02 危機感おぼえました
古市くんと男鹿くん(赤ちゃん少年)のおかげで、なんとなくこの学校のことが分かった。…うん。わかったよ…とんでもない学校に配属されたてことはよく分かりました。


石矢魔に勤めて1週間。授業らしい授業はやってません。教室でクラス全員がそろう事がないから。

とりあえず、朝のHRで出席を取って、帰りのHRで出席をとる。誰が学校に来てないのか、誰が学校で怪我をしたのか、誰が病院送りになったのか…ざっとそういうことを調べます。

あとは、職員室に閉じこもったり、気が向けば校内を徘徊してます。はじめの何日かは、職員室にこもっていれば問題は無かったんだけど、私が石矢魔に来たと言う事が
学校中に広まると、みんな女教師が珍しいのか…わざわざ職員室まで冷やかしたり見物に来たりして…身の危険を感じるのでできるだけ、動き回る事にしました。

でもだんだん慣れてきたこと、それは彼らがどうしようもないおばかさんだという事で、絡まれても、暴力的な面を含んで居なければ、簡単にあしらう事ができるってこと。

難しい言葉とか使っちゃうと、みんなまるで、驚いた赤ちゃんみたいにポカーンとしちゃうの。あれはなんだかんだいって可愛かったりする。

あと、助かるのは1-Aの教室。古市くんがよく気にかけてくれて、なんどもさりげない助け舟を出してくれた。お礼を言うたびになぜかとびきりのウィンクが返ってくる。目にゴミが入りやすい子なのだろうか?アイボンとか買ってあげたほうがいいのかな?



今日も今日とて、校内を徘徊中。少し喉が渇いたので、近くにあった自動販売機で何か買おうと思い、ポケットの中に(近頃は毎日上下ジャージを着用している)小銭を探す。

「『ヨーグルッチ』?なんだろう、おいしいのかな?」

青いパッケージのそれに、なんとなく惹かれてボタンを押すと、それが最後のいっこだったみたいで、ボタンの奥に赤い文字が『売り切れ』と点灯。

お、なんかラッキー。最後の一個ってなんだか特別な感じがするなー。って思っていたら…大きな生徒に囲まれてしまった…

「おい、そのヨーグルッチよこせよ」
「俺ら神崎さんの遣いで来てんだぞ?」

いやいやいや…これは私のお金で買ったものですし、他にもたくさん自動販売機あるでしょうよ?ていうか神崎さん?だれ?何年生?友達をあごで使うなんてひどい子だわッ!そんな子に私のヨーグルッチをあげるわけないし、君達のその態度は何?!

「あのね、これは私が買った物だし、頼み方だってもっとあるでしょ?譲ってください、とか…君ら高校生なんだからね、そろそ…」

どんッ。

肩を思いっきり突き飛ばされて、ちょっと自分でも驚くくらい簡単に壁に押し付けられてしまった。う…わッ、やばっ

胸倉をぐいっとつかまれて、足先が浮く。息が苦しくて呼吸が浅くなる。やばいやばい…この子気短すぎ…!!

「先公が調子のってんじゃねぇぞ」

ぼそぼそとしゃべるその声が、私の恐怖心を駆り立てる。そうだ、先生と生徒ってレッテルが無ければ、私絶対にこんなタイプの人説教しようとしないもん。

恐怖と、苦しいのと、色々で、じっとりと嫌な汗をかいてきた。おとなしくヨーグルッチを渡せば済む事なのかもしれない、し、済まないのかも知れない。

どちらにしろ、今の私には事が非現実的すぎて、私の今日範囲を大幅に超えていて、何をすることも言う事もできなくなってしまった…。相手が余計にいらだつって事を、分かっていながらも、非力な私には何も出来ることは無かった。どうしよう…このまま殴り殺されたりするのかな?

短い一生だったな…新聞の小さな記事になったりするだろうか?生徒に殺された教師…、理由『先生がヨーグルッチを譲ってくれなかったから…』みたいな?

「おッ!ベル坊!!この自販機なら、まだヨーグルッチあるかも知れねぇぞッ!!」
「ダブっ!!」

意気揚々と駆けて来た君が、天の使いだったのか、はたまた悪の手先だったのか…。

その頃の私に知る由もなかったけど、彼を見た生徒達は、坊主の生徒同様、そそくさと逃げていってしまった。…私はまた『男鹿辰巳』に助けられたのだ。



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -