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って事で…ヤバイ…なんで?何でこんな事になってしまったんだ…?!俺のばか!!ばかやろう…!!急いて事を仕損じやがりそうだ…!!俺どんだけがっついてんだよッ?!いきなり彼女部屋に連れ込むってどんな荒業だよ?!強盗かよ?!山賊かよ?!海賊王かよッ?!って、 も簡単に男(彼氏)の部屋に上がりこんじゃダメぇぇええ!!男はみんな狼で俺にいたっては自分で言うのもなんだけど狼を越える狼だからッ!!マジで場合によっちゃ見境無しのハイエナ野郎だからぁぁああ!!なんで俺こんな卑屈になってんのか自分でもわかんないくらい制御不能な俺の部屋に無防備な がぁぁああああ!!!!

君の居る風景

「おじゃましまーす」
「あれ?母さん居ねぇのか?」
「ありゃ、私お邪魔していいのかな?」

それってどういう意味なんだろう さん。俺の家で俺と二人っきりになっちゃうって言うまさにエロマンガ展開はさすがにやばいぜって事に気がついたんですか、それとも貴女の持ち合わせたそのご両親の賜物ともいえる教養が家主の居ない家屋に部外者が侵入するというのはいかなるものか…という考えなのか…どっちにしろその言い方、俺のハートにはけっこうグサっと来ました。でもいまさら追い返すわけにはいかねぇし…というか は俺の部屋に遊びに来たかったわけではなくて、ただ撮り損ねた?消されちゃった?テレビ番組を見たくて来たわけであって、そういう俺みたいなやましい事俺の部屋でキスしてその…あれだよもしかしてそのキスの次のステップ的なことをさ、テスト勉強も終わったし今度はこっちの勉強しませんか?的なお誘いなんじゃねぇの?!ふぅふぅ!!みたいになってんのは可笑しいんだよッ!!ばかやろう!俺のばかやろう!!ってこうやって混乱しているのは俺だけな訳で…自分の家なのに全然落ち着かない足取りで を自分の部屋(アイドルグッズは整頓してあるけどなんでか靴下だけ床に落ちてた)に案内してとりあえずビデオを再生しといて飲み物を取りにキッチンに降りていったところで俺の精神状態は異常であることがつまり正常ではない事に気がついた。だって、うちのコップに が口をつけるわけだろう?キスする仲になったけど、自分家の食器とかを他人が使うって言うのはやっぱりなんか特別な事のように感じるのは俺の性癖的なものがなせる業なのだろうか…?!

「ねぇねぇ!これゲストでAKYの子達も出てたんだねッ!!」

だから安田くんビデオに撮ってあったのかー!しおらしく正座をしておとなしくビデオを見ていたらしい は勝手の利かない初めての俺の部屋で、学生カバンをどこにおいていいのかもわからなかったらしくちょこんと膝の上に乗せたままだった。…変なこと考えてるのは俺だけだ。本当に楽しそうにビデオを見てる を見ると…なんというか毒気を抜かれてしまった。そうだよな…マジで落ち着こうぜ、俺…ほんと見切り発車なんだから俺…反省しろッ!!

 のカバンを受け取ってベッドの横に置いて、ちょっと考えてから の隣じゃなくってテーブルの右手側に座って一緒にビデオを楽しんだ。自分の部屋なのに自分の部屋じゃないみたいだ。自分の部屋なのに自分以外の人間の臭いがして気配がある。テレビから顔をそらして部屋を見渡せばそこには が居て、でも は俺の部屋に居ることに何も違和感を感じてないみたいで、そこがもっと可笑しな感じがしたけど気遣ってないんだなって思うと変にこそばゆくって嬉しかった。そんだけ俺に対していろんなこと、許してくれてんのかなー?って思うと、本当に直情的に行動するのはやめようと思う。だってこんなの、絶対に大事にしたい。

「あ!今の熱子ちゃん可愛いッ!」
「熱子が可愛いの知ってるから、それよりこの後の」
「わー!言っちゃダメッあ、マヨヨだマヨヨっ!!」
「なに?! マヨヨも好きなの?!」
「うん!マヨヨ可愛いよねー」
「いや、でもAKYだったら断トツ熱子だからッ!!」

特番を見終わった頃にはもう外は夕暮れになってて、俺は を家まで送っていく事にした。帰り道はまだ、さっきまで見ていた特番の話で盛り上がってて夕日がもたらすあの不思議な哀愁と言うか切ない感じはまったくなかったのに の家が近づくに連れてやっぱり寂しくなってきてしまった。別にまた明日学校で会えるって分かってんのに、さっきまでの俺の部屋で二人っきりだった特別に親密な空間から弾き飛ばされてしまったような気がして寂しくなった。なんか女々しいな…。

「そういえばさ、 って藤とか深田と近所なんだよな?」

夕日に染められた家の群れを見渡しながらふと口をついた言葉。そういえばそうだよな。 と深田は幼馴染とかって言ってたし…藤は…幼馴染?なんかアイツが幼馴染とか、恋愛シュミレーションゲームの定番みたいだなー

「ん?そうだよ!ちっちゃい頃よく3人で遊んだんだよー」
「あ、そうなんだ。ちょっと意外」
「えー?!そう?意外かな?」
「うーん、だって藤とか…あんまり友達と外でわいわい遊ぶようなキャラじゃなくね?」
「あー、言われてみれば…そうかもね、昔もお家で遊ぶ事のほうが多かったし」
「家って、 ん家?」
「ううん、藤くん家!すっごく大きいんだよー」
「うえーマジかよ…イケメンで家がでかいとかなんだよ、鬼に金棒かよ」
「なにそれー」

きゃらきゃら笑う につられて俺も噴出してしまう。けど、実はあんまり面白くなかった。だって、さっきまで勝手に が初めて遊びに入った男の家が俺の家だと思い込んでたから…勝手な独占欲に傷ついた。そんな勝手に傷ついていると、 の家の前についてしまった。普通の家。特別でかくも特別小さくも無い普通の家。それでも手入れが行き届いた小さな庭がその家の雰囲気を物語っているようで、 には良く似合うと思った。

「安田くん」

俺がぼうっとしてると が玄関の前で俺のほうに振り返ってニコニコ笑った。あ、お…え?俺なんか可笑しなことしたかな?ぼうっとしてる顔間抜けだったかな?

「今日はありがとうね、安田くんのお部屋にお招きいただいて」
「お招きいただいてってなんだよ」
「へへっ、でね今度のテストの時は私のお部屋にお招きするから」

タタっと俺に走り寄ってきてぎゅっと手を握ってから、ばいばいっと早口に言ってしまうと は滑り込むみたいに家の中に入っていってしまった。…今度は俺が、 の部屋に…?なにそれ?!どういうことだよッ?! さん?!あんまりその…簡単に男の部屋とか入っちゃダメだし、その逆も…あれ、ダメだよッ!!そんな簡単に男を女の子の部屋に入れちゃああああ!!あ!もちろんお招きいただいた際はデジカメとか色々持参させていただきますけどねッ!!あ、うん…それは気持ち悪いね…

何はともあれ、テストが終わったと思ったら驚くくらい急展開に俺と の距離が縮こまった気がします…。う、わ…ってか部屋戻ったらとりあえず匂い嗅ごう、匂い…!!あと、それで…絶対に、そのなんか…いやらしい想像とかしちゃうけど…仕方ねぇよなッ!!仕方ねぇよ!!俺らそういう関係なんだしッ!!いつか本当にそういう関係になるんだろうし!!っていうかなりたいし!!もうとにかく今は大好きだ ー!!



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