僕らの××ゲーム
「やあ!おなまえ!!グッモーニンっ☆」
「え…っとお、はよう…アルフレッド」

3

今朝の彼にはWHYがいっぱいだ。早起きが苦手なくせに、朝7時…早朝とはいいがたいにしろ彼女の家に遊びに来る時間ではないでしょ?私はまだパジャマだし、髪も梳いてないし、ジャムがたっぷり塗られたトーストをかじりながらラジオで天気予報を聞いていたところなのだ。

まぁいいけど…それよりももっと気になるのは彼の持ってる荷物。ラフな格好を好む彼は普段からカバンを持ち歩いたりするのを嫌う。財布(酷いときはカードだけ)とスマートすぎるケータイ、それだけでどこまでも行けてしまうのが彼だ。のに、今日の彼は何だ。大きなカバンを2つもぶら下げているではないか…い、家出?ご自宅に幽霊でも出たのか?

まぁまぁまぁ!!じゃあそれはカバンの中にたくさんのハンバーガーが入って居ると思っておこう!!ただ、気になるのはねっ!!そうそう、朝の挨拶の返事が少し遅れてしまったのはその所為なんだけどさッ!!

「どうしたの?その髪型…」
「ンーフーフー!!やっと気がついたかい?!君はトロいからねッ!俺が言うまでもしかして気がつかないんじゃないかって心配したぞッ!!」

HAHAHA!!って笑いながら、私の向かいのイスにどかっと腰を落ち着かせたアルフレッドは、少しうっとうしそうにいつもとは違う前髪の分け目を払った。後ろの髪は…エクステ?だろうか…判りにくいけど、少しだけ伸ばされている。いつも右端でぴこぴこしているくせッ毛も、ワックスか何かで隠されていて、代わりにちょろーんと特徴的なアホ毛が一本。…そう、彼の今日の外見は…まるで…まるで

「マシューみたい…」

いつもなら絶対に嫌がるセリフ。ついぽろりと零してしまったが、なぜかアルは満足そうに鼻の穴を広げて、胸を張って得意になった。ああ、見た目似てても、やっぱりアルだわ…マシューはそんな風に得意な顔しないからね…

「だろー?!俺今日はちょっと凄い事思いついちゃってさー!!不覚だけど、そのミッションを完璧にクリアするためには、どーしても俺がマシューの格好をしなくちゃならなくてさッ!!」

嬉々として立ち上がり、身振り手振り説明を始める姿はさながら演説だ。どこからとも無く取り出したハンバーガーをパコパコくちに放り込む姿、瞳の色は完全にアルフレッドなのに、なんでか容姿だけはマシューなんだからおかしなものだ。

私はかじりかけだったトーストをお皿において、手についたパンくずを払った。まだ何か一生懸命にマシンガントークを続けて居るアルフレッドの声を環境音に、ストロベリーティーにくちをつける。そとでは朝の鳥の鳴き声がして、ラジオは今日も晴れるから布団とか干せば?って言ってる。あーそれいいかも、布団干そうかな?

「って訳でさッ!!擬似レイプの準備なんだよコレ!!」

ピコーンっとアルフレッドはアホ毛を星を飛ばしながら弾いた。


っぶふぁッ

「うん、えっと…ごめんねアル、もう一回はじめから説明してくれる?」
「んもう!!おなまえは汚いなァ!!くちからこぼれてるぞッ!!」

ナプキンでがっすがっす口元をぬぐってくれるアルフレッド。あ、ありが…いたたッいたいいたい!!もういいから!!ってお礼を言いながらアルの手を退けると、アルは満足そうに笑った。あー、目閉じると本当にマシューみたいだ…。これでもう少し小さい声でおどおど喋ってなんかクマのぬいぐるみ抱いてたら完璧だ…

「だーかーらー!!今の俺って、とっても外見マシューじゃないか!!そんな俺に無理やりセックスされたらおなまえ的にはマシューに無理やりされてる感じになるだろ?!それで、嫌がって抵抗する…ああだけど感じちゃう…無理やりなのに気持ちがいいのあああああん!!!!!みたいなおなまえが見たいんだよ!俺は!!」

何を力説してくれてるんだろうこのアメリカンクソビッチファッカー金髪ブタ野郎は…。

「また、本田さんにへんなマンガ借りたの?」
「ノンっ!!MANGAじゃないぞッ!!今度はゲームさッ!!」

自分の彼氏が日本製の成人向け凌辱エロゲやって居る事実を突きつけられた私の目の前は真っ暗になりそうだたけど、いま、ここで目の前真っ暗、眼前暗黒感に囚われてしまったらそれこそ彼の言う「凌辱レイプ〜犯されてなんぼ〜」のいいえさになってしまうので、懸命に覚醒の端っこにしがみついた。

「最近のゲームって凄いんだぞッ!!アニメみたいにエッチシーンが動いたりするんだッ!!」
「知らないよそんなのッ!!」

ゲームの事に熱くなって居るアルフレッドは結構頻繁に見るから、特に感慨深いものは無いんだけど、見た目がマシューだからなんだかすごく…気色悪い…。マシューもえろいゲームしてたらどうしよう…

ちらっとアルフレッドの持ってきたカバンに目をやる。ああ、あそこにはきっとマニアックな拘束具だとか尋問用具みたいなものが入って居るのね…嫌だ。私…まだそんなマニアックな世界に連れ込まれたくない…!!バカな彼氏のために縄に縛られてやろうだなんて思えるほど大人でも変態でもない…!!いっそこの危ない思想を抱いたアルフレッドを縛ってやりたいくらいの心境なんだよ…!!うう、どうやって、この危機を回避してくれよう…、アーサー?アーサーを呼ぶか?…いや、もっと悪い状況になりそうだ…いっそのこと複数プレイにしようっていう何の解決にもならない提案をしそうだ…。

「ね、ねぇ…アルフレッド」
「ん?なんだいおなまえ…ああ!大丈夫ッ手錠の内側にはもこもこが」
「ち、違うの!」

朝の1ページには似合わなさ過ぎる小道具を持ったアルフレッドは、頭の上にたくさんのはてなマークを飛ばしてきょとんとした。

「私、マシューだったら喜んでセックスするんだけど」



…?

…?!

「え?ええ?!…えええええええええ」

顔を真っ青にして、訳のわからない奇声を上げながら部屋中を暴れまわるアルフレッド。アルは、つまり…嫌がる私を無理やり犯したいわけだ、でもアルが相手じゃそんな必死に嫌がったりしないから…マシュー(恋人じゃない男)の格好を模して、擬似レイプにしたかったわけなんだから…私の悪意無き嘘で彼の計画は台無しになる。ははは!!可愛いバカだねッ!!

落ち込みきった可愛くて可哀想なアルフレッドを抱きしめて、頭にキスをしてやると、最後の涙をひとつぶころりと零して私を見上げた。ううう、っとまだ無念の嘆きを零す。ああ、可愛い。普通に愛のあるセックスだけで十分じゃないか。今度本田さんに会ったら、マジでアルに変なものくれてやるなっていっとかなきゃ…。

「アル…」

声をかけると、アルはまるでお花が咲いたようにぱああっと笑顔をたたえた。眩しいくらいのそれに、つられて私も微笑んでしまう。

「なら!マシューが俺の格好をして、二人の俺に襲われるおなまえって言うのはどうかなッ?!それをビデオで撮影して」
「アルのばかッ!!もう知らないッくたばれッ!!」


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