08
夜中にやすだくんに会って、私からやすだくんのおでこにちゅうして…バイバイしてから布団に入ったらなんだか体がぽかぽかあったかくてきゅうって心臓が苦しくなって、どうしようもないから1人で布団の中でばたばたしてたらいつの間にか寝ちゃってた。あぁ、覚えてないけど…夢の中で安田くんに会えてたらいいなあ。

道徳少年

朝はホテルの食堂でバイキング朝食で、その後は各自お部屋で荷物の整理。10時にはロビー集合で10時15分にはバス点呼。彩は昨日の夜ぐっすり眠ってたくせに私の横でずっとあくびしてる。なんで彩ってあくびしてても可愛いんだろう?私なんてあくびするとお母さんに「おばけ」って言われるのに…。あ、そういえば安田くん…ちゃんとお部屋戻って寝られたかな?ていうか…あれ?そういえば、安田くん今朝はまだ見かけてないな…どうしたんだろう…。やっぱり怪我ひどくてみんなと一緒に行動できないのかな?ハデス先生もいないから…そうなのかな?あ、バス移動だ!!ほら、彩!!かばん抱えて寝てたら置いてかれちゃうよッ!!
ぼかぼかと暖房が効いたバスの中に入るとみんな座席の上の棚に荷物を乗っけたり席替えをしたりしててごちゃごちゃしてた。私と彩は前のほうの席だからあんまり大変じゃなかったけど、みんなががやがやしてる中で私がちょっとよたっちゃった時にだれかがそっと支えてくれた。

「大丈夫? さん?気をつけてね」
「え…あ、はい…ごめんなさい…」
「気にしないで。かばん貸して?上の棚に乗せてあげる」
「あ、の…ごめんね?ここA組のバスだよ?えっと…どこのクラス?」

私を支えてくれたのはクラスの子じゃなかった。というか…はじめてみる人だ…!!坊主で瓶底のメガネ…!!ええ?!誰だろう?!すごく物腰が柔らかで親切で…笑ってる口元がちょっと可愛いんだけど…誰だろう…背中に触ってる大きな手にちょっとどきどきする。だって…触るか触らないかですっごく恥ずかしい距離なんだもん…!!恥ずかしくてその子の顔から視線をはずして下を向く…と…ジャージに刺繍されてる『安田』って文字。…?やす…?!…ッ??!!

「どこのクラスって… さん、ひどい事言うなあ。安田貢広だよ、僕」
「ぼぼぼぼぼぼくぅ?!え?!あ!!…安田くん?!本当に?!え、あ?!髪の毛?!え…?!」
「あ、 さん、大丈夫?」

や、やすだくん?!そ、そういわれれば手の感じとか、笑った口元とか似てなくもないけど…!!違うッ!!これは…!!やすだくんじゃない…!!だってなんで坊主なの?!なんかあったの?!怪我の所為?!あ、でも怪我はもうすっかりいいんだね?!それは喜ばしい事だけど…だけど…!!

「こ、こんなの…やすだくんじゃなぁいぃ…」

私がショックのあまりにぐずぐず泣き出したらハデス先生が駆け寄ってきてくれた…!!うわああん!!先生ッ!!やすだくんが…うう、やすだくんがぁああ!!

「あー… さん、とりあえず席に座って…もうバスが出るからね。安田くんも自分の席について」
「はい。先生、 さんは大丈夫ですか?なんだか、僕の所為で泣いてしまったように思われて…仕方がないんですが…そうだとしたらすみません」
「え?!あぁ…いいから、ね?安田くんは席に戻って…」

やっぱりやすだくんじゃない…私は先生に言われて席に座ると彩が隣ですっごく嫌な顔をして「なにあれ?きもい…」ってつぶやいた。…そ、そこまでは言わないけど…あんなの…やすだくんじゃない…!!私はタオルで顔をおおって泣いてたらハデス先生が行きのバスとおんなじように水筒のコップにあったかいお茶を入れてくれた。…お茶よりも安田くんを治してあげて…!!きっと…きっとひどい風邪なんだよッ!!それで、それで…!!うう…先生ぇ!!

「 さん、落ち着いて。大丈夫安田くんは…あー、すぐ良くなるから!」
「…ほ、本当ですか?…やすだく、ん…もとに、もどりますか?」
「だ、だいじょうぶッ!!それよりも さんはまたバスに酔っちゃう前にもう寝ておきなさい」
「うう…はい…」


「ちょっと!美作くんッ! さんが寝てるんだから騒ぐのはやめてくれないかな?」
「え…お、おまえ誰だよ…マジで安田なのか?えろこじらすとそうなっちまうの?」

「藤くんも!座席は1人1席!2席つかって寝転がるなんて規則違反だよ!」
「…やすだ気持ち悪い」

「深田さんは さんが寝てるんだから、そんな隣でお菓子ばかり食べていたらにおいで さんが酔ってしまうかも知れないじゃないか!没収せざるをえませんね」
「はぁ?!ざけんじゃないわよ?!なんで安田にそんな事言われなきゃいけないのよ?!あっちいけッ!!」

「ちょっと、先生」
「ん?深田さん…どうかしたの?」
「安田がウザいんでどうにかしてください」
「あ…あぁ…うん。 さんにも頼まれたんだけどね…どうしよう…」
「どうにも出来ないんですか?」
「ううーん…安田くんの煩悩が強くなるような事してあげればきっともとに戻るんじゃないかなあ…って思うんだけど…ううん…ごめんね、僕にはどうしようも…」
「煩悩が強くなる事…」
「深田さん?」




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