04 持ち弁です

今日は天気がいいので、ランチタイムにとっておきな場所が無いかと校内を散策していると見つけた屋上へ繋がる階段。

重たいドアを押し開けると、そこにはすでに先客が居た。

「あッ、古市くん!男鹿くん!」
「わああ!!みょうじ先生ッ!どうしたんすか?!奇遇ですねッこんなところで!!」
「こんなところでって…校内で会ったって不思議じゃねぇだろ」
「うっせぇ男鹿ッ!ささッ!先生どうぞッここ座ってくださいッ!!」

ブロックをイス代わりにしてお弁当を食べていたのは、私のクラスの古市くんと男鹿くんだった。男鹿くんはいつもの赤ちゃんを抱っこ、古市くんはパンを頬張ってた。

古市くんに進められるがままに私もそのお弁当の席に参加させてもらうことに。ああ、本当にいい天気だなあ

「古市君たちはいつもここでお弁当?」
「大抵ここっすね!人少ないしッ」
「ここならゆっくり昼寝も出来るしな」
「へー、なァんかいいねー」

なんだか2人はこの学校で唯一、学生らしいというか…歳相応な感じがする。可愛いなぁ…お姉さんとかになった気分だ。まだ、『お母さん』ほど歳は離れてないはず…!!

「あ、先生持ち弁なんっすか?!」
「え、あー。そうだよ、自前ェ」
「て、手作り…!!先生のてづくりっすか…!!」
「はむッ…んー」

手作りって言っても、朝は時間が無いから大したものは作れない。卵焼きとかウィンナー焼いたやつとか。でも今日は、昨日の夕飯の余った材料で小さなポテトのコロッケがあった。

古市くんはキラキラした目で私のお弁当を覗き込んで、手作り手作り!!とよだれをたらしてた。この子は…おもしろい子だなぁ…成長期だし、自分の分じゃ足りないんだろうな…きっと

珍しく綺麗に焦げ目が入った卵焼きを、一口サイズに切って、古市くんに差し出す。

「食べたい?」
「…ッ?!いいンすか?!」
「うん、古市くんには色々お世話になってるし」

ぽん、と古市くんの手に卵焼きを乗せると、古市くんは少しだけ表情を曇らせたけどすぐに笑ってお望みであればどんなお世話もしますよッ!って意気込んでた。

古市くんの奥に居る男鹿くんは、ひざの上の赤ちゃんにヨーグルッチを飲ませてあげていた。…男の子だけど『お母さん』って感じするなぁ

「男鹿くんも、食べる?」

ああ、美味い!ああ、幸せだ!って卵焼きを本当に幸せそうに頬張る古市くんを超えて、男鹿くんにコロッケ(1/4)を差し出す。男鹿くんはビックリした顔で私を見た。

「俺?」
「そう、俺。食べる?コロッケ嫌い?」

手を出せって言うつもりで、箸をちょいちょいっと振って見せると、まるで魚釣りのように男鹿くんはぱくっと箸に食いついた。

あ、

「お、男鹿ァアア!!てめぇ!先生から『あーん』なんてズリィぞッ!!」

先生、なんで俺には「あーん」してくれなかったんですかァ?あーんあーん!!涙を流しながら悔しがる古市くん。ごめんね、また今度ね。頭を撫でながらあやしているとすぐに泣き止んだ。

男鹿くんは、嬉しそうにするでもなく、味の感想を述べるでもなく、ずっと口をもぐもぐしてた。おいしかったか、どうか位、言ってくれてもいいのになァ

「ねぇ、男鹿くん、味は…」

私が男鹿くんに声を掛けようとすると、空から突然大きな影が現れた。

ばっさばさァっと凄まじい音がして、空を見上げると、そこには見たこともない大きな鳥?が居た。

「おい、また坊ちゃまのミルクを忘れて行っただろう」
「ああ、悪ぃ悪ぃ」
「あ!ヒルダさんッ!!」

色々略して、金髪美人のヒルダさんがご登場。

はっはーん、この子男鹿くんの彼女だな?ッて言う事は、赤ちゃん(ベルくん)は男鹿くんとヒルダちゃんの子ども…乱れてるなぁ…高校生…。男鹿くんそんな感じには見えないけどな…。っていうかヒルダさん?ヒルダちゃん…も、なんだか…その、常人離れしたような雰囲気が…

「誰だ、こやつは」
「あ、はじめまして!男鹿くんのクラスの非常勤講師のみょうじです!」
「ほう…教師、か。しっかり頼むぞ」
「あ、はい!がんばります!」

不思議な瞳で私のことをキッと睨んで、すぐに表情を崩したのがなんだか可愛くて、見とれてしまった。

ヒルダさん。綺麗でセクシーで、ちょっと高慢そうな、気の強そうな女性だ。

男鹿くんとよく似合う感じ。いいなぁ高校生。きっとあの3年間って人生で一番楽しい時期だよ。マジで。高校生にもどりたーい



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