01.コスモプラック少女
「みょうじおなまえです、わかんない事ばっかりなので皆さんには迷惑ばっかりかけると思いますが、しょうがねーなーって思って優しくしてやってくださいっ!よろしくおねがいします!」

転校は初めてじゃない。特別遠くに引っ越した事はないけど都内での引越しなら、学校区が変わらない範囲の引越しから、校区を移らなきゃいけない距離の引越しと我が人生18年のうちに何度も経験してる。久しぶりの他県、神奈川県ってなんかすごく治安が悪そうなイメージだったけど…ただのイメージだと良いな…。転入先の小学校でのキラキラとした好奇心と興奮の視線も、中学校の少し排他的な緊張に満ちた視線も慣れた物だった。ただ、高校に入って最後の年の、まさかの転校…。正直悲しかった。2年まるまる同じ友達と暮らせたのは小学生ぶりで、仲良くなれた友達がたくさん居たのに…。住所変更に伴って継続的な通学が困難…。春休み中泣き通したけど、新しい学校…海常高校の新しいクラスでのファーストコンタクトは正直とってもいい感じだ。

担任の先生が黒板に並べた私の名前。みょうじおなまえ、ちょっと癖のある字が高校の先生ぽくって、これはどこの学校でも変わらないなーとちょっと笑えてしまった。さすがに小学校みたいに「みんな仲良くするようにー」みたいな先生のおせっかいな締めくくりの言葉は無い。それでも、私の自己紹介が終わると誰ともなく自然な拍手が上がって、数人の女の子が「よろしくねー」とか「おなまえちゃーん!」と明るい声をあげ私を快く迎え入れてくれた。ああ、よかった。いい人そうな人がたくさん…と、思ったらなんかおかしい…1人の男の子がまさかのスタンディングオベーション。なっなんだ?!サッパリと清潔感のある整った顔の男の子、立ち上がって割れるような拍手を続けてくれるけど、なんだ…?まわりの子に笑われてるじゃないか…どうしたんだあの子?!

「おい、森山!立たんでいいっ!!笠松っ!!」
「なんで俺なンすか…、森山ッ!!」

先生に注意を受けてもいう事を聞こうとしない爽やか拍手(森山?)くんを粛正させる窓際の男の子。面白くなさそうに顔をしかめてブンっと筆箱を森山くんめがけて放ると、見事にこめかみにクリーンヒット。す、すげぇ…!!結構距離あるのに…!!森山くんはおもちゃのようにすとんとイスについてしまった。だ、大丈夫なのかな…?打ち所悪かったら…脳内出血とか大丈夫かな…?あ、でもクラスの子は誰一人として心配している様子が無い…?!あ、れー?なんだ?日常茶飯事なのか…?筆箱を投げた窓際くんの方を見てみたら一瞬だけカチっと目が合った。会釈をしようと思ったけど、ぱっとすぐにそらされちゃって出来ずじまいになっちゃった…。なんか凛々しくてかっこいい子だなー、さっきの森山くんといい、可愛い子かっこいい子多いなこのクラス…

「じゃあみょうじの席は、笠松の隣だな。机とイスの高さが合わなかったら言いなさい、交換するから」
「はい、分かりました」

転校すると大体窓際。在校生は教室に空きの机一式を見つけると、あ転校生が来るんだなーって分かるんだろうな。転校生の方にしてみれば、先生が「じゃああの席ね」とか言わなくったって、教室を見ればどこが新しい私の居場所なのかなんて一目瞭然だ。空っぽの机の横には、つんと顔を外に向けた筆箱くん。…うまくやっていけるだろうか…

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