05
安田くんってなんだか私のイメージと全然違ってちょっと…その、ギャップ?って言うのかな?戸惑った。なんか、私…大変な事態に陥ってないか?!今までだれか男の人にこんな感じしたこと無いぞ?!かっこいいなーとかおもしろいなーとか仲良くなりたいなーとかはあるけど、ただこんな漠然と気になるって言うのは…初めてだッ!!もしかして、これが恋ってやつか…?! その想い… 教室でぼうっとしてると、目が勝手に安田くんを探して、おってる。みてるだけでなんだかやましい気持ちになるから、誰にも見つからないようにちらっ、ちらっと盗み見る。なんか悪い事してるみたいだ…ッ!!でも見たいなって気持ちと見ちゃだめって気持ちとでもやっぱり見たいなって気持ちがぐるぐるぐるぐるしてて、どきどきとぐるぐるで頭おかしくなりそう…。安田くんがしゃべってる声が聞こえるとそれに集中しちゃうし、しゃべってないといろんな人たちの話し声の中に安田くんの声を探しちゃう。昨日、じゃあ明日って言ってくれたから今日はあったらおはようとか昨日はありがとうねとか言いたい。でも安田くんはそうじゃないんだろうな…。私1人で盛り上がってなんだ?!もう!もうッ!!ばかばか私ッ!!落ち着いて!!昨日まであんなに安田くんの事嫌いだったはずなのに…!!あー…でも、やすだくん…かっこいいな…一緒におしゃべりしたいな…はぁ… 「なにあんた、風邪?」 「えー?」 お昼休みにご飯をもぐもぐしてる彩になんかすごい変な顔で見られた。え…私かぜひいてるみたいに見える? 「なんかすっごいぼーっとしてるわよ?」 「え…あ…うん」 「なんか気色悪いわね…」 「あのさ彩、恋ってどんなかんじ?」 「は?恋って『恋』って漢字じゃない」 「そうじゃなくってッ!!」 机に指で丁寧に『恋』って書いてくれる彩。いやいやそれくらいまさか私でも分かるよ!そっちじゃなくてさッ!!私が頭を抱えると彩はなんかよくわかんないけど安心したみたいにふうって笑って頬杖を付いた。おお、なんかおねえさんの様だよ。あーあ、私も彩みたいに可愛くて大人っぽくて可愛かったらなぁ…安田くんも私のこと好きになってくれるかもしれない… 「恋?ってあんたが?」 「うん…しちゃったみたい」 「へぇ、初めて聞くわね。そんな話」 「うー自分でもよくわかんないんだよね…こういうの初めてだから…」 ずっと気になる、顔が忘れられない、声とかしゃべり方とかが耳にへばりついて頭ん中で何回も何回も繰り返されるし、また話したいなーとかもっといろんなこと知りたいなーとか思う。目閉じると顔が浮かんでくるし、それだけでなんか嬉しいっていうか、どきどきするって言うか…もっと顔見てたいなーいろんな顔が見てみたいなーって思う。でも本人を見ると恥ずかしくてそんな大それた事ッ!!ってなっちゃうんだ。って正直に思ってることを彩に話すと彩はちょっと笑ってばっ!!って私の鼻先に人差し指を突きつけた。なんだッ?!あぶないッ!! 「あんた、それは立派な恋よ」 「おおう…やっぱり…」 「しかも結構重度ね」 「うう…恋ってこんなにもどかしいものなんだね…初めてだ」 「なんか甘酸っぱくて可愛いわね、あんた」 「彩は恋したことないの?」 「されるほうが多いわね、告白とかもしたことないし」 「えー?!マジでか?!じゃあ大学生とかに告白されるの?!」 「そうね」 「うおおお!!なんて小悪魔ッ!!その技教えてッ!!」 「先天性な物なのよ、教えるって無理だわ」 「ち、ちくしょう…!!ねぇ私はどうしたらいいと思う?」 「その人と付きあいたいの?」 「え…わかんない。…ただ、気になる」 「ふうん…まぁ一応迫ってみたら?フラれたらそこまでって事で」 「え、無責任ッ!!私のハートをブロークンさせる気なのか?!」 「大丈夫よ、あんた不細工じゃないんだから。可愛く迫れば、落ちてくれるかもよ?」 「うう…可愛く…か」 「ていうか、誰の事なのよ?さっきの話」 「…安田くん」 「…負け戦ね」 えー?!告白する前から、というか迫る前からそんな事言わないでよッ!!彩にすがりつくと彩はうっとうしそうな顔をして「だってあいつアイドルオタクよ?」って吐き捨てた…!!そっ…そうだけどさあ!!そこをなんとか応援して私をモテ子にしてくれる恋のキューピッドが彩なんじゃないの?!ねぇ先天性的にモテる彩ちゃんッ!!私がべそべそしていると細くて白くて綺麗な彩の手が私のうなだれた頭をよしよししてくれた。…あめとむちだ 「まぁ、やってみるだけやってみれば?あたってみなきゃ砕けれないわよ?」 「砕ける事ぜんていですか…」 ちくしょう…私はやってやるぞ…!!安田くんを思う気持ちが恋だって分かったなら…!!彩の言うとおりあたってみなきゃ砕ける事もできないし(砕けたくは無いけど…)もしかしたら、もしかするとってこともあるかも…!!あー!!安田くん!!恋ってすごくどきどきするねッ!! |