09
ぷるるる、ぷるるる…耳元でなる呼び出しの音が長く感じる。まだちょっとしか走ってないのに息があがって体がぼかぼかあっつい。はぁって息をだすと口から出たあったかい空気がもわっとほっぺたに流れた。安田くん!電話でて…!!藤くんが教えてくれたのは中央広場のほう。わ、人いっぱい居るなあ…!!安田くん、中央広場で止まっててくれるといいんだけど…!!ランド内探し回るのは、ちょっと…無理、かも…!!

衝突地点まであと0m

がっくーん!!

「ぐえッ!!」

人と人との間をくねくねしながら走ってたらがっくんっておなかのへんにすごい力がかかった。ぐええッ痛いッ!!肩のベルトがおなかとおっぱいの間に食い込んでぐうって息が苦しくなった。なんだ?!この感じッ?!前もどっかで…!!ちょっと痛いのが不意打ち過ぎて、って言うか私走ってたからおなかにかかった力がすごくてちろちろ涙が出た。何が起きたのか考える前になんか、あったかいものにぼふんって顔を、体を包まれた。ええええ?!なにいい?!

「はぁはぁ、やっと見つけた…」「ん〜むぱっ!!やすだくんッ!!」

ぼふんってなったのは安田くんだった。ぎゅうって抱きしめられて(…!!)頭をぐぐって安田くんのむねのとこに押し付けられる。安田くんの心臓がすっごくはやく、大きくどくんどくんしてるのをおでこに感じて、私の心臓も安田くんに負けないくらいにどくんどくんした。はぁっはぁって安田くんが来るしそうに息をしてるから、ああ安田くん私のこと一生懸命探してくれてたんだなって事がすぐに分かった。ごめんね安田くん、ありがとう…!!ああ、もうやすだくん大好きだッッ!!ねぇ知ってる?!やすだくん!!私やすだくんのこと大好きなんだよ?!

「見つけれ、ないかと…思ったよ」

私の頭をぎゅうぎゅうするのをやめた安田くんがすっごいへにゃへにゃした困ったみたいな笑いかたした。安田くん、ごめんねごめんね…!!謝りたいのに、恥ずかしくて口が開かない、息が苦しくて声が出ない…言わなきゃいけないこと、言えないくせに涙ばっかり滲んでくる…だめだ、黙ったまま泣いたら…また、やすだくんのこと…困らせちゃう…

「やす、だくん…」
「ん」
「はぐれちゃって、ごめんなさッ…」
そこまで言うとやすだくんはまたぎゅうううって私の頭を抱きしめてぐしゃぐしゃした。うーとかあーとか言葉になってないことを何回か繰り返してからやすだくんがぼそっと「俺も、ごめん」って言った。私もやすだくんも、ちょっと言葉が足りないとこがあるね。ねぇ、やすだくん。私、これからはなんでもやすだくんに伝えたいと思うよ。今までだってそう思ってたけど、恥ずかしかったんだ。でも、こんな風にやすだくんに迷惑かけるくらいなら…私ちょっとくらい恥ずかしい思い、できると思うんだ。そのままちょっとの間やすだくんは私のこと抱きしめたままだったんだけど、ちょっと…ごめん、やすだくん…私、恥ずかしくなってきちゃったよう…だって、色んな人居るし…ね、ねぇ…やすだくん…

「安田くん…ごめん、くるしいッ」
「あ!悪ぃ」

安田くんはぱっと私を放してへへって笑った。それから、俺汗臭くなかった?大丈夫だった?!って急にわたわたしだして自分のわきとか臭いを確認し始めるから、大丈夫だから!こんなとこでそんなことしないでって止めたら一瞬ぼうっとしてからすごく大きな声で笑って道端にどかって座り込んじゃった。

「はははッ!!俺、ぜってぇ 怒ってると思った」
「え?!なんで?!」
「だって、俺 の事見失った上に、探すのにも時間かかって、結局アトラクション乗れてねぇし!」
「怒ってないよッ!!…ただ…」
「幻滅した?出来の悪い彼氏だって」
「…寂しかった」

そうやって言ったら安田くんはぱっと立ち上がって私の頭をよしよししてくれた。…たまにそうやってお兄さんみたいな事するの、すごく好きで…胸がきゅうってなる。子ども扱いされてるみたいでちょっと悔しいけど、それよりもずっと安心する。

「ごめんな」
「ううん。もういいの、だってやすだくんちゃんと私のこと見つけてくれたんだし」
「チャラにしていい?ようし!!じゃあ仕切りなおすか?!今まだパレード中だからアトラクションすいてるだろうしッ!!」
「ううん、2人でゆっくりしよ?」
「疲れた?…いいけど、アトラクションは?」
「いい。ただその代わり…」

ちょっとよくわかんないって顔したやすだくんのからっぽの左手をきゅっと私の右手で握る。あったかくて細くて、でも男の人っぽい感じがして大きくていつも私の髪型をくしゃくしゃにしちゃう、いつも緊張させられたり、安心させられたりする大好きな手。

「手、繋いで?」

安田くんはにやあって笑って私の手をぎゅううって握り返した。痛いって言ってもぜってぇ放してやんねぇ!!って笑われた。えー、いやだーって言って私も笑ってたけど、うそ。そのままずっと放さないでね、やすだくん。

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