苺大福とオレ
今日のおやつであるころりとまあるい可愛い苺大福は甘いあんこの匂いの中に爽やかなちょっと酸っぱそうなフレッシュ苺のにおいがして、私は盆にのせたお茶と一緒に竜二の部屋へと運んでいく途中に何度もその誘惑に負けてしまいそうになった。

「竜二、おやつのじかんですよー」
「おなまえ…部屋に入る前に一声掛けろと何度言わせれば」
「あ、すんませんすんません…でも早く食べなきゃ苺大福の鮮度が…」
「下がんねぇよッ!!」

ぷんぷん怒ってる竜二はそれでも卓上の小難しい本とか巻物(?!)を片付けて私が持ってきたおやつを待ってる。竜二こんな怖い顔して苺大福好きだからなー可愛いなーでもすげぇ似合わないなーおもしろいなー可愛いなーってにやにやしながら竜二の事を見てると早くしろって怒られた。

私は竜二とは違っていい子で素直なので竜二の言うとおりちゃんと机の上に盆を乗せて彼にお茶を差し出す。暖かい湯気がもわもわと竜二の顔に触っててその匂いを竜二はすこし楽しんで居るようにも見えた。あーそういう顔…かっこいいなー珍しく眉間に皺が寄ってない。

「なんだ、人の顔をじろじろ見るな」
「人の顔じゃない、竜二の顔」
「俺は人だッ!!」

竜二の顔を見てたら睨まれて怒られたので私はおとなしくお茶を一口すすってから苺大福に手を伸ばした。今日の苺大福はイチゴがまるっと大福の中に隠れているタイプの苺大福で、そういえば苺大福ってこうやってまるっとイチゴが包まれてるのと大福にイチゴが挟まってるのがあるのなんでかなーって思った。なんで?って竜二に聞こうと思って竜二のほうを見ると、彼は既に苺大福にかぶりついてて大福の粉がついた唇にフレッシュジューシーなイチゴの果汁が噛むほどにじゅぶじゅぶとあふれ出していて…大層エロかった。大好きな苺大福の味に酔いしれてるっぽい彼にしては珍しいとろけた表情がさらにいやらしく感じさせて不覚にも胸がきゅんとした。

「竜二、えろ…」
「あ?」
「いいえ、なんでも」
「…?」

「そういえば、苺大福ってなんで二種類あるんだろうね?イチゴが隠れてるのと出てるの」
「さぁ…販売店の視覚的差別化とかじゃねぇの」
「なーるほど」

かじった苺大福の断面には黒いあんこの中にひっそりと隠れてるしおらしいイチゴ。てらりと光る果汁が酸っぱくてでも美味しくてすぐに二口目に走ってしまう。私はイチゴが隠れているほうが好きだな…なかのイチゴがどんな大きさなのかとか楽しみがあって…隣で黙ってもぐもぐしてる、竜二はどうなんだろう?

「竜二はどっちが好き?イチゴが隠れてるのと出てるの」
「ん?味に違いは無いからな…どっちも一緒じゃねぇか?」
「それでも答えて、見た目としてはどっちがすき?」
「…じゃあ、イチゴが出てるほう…だな。一目で苺大福と分かるし」
「そうか、竜二は割れ目に押し込んであるイチゴが好きかァ」
「ッ?!な、なんだその不穏当な言い方は…?!」

それを不穏当な言い方とか言っちゃう竜二が好きよ。


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