03
つまんねぇ…予想はしてたけど…ってか、予想って言うか…補習が楽しいとかありえないけど…ギリギリ担当がみのりちゃんとかだったらもう少しだけ楽しい授業になったんだろうけど…教科担当はカビの生えかけたおっさん教師で、夜中の冷蔵庫みたいなぶーんって可笑しな声で延々と教科書を読み上げてるだけ…。くるくる回してたペンが我慢しえない眠気に引っかかり、ものすごい勢いで教室の淵まですっとんで行った。

がんばる学生

かしゃん…ッ!!

「?!… ちゃん…ッ」
「ん、むふぁッ?!」

静かな図書室に響いた私のシャーペンが床を叩いた音。暖房がよく効いた図書室の空気はあったかくて乾いてて、みんなが真面目に勉強をしてる少しぴりぴりとした緊張感を含んでいた。向かい合った花ちゃんが顔を真っ赤にしてこっちを睨んでるほかの生徒にへこへこ頭を下げていた。う…わぁ、私ねちゃってたのか…ごめんね、花ちゃん…

「大丈夫?ちょっとがんばりすぎたかな?」

私のまだ3割くらい眠っている私の顔を覗き混んでから、腕時計を確認して花ちゃんは困ったような顔をした。私もカバンの中で眠ってるケータイを覗き込んで時間を確認してみたけど、まだ図書室で教科書とノートを広げてから30分くらいしか経ってない…私の集中力の無さの所為だね…完璧に

「ううん…ごめんね、普通に眠たかっただけ…」
「でも、今やってるページ終わったらちょっと休憩しよう?」

 ちゃん、眠っちゃう前はとってもがんばってたもん。そう言って笑ってくれる花ちゃん。テスト週間はいつも花ちゃんのおうちか私のおうちか市立図書館に行って一緒に勉強してたんだけど、今日は学校の図書館を借りて勉強する事になった。花ちゃんは私のことがんばってたって言ってくれてるけど、全然そんな事ない。私より花ちゃんのほうがずっとずっとがんばってる。

私が寝ちゃってる間もきっとずっとがんばってたんだと思う。だから花ちゃんはいつもテストでその努力に見合った点数を取ってるし、でもそれを全然鼻にかけてないのがすごいなーって思う。私だったら絶対に彩とかに自慢しちゃうもん…まぁ、彩は勉強しなくたって平均取れるから、そんな自慢したところで一蹴されちゃうだろうけど…

彩は帰るときに私が図書室行くよって言ったら、お姉さんみたいにふっと笑って「分かった」って先に帰った。それと「帰りは気をつけなさいよ」って意地悪く笑った。家に帰っても彩はきっと勉強なんてしないんだろうなー…いつも一夜漬けだし…気になるところはもう教室で済ませちゃったって言ってたし…私もがんばらなきゃ…!!


「自動販売機いこうか?」
「うん!図書室あったかいからのど渇いちゃったー」
「ねー、加湿機とか置いたほうがいいんじゃないかな…」
「おお!花ちゃんが生意気言ってるー!」
「ええ?!な、なまいきかな?!」

図書室を出ると外はもう暗幕をかけたみたいに真っ暗で穴を開けたような小さな星がちらついていた。冬の初めの空気がきーんと冷えてて、あったかくなっていた私と花ちゃんのほっぺたに突き刺さる。寒いねーってはしゃぎながら、怪しいくらいに真っ暗な中で煌々と目に痛いくらいの電気の灯りをたたえてる自動販売機に向かう。

「花ちゃん何飲む?」
「んー、ミルクティー…?あ、でもココア…」
「あーあったかいのいいね!どうしよう…」

寒い中でそんなにずっと悩んでいられなかった私と花ちゃんは結局二人ともミルクティーを買って図書室に戻った。でも図書室に戻ってからまた勉強を再開したときにはもう図書室の効き過ぎた暖房であったかくなってしまった私たちは、おたがいに熱いミルクティーを選んだ事を冗談で笑いあった。



「 ちゃん、帰らないの?」
「え…あ、うん」

時間になって、図書室を締め出されちゃった私と花ちゃんは先生に促されるまま昇降口を出てグラウンドに放り出されてしまった。真っ暗の外から大きな校舎を眺めると、そこには言い得ない不気味さがあった。職員室と保健室とある教室を残して電気は全て消されていた。

図書室で待ってたら、安田くんの補習が終わる時間に鉢合わせたりしないかなって思ってたけど…補習はまだ終わってないみたいだった。昇降口で待っていようかなって思ったけど、花ちゃんを一人で帰すわけには行かないから…

「帰ろッか」

校舎を捉えていた視線をぐるりとまわして花ちゃんに振り返る。私が笑うと花ちゃんも「うん」って頷いてわたった。私は真っ暗な道も怖くないように肌を刺す空気も寒くなうように、花ちゃんの手をとって校門を出た。

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