11 諦めって肝心です

男鹿くんが初めて自分だけの意思で私から離れて行った。赤ちゃんが泣いたとか、彼女に呼ばれたとかではなくって…男鹿くん自身の意思で私から離れていった。それは必然的に男鹿くんが私への気持ちを無くしてしまった事に、諦めたと言う事に直結する。これでいいんだ。よかったんだ。


学校で会っても、会うって行っても前みたいにすれ違うとか見かけるとか角で鉢合わせるとか言う些細なコンタクトなんだけど。お互いあからさまに拒絶したりするわけでもなくだからってけんか腰に衝突したりする事も無かった。学校の先生と学校の生徒らしい、ただ石矢魔の男の子達はかわいくさわやかに挨拶なんてないし私もわざわざ自分から挨拶なんてしようと思わないから、無言の「らしさ」が実現した。私が男鹿くんに求めた「先生と生徒」だ。

すれ違うと男鹿くんは私に目を合わせることも無く(もちろんそんな必要はないし私だって求めていない)歩いて去っていってしまう。ただ、背中の赤ちゃんだけが、少しだけ名残惜しそうに私の事を悲しい瞳で追っているのが胸を軽くしめつけた。


男鹿くんとの関係がぶっつりと切れてから、もともとそんなおかしな成り得ない感情を持ったままの接触を続けていた事が間違いだったんだけど…それからと言うもの学校生活にある意味でやる気というか情熱的というか…積極性だとか言うものを全く感じなくなってしまった。もともとやり甲斐のある仕事だとは言い難い石矢魔の教員と言う職種の中で、私は何か具体的な何かを求めていたわけではないのだけどまるっきり目的だとかそういう、事を成すために必要なゴールと言うか目標だとか言うものを見失ってただただ続く毎日をぐるぐるなんの感動も無くモノクロ写真の味気の無い無限とも言えるページ数のアルバムを捲り続けて居るように思えた。


喪失感


そんなもの認めたくない。

コレは男鹿くんの気持ちを知った上で私が求めた結果なんだから、私がこの日常にそういう情緒的な哀愁じみたこと感じてちゃ可笑しいんだ。可笑しいおかしい。男鹿くんに出会ってからおかしな事ばかりおきるよ。なんだよこれ規格外すぎるよ。

私の中で確かに息づいている感情が酸欠で苦しんでいる。一生懸命息をしようともがく私の中のたくさんの芽吹いたばかりの小さな感情に、私の理性は無慈悲にも自身の手でその感情たちが主張を強めないよう、かねては息を絶やしてしまえとぎゅううっとその口をふさいでしまう。必死な感情は理性に噛み付き自信すら傷つけてしまう。

おかしくなってしまいそうだった。誰かに助けて欲しかった。なんでもいい、男鹿くんの事を考えたくなかった。学校に居ればどうしても男鹿くんの事を考えてしまう。もう一種のトラウマなのかと思うほど、男鹿くんは私の頭に心に巣食ってしまっていた。

そんな時に、地元に残してきた友人から連絡が入った。


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