こんぺいとうとぼくら
今夜は100年に1度って騒がれてるとっても珍しいなんちゃら流星群の日だって今朝のニュースで見た私は喜び勇んでアルフレッドに電話して彼の家のガレージにある埃まみれになった天体望遠鏡をほじくりだして、1日かけてそれを丁寧に綺麗に掃除をしてピンともあわせて今夜はばっちりロマンチックな流れ星の群れをウォッチングするぞぉ!!って思って時計の針が進むにつれて私のテンションもどんどん上がっていったのにどうしてなんで…空を流れる雲は黒く、その量は多くなっていった。 ぽつぽつと、とうとう雨粒が窓を打ち始めるころには私のテンションは地面を掘って前人未到の地下帝国にまで到達しようとせんがごとく下降を続けた。三角座りをして部屋の中から窓の外の真っ暗な空を眺めていると、そういえば夕方ごろから姿が見えなくなっていたアルフレッドが帰ってきた。雨に打たれたらしく「ひゃあ〜まいったまいったー」ってそれでも楽しそうに部屋に駆け込んでくる。私はきっと服が濡れたまま歩き回って部屋中をベタベタにしてしまうだろう彼のためにバスタオルを取りに行こうと立ち上がる。 「おなまえー!ただいまー!!」 「うん、おかえりなさい。はい、タオル」 おー!サンキュー!!とタオルを受け取るアルフレッド。天体望遠鏡を準備しているときは彼だって流星群を楽しみにしていたのに、今の彼はどうだ?星とか宇宙とか大好きなくせに悪天候の所為でそれが見れなくなっちゃうっていうのに…なんでそんな楽しそうにして居るんだろう?私は全然面白くない。ああ、せっかく大好きな彼のためにたくさん流れる星にたくさんお願いをしようと思っていたのに。アルフレッドのメタボリックが早くよくなりますように、アルフレッドのアホが早くよくなりますように、アルフレッドのファーストフード依存症が早くよくなりますように、アルフレッドと私がずっとずっと一緒に居られますようにって…。それでロマンチックな星空の下で二人で抱きしめあえればもう最高だったのに…。 「ねぇアル、なにが楽しいの?」 「んー?知りたいかい?あ、でもやっぱり内緒なんだぞッ!!」 なによそれ…。もう付き合ってらん無いって思ってもう1度窓のそばに座って真っ暗な空を眺める。何処かに雲の隙間なんて出来てないかなー少しの間だけでもいいから晴れてほしい一筋でもいいから流れる星が見たい。 「はぁ…ッ?!いたッ」 こつん 頭に何か硬いものが当たった。それはカンカンっと軽い音を立ててフローリングを跳ねて何処かに走っていってしまった。なんだ?アレは…そう思って追いかけようとするとばざばざぁと紙袋の中身を乱暴にぶちまける音とこつこつこつっと体中に走るさっきと同じ痛み、ほんのり香る甘い匂いと目が眩むような彩り鮮やかな何かが私の目の前を走り流れ思い思いの方向へ散って飛んで跳ねて転がっていく。な、に…これ?! 「アルフレッド…?!」 「はっはっはー!!どうだいおなまえッ!!俺の星は?!」 キレーだろ?!これ食べられるんだぞッ!!そう言って私の服に引っかかっていたピンクの一粒を摘み上げて口の中に放る。こりぽりっと可愛い音を立てながらアルフレッドはウィンクを飛ばしてきた。私も床に落ちた一粒を拾う。見覚えのある日本の古いお菓子だ。 「コンペートーって言うんだぞッ!!」 「うん、知ってる」 「星が見えないのは残念だけど、だからって君まで曇っちゃう事無いんじゃないかい?」 だって君には雨が降ろうと槍が降ろうと俺がついてるじゃないかー!!そう笑い飛ばしてくれるアルフレッドはやっぱり間違いなく私のヒーローで、金平糖の星空の中で彼は私に飛び切り甘いキスをくれた。 |