01 傷心携えてきました
長い間付き合っていた彼氏にフラれて、なんとなく地元に居づらくなった私は、自身と教員免許と少しの荷物を持って飛び出した。

が、


無理無理無理…!!

何この学校?!え?!不良ばっかじゃん!!ってか男子校?!って疑っちゃうくらいに女子が居ない…!!急いで見つけたアパートはぼろくて、近所はうるさいし、急いで見つけた職場は地獄のようなところだった。

廊下は汚いし、壁にはろくでもない落書きばっかりしてあるし、無秩序・無法地帯だ。というか、他の先生方は…?!これが学校?机とイスがきちんとそろっている教室なんてひとつもない。ゴミは散らかりっぱなし、窓ガラスはほとんど割れてるし、たまに廊下をバイクが走り抜けていく。

「な、なに…これ…」

非常勤で3ヶ月、この石矢魔高校の臨時教員になったわけだけど…1日目にしてすでに挫折しそう…。

とりあえず、クラス名簿(1-A、もうほとんどの名前が黒塗りされている)を唯一の武器にして、ニューヨークの路地裏のようなスラム街のような道を進む。

わ、私は先生なんだから…!!生徒を怖がることなんて無いのよッ!!そうよそうよ!!だって、みんな私よりもはるかに年下で、まだ学生で、私の愛すべき?生徒なのよ!!怖がることなんて…

「おい、誰だてめぇ」
「きゃッ…!!」

誰かに後ろからぐっと肩をつかまれた。ああああ!!もうだめもうだめ怖い怖い怖いッ!!無理無理無理!!後ろを振り返ると「不良でーす☆」って感じの坊主の生徒がガムをくちゃくちゃしながら私を悪相で睨みつけていた。うううわわあわああわああ!!こわッこぉわあ!!

「わ、わたし…は、今日から非常勤で、こ、ここに勤めることになったみょうじです」
「ふ〜ん、女教師か…いいじゃねぇか」

な、何がいいんだ…?!坊主の生徒は私のブラウス(の胸元)と膝上丈のタイトスカートのラインを、それはもう!じっとりと嘗め回すように見つめてきた…!!き、気持ち悪い…!!
いや、でも!!ここでこんな風に縮こまって、生徒の事を付け上がらすわけにはいかない!!たとえ3ヶ月限定の先生だとしても、いや!だからこそ!!ここはきっちり先生と言う立場を確立しておかなければならない…!!特に、こんな学校…!!ちょっとでも舐められたら、何が起こるかわかったもんじゃない…!!ふぅ、私は先生、私は先生…

「あ、あのね!!貴方、こんな時間に教室を出てうろうろし」
「おおおあああ!!ななななッ!!女の先生が居るゥッ!!!!」
「うっせぇな古市…女の教師なんて今どき珍しいもんじゃねぇだろ」
「げッ…男鹿辰巳ッ…!!」
「先生!おはようございますッ!俺1-A古市貴之っていいます!!」
「え…ああ、お、おはようございます…」

マッハで飛んできた、銀髪の男の子が私の手を握ってぶんぶんと振り回す。だいぶ興奮しているようだけど、なんだか無邪気そうで可愛く思えた。

さっきまで私とにらみ合っていた坊主の生徒は、何かつぶやいてどこかへと消えてしまった…。どうしたんだろう…別に探し回ったりしてやろうとは思わないけど。

銀髪の子(古市くん)の後ろからのっそのっそと歩いてくる、男の子は肩に赤ちゃん(しかも裸…!!)を担いでいる…!!な、なんなのこの学校…!!

(ちょ、ちょっと!そこの君…あ、赤ちゃんを学校につれてきちゃだめでしょッ!)
(だって、俺コイツと15m以上離れると死ぬし…)
(どんだけ寂しがりやなの…?!)


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