14.ヒロインヒーロー
外に出ようとした途端にみょうじが、俺の顔に鏡を突きつけて「洗ったほうがいいかも」だなんて失礼な事言い出すから、とりあえず膝裏を蹴っ飛ばすと見事にヘタって床に落ちた。

「ち、ちがうよ!!失礼な意味じゃなくて、笠松くんの威厳に関わる事で…!!」

必死に弁解するみょうじから鏡を借りて、自分の顔を見てみると…なるほど納得…泣きすぎでひでぇ顔…。こ、これは…ヤバイな…こんな顔じゃ電車のれねぇ…

「あ!そうだ!!コスモス貸すよッ!!」
「はァ?!お面つけて帰れってか?!」
「でも…泣きましたー!!って顔よりは…」

そりゃあ…泣きましたー!!って顔よりは…


みょうじが帰り付き添う事を約束に、コスモスのお面をつけて帰ることになった…けど、これって…その、毎日毎日…みょうじが被ってるお面であって…その、口…とか触ってる…んだよな?!そ、れって…いいのか?みょうじいいのか?!あ…え、っと…でも、なんか文句言ったって泣き腫らした顔で帰るよりは・・・その…、俺の方は…構わないんだけど…えっとー…みょうじが、いいんなら…いいんだ…


「あ、みょうじちゃん」
「あああ!!コスモスっ森山センパイっ!!コスモス先輩がでっかくなったっス!!」
「おーあー!!森山くん!!待っててくれたの?!」
「うん、笠松をね…でも、みょうじちゃんと一緒に居たなんて知らなかったなー」
「ちょっ!!コスモス先輩っ!!なんでいきなりデッカくなってんスか?!」
「うるせぇんだよ黄瀬ッ!!黙れッ!!」
「痛いっス!!」
「で、なんで笠松がお面してんの?」
「あー、泣き顔が恥ずかしいから貸してあげたの!」
「みょうじっ、そういう事さらっと言うのかッ?!」
「みょうじちゃん…それ、ちょっと俺ら反応しづらいから…」
「えー?!笠松センパイなんスか?!このコスモス!!いいなー!!俺もコスモスやりたいっス!!」
「しねッ黄瀬っ!!」
「あっ!!黄瀬くん?きみが黄瀬くん?モデルの?」
「え、はい…そっスけど…あんた誰?」
「黄瀬、彼女がお前の憧れのコスモス先輩だよ」
「えっ!!コスモス先輩っ?!可愛いッ!!」
「黄瀬しねッ!!しね黄瀬ッ!!しねッ!!」
「ちょっ、笠松センパイ怒りすぎっス!!」
「笠松…何があったか、ちゃんと後で教えろよ…じゃないとその恥ずかしいコスモス姿を将来永劫…」
「あ、そうだ森山くん!ジュースあるよジュース!!飲む?」
「あ、うん飲むー!」
「森山ァ!!」

森山と黄瀬にスポドリを配るみょうじは、もちろんコスモスのお面が不在で、だからって顔を隠してるわけじゃなくって…たぶん俺がお面してるからこっち見えないだろう…みたいな可笑しな勘違いで気を抜いてるんだろう…。普段ほかの奴らにそうしてるように、表情をころころ変えていかにも楽しそうに動き回る。…か、わいい…けど…あんまり直視できない自分の度胸の無さに情けなくなる…。手、とか…繋いできたのは…いったいなんだったんだ…?慰めて…くれたんだろうか?

「笠松くんも!はい、ジュース!」
「お、おう…ありがと…」
「ううん、お疲れ様!かっこよかったっスよ!キャプテンっ!!」

…!!なっ…みょうじッ…

「コスモス先輩、俺の真似すんのやめて欲しいっスー!!」
「えー?!そうっスかー?!」
「みょうじちゃんが言うと可愛い!」
「本当っスかー?!嬉しいっスなァ!!」
「なんか最後の変っスよ?!」



俺の隣の席に突然現れた変な女子。ウルトラマンみたいに超人的ではないにしろ、とんでもない力で俺を助けたり、逆にむちゃくちゃに揺るがしたり…何がしたいのかは全くの理解不能だけど…だからって、本物のウルトラマンなんかじゃなくって良かった…たった三分間で去ってしまったら、やりきれなくて堪らない。


胸に秘めたるマークは…???
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