俺とインシエメしようよ!
お昼前、市場での買い物も済ませてカフェーでのんびりしてると彼が来た。さんさんと降り注ぐ太陽の光の中で、大きく…もげてしまうのではないかと心配になるくらいに激しく腕を振りながら、太陽にだって負けないくらいの笑顔で走って来た。

5

「おなまえちゃん!おなまえちゃ〜ん!!」

人懐っこい笑顔、にゃんにゃんとネコちゃんの声が聞えて来そうなほどの甘えっぷり。カウンターでジュースを飲んでいる私に構いもなく、全身全霊のアモーレタックル。わき腹に響いた衝撃にむせ返る。

「わぁ!!おなまえちゃん…!!ご、ごめんね!俺、つい嬉しくって力加減が利かなくって…」

ごめんねごめんね死なないで〜!!と騒ぐフェリシアーノ。さっきまでの満面の笑みは影って、大粒の涙をぽろぽろと流して私の背中を擦る。あたたかく大きな手だ。

「いいのよ、気にしないで…このくらいで死んだりしないから」
「ヴェ〜、ほんとッ?!ならよかったよ〜」
「ええ、でももう二度とやらないでね?」
「了解でありますッ!!」

びっしー!!と敬礼をしてくれるのはいいんだけど、顔が間抜けな分いかんせんふざけて見えてしまう。でも本当にごめんね?最後に真面目に謝られる。珍しい、真剣なまなざしと、ごく自然に腰を抱くその仕草にどきりと心臓が跳ねる。ああ、彼はずるい。


カフェーですこし世間話をしたあと、フェリシアーノが急にガタっと席を立った。ジュースのグラスが汗をかいてて、グラスの中の氷がカランと涼しげな音を立てたのと丁度おなじタイミングだった。ひらめいた!とでも言いたげな彼の輝いた表情を見上げる。

「おなまえちゃん!俺いいこと考えた!!」
「なに?どんないいこと?」

「うん!ねぇおなまえちゃん!今から俺ん家でニャーン☆しよう!!」

カフェーに居た全員が飲み物を噴出す、あるいはグラスを落とした。

「ちょ、ちょ…!!な、なにそれ?!それがいいこと?!」
「ヴェ〜?そうだよ!いいこと!俺とおなまえちゃんでニャニャーン☆したり、俺がおなまえちゃんのニャンっニャンニャーン☆したり、おなまえちゃんが俺にブニャー!!したり!!気持ちいいよ!!」
「だ、だまれー!!」

えー、とうな垂れてしまうフェリシアーノ。え?あ、いやいや…お前落ち込むの可笑しくないか?この状況どう考えてもお前が一方的に悪いでしょ?悪いよね?悪くない?私これ公然セクハラ受けてるんじゃない?そうだよね?そうよね?何?ルートヴィッヒ君呼んだ方がいい?この状況、なにこれ?なんでフェリシアーノ泣きそうになってんのよ?!ああ!!もう!!可愛いから困るのよあなた…!!

いつも元気にくりんくりん跳ねているアホ毛が、心底落ち込んだーって風にしょんぼーり垂れ下がる。ああ、もう…違うの違う…私別に、フェリシアーノとあにゃーんしたくないわけじゃないんだけどさ…

落ち込んで、その場でうずくまっちゃったフェリシアーノを見て、カフェーの人たちが少しかわいそうだな…って雰囲気になってきた。うう…このままじゃいたたまれない…。ちょっとふくよかなオネェ系店長さんが、グラスを拭きながら私を見てため息をついた。ああ、私が折れろ…と?店の奥の若い女の子達が、ちらちらとフェリシアーノを盗み見ながら「可愛いわね」ってひそひそ話をしてる。はァ…

「ねぇ、フェリシアーノ…ごめんなさい、大きな声で怒鳴ったりして…」
「ヴェ、おなまえちゃん…」

涙のつぶを目の端に残したまま、フェリシアーノが私を見上げる。可哀想に鼻水まで垂れてる。ああ、可愛い私のフェリシアーノ。広場の時計が12時の鐘を鳴らす。

「でも、私の気持ちもわかって欲しいな?」
「…うん」
「もっと、ロマンチックに誘ってもらえれば嬉しかった、なー」

思わせぶりな視線を送ると、フェリシアーノはお花が咲いたみたいにパア!っと笑顔になった。嬉しそうに立ち上がって、私の肩をぽんぽん叩いたり、ぶんぶん降ったり忙しく騒いぐフェリシアーノ。本当に、喜怒哀楽が激しいというか…単純で、可愛い。アホ毛も全快でぴょこぴょこはしゃいでる。

「ごほん!じゃあおなまえちゃん」

わざとらしい咳払いは、かっこつける前の彼の癖。すっと私に差し出された彼の右手。少し姿勢を低くして、私を目だけで見上げる。

「これから俺ん家で、お食事いかがかな?もちろん!俺が腕を振るってご馳走するからッ」

ぱちこーんと策略的に飛ばされたウィンク。もちろん、ご馳走になるに決まっている。

「それじゃあ、頂こうかしら」

フェリシアーノの手に、手を重ねると、そのほとんど同時にぎゅっと手を握られて引っ張られた。わっと、驚いている間に彼の腕の中。

「わーい!やった!やった!!おなまえちゃん!俺すげぇ嬉しいよ!!」

ちゅっとほっぺにキスされて、今まで忘れていたカフェーの人たちの黄色い声が上がった。少し恥ずかしかったけど、そんなの気にも留めない、まだはしゃいでるフェリシアーノを見てると私もなんだか少しだけ大胆になれた。

「私もよ」

そう言って私も、フェリシアーノのほっぺにキスを返すとフェリシアーノははしゃぐのをやめて、きょとんと呆けた顔をした。え、いや…だったかな?

「だめだ、待てそうにないや俺。お昼の前におなまえちゃんだ」

えええ、そうなっちゃいますかー!!



俺とインシエメしようよ!→俺とトゥギャザーしようぜ!


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