好きなんだけど
「あ!も、本好くん!」
「あぁ、みょうじさん」
「あの!今日もいい天気だねっ!日光がさんさんと…!!光合成できちゃいそうだね…!!」
「そうだね、天気はいいけど、人間には葉緑体が無いから光合成は無理だよ」
「あっ!!そうだよね!あっはははは!!」
「まぁ出来て、日焼だよね」
「そうだね!日焼だね!気をつけないとね!」
「日焼に?みょうじさん、肌が弱いの?」
「ぇえ?!いやいや!女の子はみんな日焼したくないものなんだよ本好くん!」
「へぇ、知らなかった」
「も、本好くんは…肌が白い子、好きじゃない?」
「うーん、肌の色は気にしたこと無いかな?」

みょうじさんは変わってる。別に悪い意味じゃないんだけどね。俺がぼうっと外を眺めてると、必ず声を掛けてきてくれる。でも、特に用件があるわけじゃなくて、いつも天気の話をする。昨日は雨だっただとか、明日は晴れるか、くもりかとか、くもの形についてだとか。気象予報士にでもなりたいのかな?みょうじさんと話すのは嫌いじゃない。手を広げて一生懸命、本日の晴天(あるいは雨天)を俺に熱弁して、俺が相槌を打ってみょうじさんの方を見ると、照れるのか、しぼんでくみたいにしおらしく、赤くなって身振り手振りが小さくなっていく。みょうじさんの手が俺の視界でわきわき動くのが可愛くて、一生懸命に話すのがおもしろくて、そんな風にしぼんで欲しくないからわざと顔の方を見ないように、ずっと窓の外を眺めてる。そんな俺たちをたまに安田が見つけると、なんかウザい事をぎゃあぎゃあ喚きながらこっちに走ってきてみょうじさんを怖がらせる。迷惑だ。

今日も天気がよくて、風がすごく気持ちいい。ぼうっと外を見てると例の如く、みょうじさんが走ってきた。走ってこなくても、俺、逃げたりしないんだけどな…

「こんにちわ!本好くん!」
「こんにちわみょうじさん、今日もいい天気だね」
「あっう、うん!そうだね!!(先に言われちゃった…!!)」
「(あ、先に言われちゃった…って顔してる)ちょっと雲があるけど…」
「そうだね!でもあれってうんとうーんと高いところにある雲だから」

ほら、嬉しそうに窓の外に手を伸ばし始めた。ひょこひょこ動く小さな真っ白い手が可愛い。背伸びすると上履きから顔を出すかかとが可愛い。ほっぺたを赤くして一生懸命おしゃべりする姿が可愛い。俺の横で笑ってるみょうじさんが可愛い。

「みょうじさんって、将来、気象予報士にでもなりたいの?」
「えっ?!き、きしょーよほーし?!」
「うん、だって天気の事に詳しいみたいだから」
「あっ…考えた事…ないけど」
「そっか、お天気お姉さんとか似合いそうだけどね」
「ほ、ほんとう?!」
「うん、ほんとほんと」
「(嬉しい…!!)も、本好くんは!将来なりたいもの、あるの?」
「俺?うーん、具体的な夢は無いけど…とりあえずは体を丈夫にしたいかな?」
「じゃ、じゃあ!今度一緒にお散歩しませんかっ?!」
「…散歩?」
「(ぎゃああ!!なんて事言ってるの私ぃ!!)」
「ふふっ、体作りのジョギングってこと?」
「そ、そう!…です」
「天気のいい日に?(みょうじさん可愛い)」
「天気のいい日に…(あうー、恥ずかしい…!!)」
「でも日焼しちゃうよ?女子は日焼嫌いなんでしょ?」
「う、うん…それはもういいのっ」
「俺が女の子の肌の色気にしないって言ったから?」
「うん」
「…(みょうじさん、可愛すぎるでしょ)」
「…あっ!!わっ…ぎゃあああああああ!!!」
「じゃあ、今度の日曜日ね。お散歩デート」
「も!もとよしくっ…!!」

ちょっと意地悪したかもしれないけど、両思いなら別にいいよね。


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