バカップルin秋
女の子達がみんなピンクとかオレンジとか、自分の好きな色のカーディガンを羽織るようになって、風も冷たくなってきました。秋ですね〜ってことで自販機でご購入した『あったか〜い』の午後ティーレモンを手の中でころころして「あったか〜い」してると安田くんが来た。みんなが好き勝手に歩き回ったり、走り回ったり寝てたりお喋りしてたり笑ってたり怒鳴ってたりする中で、クラスメイトの間をするするっとこっちに歩いてくる安田くん。手になんか持ってる…おおう、安田くんは『あったか〜い』の午後ティーミルクだ!うーん、私もミルクと迷ったんだけどなあ…やっぱりミルクもよさそうだな…

「あ、 レモン買ったの?」
「うん!もうだんだん寒いからね!あったかいの飲みたくて」
「俺も。マジで何これ?この間までめちゃめちゃ暑かったくせにさァ」
「ほんとだよねッ!私ももうカーディガン二重にしてやろうかと思っちゃったよ!」
「ええ?!それは早すぎるだろ?! 冬どーすんの?」

ぎゃははって安田くんに笑われる。ああ、そうか…冬…どうしよう…今からカーディガン二重にしてたら冬とか四重くらいにしなきゃ過ごせなくなっちゃうよね…ううん、ユニクロでたくさん買っておかなきゃ…

「冬は四重かな?」
「もっこもこになるぞ?力士だ、力士!ぎゃはは」
「えええ?!お、お相撲さんはいやだなあ…」

まだ開けてないレモンティーを手の中でころころして、今冬の防寒対策について悩んでるとミルクティーを飲んでる安田くんがぱっとレモンティーもってっちゃった。ああ!!私のカイロ…!!

「飲まねぇの?ぬるくなるぞ?」
「あ…うん。もしかしたら私、あんまりレモンティーのみたくなかったかも…」
「はぁ?なにそれ?」

安田くんがすっごく不思議そうな顔をする。安田くんがしゃべるたびに、ミルクティーの甘い、とろっとしたにおいが鼻をくすぐる。ああ、やっぱりミルクティーにしておけばよかったなぁ…

「ミルクティーにするかどうか迷ってたんだぁ」
「で、レモンティーにしたけど、やっぱりミルクティーのほうがいいなーって?」
「うん…でもね、ミルクティーって飲んだあとにのどがぬちゃぬちゃするでしょ?それはいやなんだよね…」
「ええ?なに?ぬちょぬちょって…しなくね?」
「えー?!するよう!!牛乳の所為なのかな?」
「ふうん」

そう言ってまた、ごくんって安田くんがミルクティーを一口飲む。私もレモンティーをぷしっと開けて一口飲んだ。あ、ちょっとぬるい。

「あ、飛行機雲!」
「え?!どれどれ?!」
「ベランダ出ようぜ!こっからじゃよく見えねぇ!」
「わあ!見たいみたい!ひこーきぐも!!」

とんっと安田くんが床に下りて(安田くんは私の机にお尻の片方を乗っけてた)、ぱたぱたっとベランダに出た。私もそれを追ってベランダに行くと彩が寒いから窓開けるな!って怒鳴った。ごめんっ!って謝って、ベランダに出るとすぐに窓を閉めた。ぱすんとそれを閉めちゃうと教室の中のみんながしゃべってる声が遠くなって、まるで学校で私と安田くんがふたりぼっちになっちゃったみたいだった。二人で水色の空を見上げると、もうほとんど消えちゃいそうな細い飛行機雲が一本すぅっと走ってた。おおう、飛行機雲…!!

「あー、ほとんど消えちまったな…」
「うん、でもひこーきぐもだね!」
「なんであんな風になるんだろうな?」
「え…なんでだろう…」

え?そういえばなんで飛行機雲って出来るんだろう?雲って飛行機から出てくるのかな?それとも飛んでる間に飛行機の周りに雲が引っ付いてきちゃうのかな?ううむ…なんでだ?レモンティーに口をつけて考え込んでると、安田くんがぷはあって大きく息を吐いてなんだかしみじみした顔で空を見上げた。あ、ミルクティーのにおいがした。

「『天高く、馬こゆる秋』ってな…」
「え?なにそれ?!ことわざ?」
「ん?あぁ、まぁな」
「すげぇ安田くん!私ふつうの会話でそんな難しい言葉聞いたのはじめてだよ…!」
「まぁこんくらい一般常識じゃね?」
「おおう!ねぇ、それってどういう意味?『てんたかく、うま…』?」
「ああ、だからさ秋って空が高く感じるだろ?」

安田くんはミルクティーを持っていないほうの手で身長を測るみたいな仕草をする。指先の爪が太陽の光でてらっと光った。私はそれを見てうなづく。そうだね!なんか秋って空が高く感じるよね!なんでかはわかんないけど…理科でやるかな?

「で、そっから馬が飛んでくるだろうってことじゃね?こゆるって来るって事で」
「おおう!!馬が空から飛んでくるって事?でも、秋に?」
「時期限定する意味はわかんねぇよな…夏のほうが馬っぽくね?」
「というか、馬って空飛ぶの?それって『ユニコーン』じゃないの?」
「あれ?『ペガサス』じゃねぇの?羽根のある馬」
「え?!あ、あれ?!動物占いにいるのってどっちだっけ?」
「『ペガサス』『ペガサス』!!ちなみにおれは『コアラ』!」
「え、安田くんコアラなの?!わ、私ってなんだろ…?」
「『こじか』じゃね?なんか見た目的に…」
「え?!見た目で占うんだっけあれ…?」
「あ、でもなんか『ユニコーン』も飛びそうだよな…」
「どっちも飛ぶんじゃないかな?『ペガサス』も『ユニコーン』も!」
「じゃあ分ける必要なくね?覚えづらいじゃん、まとめればいいのに」
「『ユニサス』…とか?」
「なんか、怖ぇよ…それ…痛そうだよ…」
「そ、そうかな?」
「う、うん…俺ちょっとびびっちゃったよ…『ペガコーン』ってどう?なんか菓子みたいでよくね?!」
「『ペガコーン』!!ありそうありそう!!なんかおいしそうっ!」
「だろ?!『ペガコーン』うましお味とかぜってぇあるだろ?!」
「バターしょう油もありそうだね!」
「あー!それぜってぇ美味い!!」


「ねぇ本好…」
「なに?深田さん」
「私、はじめは と安田ってなんだかんだ言って、ほほえましいカップルだと思ってたんだけど…間違いだったみたいだわ」
「でもバカな子ほど可愛いとはいうよね。安田はベランダから落ちればいいと思うけど」
「ふ、二人とも…顔が真面目だから怖いよ…」
「タバサはあれどう思うのよ?ムカつかない?なんか蹴飛ばしたくならない?」
「え…蹴飛ばそうとは思わないけど…うん、なんか…もう飽きたかな?
「アシタバ君ってたまに俺よりエグい事言うよね」
「ええ?!」

「ちなみに『天高く、馬肥ゆる秋』って言うのは、空は澄み渡って晴れ、馬が食欲を増し、肥えてたくましくなる秋って言う意味だよ。秋の好時節をいう言葉で、決して空から馬が飛んでくるって言う意味じゃないからね。美っちゃんは豚のしょうが焼きが好きだから、これからの時期豚肉がおいしくなることは、俺にとっても喜ばしいことで…ああ、そうだ。『ユニコーン』と『ペガサス』の違いだけど、 『ユニコーン』は一角獣(いっかくじゅう)とも呼ばれる額の中央に一本の角が生えた馬に似た伝説の生き物で、性格には馬じゃないんだ。『ペガサス』はギリシア・ローマ神話に登場する翼を持つ馬で、天馬とも呼ばれるんだけど。 さんが言いたかったのはきっとこっちだね。まぁ、どっちとも神話とか伝説の生き物だからね。ちなみに美っちゃんは動物占いでは『さる』だよ。どう考えたって『ペガサス』を超える勢いのすばらしさを持ち合わせてるのに…」

「なん、本好くん…絶好調だね」
「私、本好があんなにしゃべってるの始めてみたわ」


バカな二人はこんな感じにいつも無自覚にイチャイチャしてますよっ!!


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