドラキュラにもう一口やられた。


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