09
なんか…あったかい…といか、ん?やわら、かい…。なんだろ、すっげぇいいにおいもする、し…なんかゆれてるのもきもちい…あぁ…なんだこれ…わかんねぇけど、もう…とにかく、ねむい…

揺れて傾く少年の心

ん…どこだ、ここ?…消毒みたいな匂い…あ、保健室か…あれ?なんで俺保健室に居るんだ?しかもベッドで寝てるし。カーテンが閉まってるからうっすら暗い。ん?俺、保健室でベッド借りて寝ようとは思ってたけど…途中で記憶が無い…。なんだっけ…誰かに会ったよな?女子…あ、 !!そうそう  。に、会ってぇ…そんでェ……。記憶が…ねぇ…。もしかして が俺のこと運んだ?え、まっさかー!!ないない、だってアイツあんなちっせぇのに無理だろ?え…でもなんか…なんかに運ばれたような感じ…したよな?あったかくて柔らかくていい匂いして…。…マジかよ。アイツ俺のこと運んで保健室まで来たわけ?えー?!

「先生っ先生っ!!本当に安田くん大丈夫なんだよね?!」
「 さん、落ち着いて。安田くん眠ってるだけだから大丈夫だよ」
「本当?!だって安田くん、すごく顔色が悪かったの!!」
「寝不足だったんだよ、ほら さん。授業始まっちゃうよ?」
「はい…じゃあ先生っ!!本当に安田くんの事お願いねっ?!」
「分かったよ、起きたら教室に行かせるから」
「うん。あ、でも!無理させないでね?!ちゃんと休ませてあげてね?!」
「わかったわかった」

 …と、ハデス先生の声…。…。やっぱり がここまで運んでくれたっぽいな…。ドアが開いて が出て行った。ぱたぱたって走る音が廊下に響いて遠ざかっていった。

「安田くん、すごく愛されてるね」
「…」
「起きてるんでしょ?」
「…はい」

先生は笑ってカーテンを開けた。俺はベッドの上で起き上がってまだちょっとぼうっとする頭を片手で抱えた。なんだ俺、マジでめちゃめちゃ思われてんじゃん…。深田の言ってた事マジだったんだな…。 が俺を…

「 さん、いつも僕に君の事相談しに来てたよ?」
「…俺も昨日 の友達に聞きました。俺のこと好きなんだって」
「安田くんは さんの事どう思ってるの?」
「…可愛いとは、思ってます」
「そうか…恋愛感情は?」
「そこなんすよねー… 可愛いんですけど」
「なにか問題でもあるの?もう付き合ってる人が居るとか?」
「いえ、彼女はいないんすけど…熱子が居るじゃないですか…俺には」
「…あぁ…」

そうだ。 は可愛い。顔とかそういう問題じゃなく可愛い。顔ももちろん可愛いが、立ち居振る舞いっていうか仕草とか話し方までもが可愛い。愛らしい。でも俺には熱子が…!!今日こんな眠いのだって昨日一晩中AKYの生ライブ映像見ながら一緒になって踊ってたからだ。それで寝不足・疲労で倒れた。そのくらい俺は熱子が好きなんだ。部屋だって熱子だらけで、もう…本当に…!!熱子命なんだ…!!けど!!

「揺らぎますよね…。あそこまで想われると…」
「…だよねぇ。あそこまで想ってくれる子、そうそう居ないよ?」

そうなんだ。熱子も好きだし、最近は も気になる。 は俺のことを好いてくれてる。でもやっぱり熱子はあきらめられない。だって俺の夢だ。生活の中心。女神だ。アイドルオタクって呼ばれたって構うか、俺は熱子が好きなんだ!!でも… の事も…

「美作くんが言ってたっけな…」
「…?美作がなんかあるンすか?」
「『遠くのバラより、近くのタンポポ』って。 さんはタンポポって言うよりはひまわりっぽいけどね」
「…でも、男は夢追っかける生き物じゃないっすか…」
「夢は見るものだと思うけどな。僕は」

そういうと先生はもうちょっと悩んでいったら?って笑ってカーテンを閉めた。また薄くらくなったベッドの上で俺は膝を抱えて目を閉じた。熱子も可愛い。でも、 も可愛い。…服の袖に付いたあのいいにおいが離れない。…俺、やっぱり の事…

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