豆大福とわたし

雅次さんは普段ご飯食べる時なんでも小さく切り分けたり少なめにとったりして、上品にむぐむぐ良く噛んで時間をかけて食べる。良く味わってるんだなーとか上品だなーとか大人だなーっていつも感心しちゃってかっこいいな素敵だな!ってドキドキしちゃうんだけど…だからこそ、これにはちょっと驚いた。

「なに?粉ついてる?」
「あ…いえ、大丈夫です」
「じゃあ何?おなまえさっきからずっと俺の顔見てる」

そりゃあ見ますよ見まくりますよ。今はちょうどさっきまで降ってた小雨も上がってしっとりとなった裏庭を臨みながらこれまた少し湿った濡れ縁に腰を下ろして、あたたかいお茶と大きな豆大福を二人で楽しんでいたところだったのだけど…。

正直、とってもいい雰囲気だったんだ。うっそうとした裏庭は少し重たい空気がまた赴きもあったし空気も綺麗で時間の流れがそこだけしっとりとゆっくりと流れていた。私は雅次さんと裏庭の話をしたり互いの親密な話をしたり…静かにどきどきする胸をそっと抑えてにやける顔を必死で我慢して少しでもおしとやかな女の子に見えるようにがんばった。上品で大人な雅次さんに似合うよう…って

思った、のに…。もったりとした豆大福に大きな口でかぶりつく雅次さん。そんなに口開くのか?!って驚くくらいに口を広げて豆大福の90%くらいを口に入れてしまう。口の端っこに粉をつけてほっぺたをぱんぱんにして眼鏡がくらくら揺れるくらい顔全体でお口の中の豆大福をもぐもぐもぐもぐ…。今までの上品で大人な…そんな雅次さんのイメージが豆大福と一緒にぐちゃぐちゃにつぶれていく。け、っこう…ショックで私の開いた口はふさがらない…。豆大福にも手が付かない…けど、雅次さんの手がどんどん進むので盆の上の豆大福は次々と姿を消していった。

「あ…豆大福、お好きなんですね?」

私が絞り出したような声を出すと雅次さんはくるっと私のほうを振り返って、まるで子供みたいな顔で笑った。あ、口の端にひっついた粉ふえてる。

「うん、俺これ大好きなんだよねー」

ああ、でもこんな雅次さんも嫌じゃないな…。


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