昔の話
※超捏造です。
絶花先生が昔、ガリ勉のやせっぽっちのいじめられっ子だったら超もえもえっていう管理人の勝手な妄想が大前提のお話です。



私は幼稚園の頃、子供達のため用意された色とりどりの折り紙の、特定の色を消耗しまくり在庫切れ状態に追い込み、他の子供達がそれを悲しんだりあるいは怒ったり、先生達が困ったりするのを見るのが好きだった。飼育小屋のウサギにむかってでかい声を出して「耳がでかいから、さぞかし辛かろう…」とか、幼稚園の土地を区切るために敷かれたフェンスの網の部分に草を巻いて景観を崩したりした。

小学校ではずっと消しゴムをカッターで切り刻んで、そのカスを気に入らない奴の机の中に仕舞い込んだり、黒板に設置されているチョーク箱にしこんだ。真っ白なノートを鉛筆でぐりぐりと真っ黒に塗りつぶしたり、図画工作の時間では、この世の終わりの象徴である大魔王・悪魔・ドラゴン・モンスターの絵を赤、黒の絵の具を中心に油絵のごとくごてごてと創作した。描く事が思い当たらない時は何も描かずに「空気を描いた」と提出した。

中学校では女子のいじめのかっこうの的にされた。いつも1人で居る私が面白おかしいらしい。彼女達の決まり文句は「友達居ないくせにー」だ。でも、おい、待てよ。今私の筆箱の中のシャー芯を嬉々としてぼきぼき追っているそこのハイソックス女、私のノートをびりびりに引き裂いているパーマの女の悪口言ってるのを聞いたぞ。私の髪をつかみあげているリーダー格のセンター分けは、学校の裏サイトでボロボロに叩かれているぞ。なんて悲しいやつ等なんだ。そういう意味の分からない馴れ合いが嫌だから1人で居たのに、まさかリンチされるなんて思ってなかったわ、私浅はか…。

むかつく。私には無いものを、自分は持っていると思い込んでいるからってそれを振りかざして私の楽しみ(夕方からのドラマ再放送)を奪い取っていいとでも思っているのか?ふざけんなよ、クソあまども。あーあーイラつく。私だって普通の思春期の反抗期の中学生女子なんだ。ちょっとくらい感情に任せて暴れてみたっていいはずだ。一時的錯乱状態。そうだ、周りの人間がみんな友達だと、表面上だけそう思い込んで中良子好してるこいつ等が許されるのなら私だってゆるされるはずだ。


「で、殴り返したら親呼び出されたの」
「…そ、そうなんだ…」
「そ、世の中不公平よね…でもそれって仕方ない事なのよね」
「…不公平が仕方ないって…なんだか、それっておかしいよ」

私の隣で、ぱんぱんに腫れ上がった真っ赤な頬をさする男子。絶花療治。高校でであった、気弱そうな(実際弱い)ひょろひょろしたもやしメガネ。真っ黒の髪は短くて、くせっ毛の所為であっちこっちにとんでる。背が高いのに、もじもじしている…っていうか、おどおどしている。もったいなーい。成績は優秀。私達の通っている高校は名門の進学学校で中学校で学年1位2位をとってた子達がごろごろ入ってくるようなところだ。こういうところなら、面倒くさいいじめとか仲間はずれとかいざこざとが無くて済むのかと思っていたけど、そんな事無かった。

なんせみんなプライドが高い。そして賢くて、狡猾だ。絶花の痛々しい傷も全て原因は絶花の今回の模試の成績優秀さにある。教室で先生が言う。「絶花よくがんばったな。みんなも絶花を見習えよ!」プライドの高い男子はこれでイチコロだ。なんであんなヒョロ男に俺が負けるんだ?!みんな集まれー!絶花のフルボッコライブはじまるよー!!反吐が出る。

だから、制服ほとんど脱がされてぼこぼこにされてる絶花を取り囲む、見学の女子やら実行犯の男子やらを、奇声を発しながら押しのけてぼろぼろの絶花をつれて逃げてきた。

「みょうじ、さんは…どうして僕なんかを助けてくれたの?」
「助けたんじゃないわよ、今から私が1人で絶花の事いじめるの」
「ええッ?!ちょ…冗談…」

冷や汗をかいて、似合わない愛想笑いを浮かべた絶花の顔を思いっきり殴った。男の癖によく吹っ飛んで、まるで乙女のように床に突っ伏した。殴り返してくるかな?って期待してたけど、うつむいた絶花から聞こえて来たのは、怒りの鼻息ではなく、すんすんとしおらしい鳴き声だった。

「ど、どうして…僕ばかり…」

ぽろぽろと涙を流す絶花。ああ、彼はきっと自分が一番不幸だとか思ってるんだな…。そんな風に考える絶花が可哀相で、悲しくなった私は絶花の横にしゃがみこんだ。

「絶花」
「…みょうじさッ…!!」

切れて血が滲んでるくちびるに吸い付く。すこし硬い唇。じんわりと血の味がくちいっぱいに広がる。放心状態の絶花の手をとって、私の(あんまり大きくないけど)膨らんだ胸に押し当てた。反射的なのか、意図的なのかは分からないけど、胸に当てられた絶花の手に一瞬ぎゅっと力がこもった。ちゅうっと音をたてて絶花のくちびるからくちびるをはなす。

「気弱だって勉強できればいいじゃん!将来大富豪になって、あいつ等の事見返してやれよ。広い庭で4匹くらい立派なドーベルマン飼ってあいつ等にけしかければいいじゃん、経済誌とかに顔でっかく載せて笑いながら『学生の頃はいじめられていたんですよ、ははは』とかコメントかませてみせてよ」
「みょうじ…」
「それでも自分ばっかり不幸だって、不公平だって思うんなら私のことを嫁にとれ!」

絶花のよこで、絶花以上に不幸になってあげるから。

そういうと、絶花はメガネをとってまた泣き出した。はだけた制服から覗く体は真っ白で、暴行を受けたうっ血や痣がよく目立った。自分よりずっと大きなその体を抱きしめると見た目からは想像もつかないくらいの力で抱きしめられた。


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -