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夕暮れ空が不気味にあかあおむらさきに交じり合ってる。花壇に、行かなきゃ…

長く、甘い

暗くなるのが早い。ああ、もうすぐ冬になるんだな…足を一歩進める間に心臓が3回どくんどくんどくんと鳴った。足が遅いのかな?心臓が早いのかな?そでのちょっと余ったカーディガン。きゅうっとそれを握ってみると、びっくりするくらいに手が湿ってた。落ち着いて…。安田くんにあって、まずは私からお話させてもらおう。昨日、聞いてもらえなかったんだし…。スキーの時のお話なんてもういい。山田さんと…あ、山田さんの…事…を、聞こう…!!ふぅ、落ち着いて…うぅ…

影になった校舎の壁にもたれる。ああ、これを、曲がると…花壇、なんだけど…緊張する…な。安田くんもう居るかな?まだ居ないかな?校舎にもたれたまましゃがみこむとずりずりってカーディガンが校舎に擦れた。やすだくん、やすだくん。花壇手伝ってくれたとき虫が出ると私が怖がらないようにすぐにどっかに逃がしてくれてたよね、帰り道も私が車道側にならないように気をつけてくれたよね、初めてのデートのときも私が行きたいところ見たいもの見せてくれようって一生懸命になってくれてたよね、スキーのときは私が気持ち悪くなってるの見てたくさんアメとかキャラメルとかくれたね、おでこにしてくれたちゅうだって、いきなりだったけど、すッごく優しくてあったかくて大好きだったよ。学校でしゃべってるときも、下校のときも、寄り道した公園でも、いつも私のこと見てくれて、大きな声で笑ってくれて、面白いお話聞かせてくれて、つないだ手も大きくてあったかくて大好きで、ああ!安田くん!私は安田くんのこと大好きなんだよ、本当に!安田くんのこと大好きだって思ってる全部が安田くんに伝わればいいのに…!!はぁ…落ち着こう。安田くんと、きちんとお話しするんだ。

「…ふぅ、ん?」

なんだ、ろう…話し声が聞こえた気がする。やましいことなんて無いのに、校舎の影にこっそり隠れたまま花壇のほうを覗いてみた、ら…!!や、安田くんと、山田さん…が、居た…!!なッなんで…安田くん…!!わ、私と、約束したんじゃ…い、いやそうじゃなくて…安田くん、なんだか…だるそう…?なんだか体がだらーんとしてる。ちょっと慌ててる山田さんに覆いかぶさるみたいに、もたれかかるみたいに抱きついてる。い、いやだ…こんなの見てたく無い…けど、目が離せない…。怖い写真が怖いって分かってるのに見ちゃう感じだ。安田くん、本当は体調がよくないんじゃないだろうか?あんな風に山田さんにもたれかかって…山田さんも、安田くんのこと保健室に連れて行ってあげればいいのに…って思ってたら、安田くんが山田さんのあごをすぅっと手ですくいあげて、顔をちょっと傾けて…キスした。

安田くんが、山田さんに、キス、した。

心臓がいっかいどくりと鳴って、私の全部の色が抜けていっちゃった。力が入らなくなって、その場に座り込みそうになる。ああ、でも…キスしてる安田くん、すごくかっこいいなちくしょう…足がかたかた震える。ど、どうしよう…

「あッ! さんッ!!」
「ハデス、先生…ッ!!」

声をかけられた瞬間、ばしって電流が走ったみたいに私は駆け出して、また、逃げた。走って走って、走って逃げた。ハデス先生にもう1回呼ばれたけど、答えれない、答えられない。涙がぼろぼろ出て、ろくに前も見ずに走った。

安田くん。お話があるって言ったの、安田くんじゃないか…。どうしてそんな、嫌なもの見せるの?うそつくの?そんなだったら私、安田くんのこと嫌いになっちゃいそうだよ…(あ、安田くんはそっちの方が嬉しいのかな?)



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