人の痴態を笑うな
ちゃぽん。狭い浴室の、狭い浴槽はあったかいお湯で満たされてる。はだかんぼうの私ははだかんぼうの逸人と向かい合わせにひざを立てて座ってのんびり入浴タイム。ちょっと触れ合う肌が気持ちいい。逸人はびっくりするくらいに肌が白いので、本当に人間なんだろうか?こいつは本当はすごくよく出来たヒューマノイドなんじゃないだろうか?あるいは魔法にかけられたマネキン人形なんじゃないだろうか?そう思って体を折り、逸人の心臓あたりに頭をくしゃりと押し付けてみると、何の心配も要らない。ちゃんとあったかい(お風呂はいってるからいつもより余計にあったかい)し、薄っぺらい胸板の向こうではとくんとくんと心臓さんが24時間365日年中無休出血大サービスで働いている。頭を押し付けてぐりぐりすると逸人がくすぐったいよって笑った。からから笑う振動が伝わり、声が聞こえる。狭い浴室にそれは良く響いて心地よかった。私は頭を上げて逸人に寄っかかり、私のおっぱいを逸人の胸に押し付けて、逸人の腰に私の足を絡ませて逸人の筋張った細くて長い首に鼻をこすりつけるように抱きついた。あったかい。触る肌が気持ちい。逸人がきもちい。ちょっと驚いた様子の逸人がゆっくり、ちゃぽりとお湯から手を出して私の濡れた髪をなでる。それはもうやさし〜く。

「どうしたの?おなまえが甘えるなんて珍しい…」
「うーん…きもちいの」
「そうか、ならいいけど」

よしよし、なんて口に出してぺたりぺたりと私の頭を撫でる逸人。大きな手が大好きで、もっともっと触って欲しいって思う。私は逸人の首に回していた腕をほどいて、逸人の肩から胸、胸からお腹、お腹から…手を滑らせてお湯の中でぽやぽや浮いている逸人の性器に触れた。逸人はちょっと寂しそうな顔でうっすら笑った。私は両手のひらで逸人の、私の手には余る大きなの性器を、形を確かめるように、芋だとかの野菜の泥をキレイに洗い流すみたいに丁寧にゆっくり撫でてみる。やわらかくてくにくにしてる。そのまま性器に手を触れたまま、逸人の胸に頭をこすり付けてみても、やっぱり逸人の心臓はいつもどおりのスピードで動いてる。

「…やわらかい」
「ん…」

逸人は勃起不全なんだ。なんでかは知らない。なんだかんだと謎が多い人なので私は訊いたって答えてくれないだろうと思って訊かないし、もしかしたら本人だって知らないのかもしれないし。とにかく、彼は勃起しない。えっちな気分になったり…ってのはあるらしいんだけど…そういう時は私に覆いかぶさってがぶがぶとキスしてきたり、おっぱいを触ったり舐めたりすったり、パンツの中に手を突っ込んできてぬちょぬちょぐちゅぐちゅして私の反応を見るだけでいいらしい。それでいいんだって。変なの。だってそれじゃあ気持ちがいいのは私だけじゃないか…逸人のばあかあ。逸人の性器を握ったまま逸人の顔にいっぱいキスをする。何したって変化は無い。たちもしなければ、熱くも硬くもならない。でもこのやわらかくてふやふやしてて、見た目はけっこうグロテスクなのに、ずっと触ってるとなんだか愛着が湧いてくる逸人の体の一部が。私は大好きなんだ。私っていやらしいのかな?

「触って欲しい?おなまえ…」
「うん」

ところ変わってベッドの上。逸人のお部屋は基本的には何もありません。モノトーンで家具もシンプル。こちゃこちゃしたものといえば、私がたまに持ち込んでくるマニキュアやら忘れていく化粧品やらが、網かご(逸人いわくおなまえ箱。ネーミングセンス無ッ)に放り込まれてる程度。整頓されていて、落ち着くけど、たまに無性に何も無さ過ぎていらいらして破壊衝動に襲われる。寂しい部屋だなあって思うから、頻繁に遊びに来てやろうと思う。色がついてるものといえば、棚の上に2、3個のっかってる写真立て。学校の生徒と撮ったものが1枚。校長先生(お人形みたい)となんか友達(?)と撮った(撮られてた?なんか逸人と、一緒に写ってるごつい男の人は乗り気じゃないように見える。あとおっぱいすごい人に妬ける)のが1枚。もう1枚は私の部屋で寝こけてる逸人自身の写真。私が勝手に撮って勝手に飾ってある。ピンクとか黄色とか赤とかオレンジとか緑とか紫とかいろんな色のものいろんな形のもの光ってるものくすんでいるものやらかいもの硬いもの可愛いもの不細工なものいろんなたくさんのものにまみれた(凄まじく整頓が行き届いてない)部屋で寝こけている逸一って言うのは本当に不気味だ。でもそんな、私の部屋にいる私の部屋のものじゃないものが愛おしくて黙って撮ってやった。私の写真のほうがいいって逸人は言ったけど、そんなくそ恥ずかしいこと出来るわけがない。

「はァっ、んぁ…あっああ!」
「痛ッ、足ばたばたするのやめて…!」

絶賛ハメられ中の私。気持ちよすぎて勝手に空を蹴っちゃう足が、逸人のでこにがつんとぶつかった。あ、ごめん。グレーのシーツの上に寝かされた私のまたの間に逸人がグロテスクなおとなのおもちゃをぐちょぐちょごぷぬぷっにゅるにゅる出し入れして左右に振ってぐるりぐるり回したりその周りを指で触ったりべろで舐めたりちょっとかじったりする。あッあッだめそれあッやだあんっそこや…あっいいっんあいつひとッもっとあうっあッってなっちゃうわけだ。されちゃうわけなんだ。気持ちい。頭が破裂しそう。汗がだらだら流れる。私の頭を跨いでうつ伏せになって私をいじってる逸人が笑う。

「これ好きでしょ?」
「あっああんあッいつひ、あッすきッぃい、ん」

おもちゃでいっぱいになってる私のなかに逸人が中指をねじ込んで、おもちゃじゃ出来ないような細かい繊細な動きをする。私の気持ちいことをなんでも知ってる逸人は中なんて見えてるはず無いのに、まるで見えてるみたいに正確に、確実に。私がきもちよくなちゃう、おかしくなっちゃうところを触ってくれる。ああ、いつもそうだ。私ばっかり気持ちよくしてもらってる。

「どうしたの?いきなり」
「ふぁ…ひぃふふぃッほぉ…ん、ちゅ」

顔の上にあった逸人の腰に手をかけて、ズボンとパンツをずらす。だらりと下がった逸人のなんの変化も無い性器を両手に握って、口を寄せてくわえてみる。やわらかい。頭を持ち上げて一生懸命根元までのみこもうとがんばってみるけど、逸人のは大きいし、私は力が入らないからあんまり頭を持ち上げる事ができなかった。先っぽだけでもいい。赤ちゃんみたいにちゅうちゅう吸ったり、べろりと舐めたり。私の分かる範囲で、出来る範囲で逸人の性器を愛撫してみるけど何もおきない。ああ、私は逸人のことを気持ちよくしてあげられないんだ。汗にまぎれて涙がこぼれる。いつのまにか気が付くと逸人は手を動かすのをやめてて、ひっくり返った顔で私のほうを見てた。へらりと笑う。余裕ですかお兄さん。

「おいしい?」
「ふぅんッ、ちゅぽッ…逸人のあじがする」

だらーんとぶら下がったおちんちんじゃない方の逸人の性器にちゅっとキスをしてから「おいしいよ」って言うと逸人はまた笑っておもちゃを動かし始めた。あッあん、やッもうああんッや、もうだめッああッあッあっ!私のうるさい全然えろくない喚き声がいっそう大きくなってどんどん終わりに近づいてく。どこにいっちゃうかわかんない、とんでっちゃいそうな変な気持ちになって怖くて、怖いくらい気持ちよくて、どっかに私をとどめておくために顔の横にあった逸人の太ももにしがみついて、あまり脂肪のないそれに顔を押し付けてそのときを待った。ずるりとおもちゃが引き抜かれたと思ったら、逸人の体がぐっと前のめりになった。太ももに押し付けてた鼻がすれる。私のぐちゃぐちゃになったところに逸人がちゅうううううっと長い長いキスをした。すぅっと通った鼻がお尻のほうに当たる。やわらかい逸人のくちびるが気持ちよくて、私はびくんといっかい跳ねて、だらりと体中の力が抜けた。

「ありがとうおなまえ。すごく気持ちよかったよ」
「…うそつき」

汗でべたべたになった私の頭を撫でながら逸人が笑う。いつか逸人のこと女の子みたいにあんあんひぃひぃ言わせてやるんだから…。そういうと今度はもっと声を上げて笑った。ああ、珍しいね。逸人がそんな風に笑うなんて。

「楽しみにしてます、おなまえ先生」

おう、待ってなよ。私の愛する逸人くん。



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