おれとおまえ
俺は斜め前の席のみょうじが好きだ。でもたぶんみょうじは俺のこと好きじゃない。好きじゃないって言うのはおかしいか…嫌いって言うのは伝わってこないけどなんかこう…男女間のちょっとピンクいもやがかかったような、まわりにきらきらが飛んでたりするような可愛い雰囲気にはいまだかつて出会ったことが無い。たぶん「絡める男子」みたいなカテゴリーに入ってるんだろうな…。いつかの暑い日。体育の授業が外のグラウンドで男子はサッカー、女子はテニスって時があった。その日はみのりちゃんが出張で居なくてちょっとウザい男の先生が女子も男子も一気に指導してていろいろ適当になってた。誰か女子がすげぇ暑そうなところで見学してて、あれ?誰だろうって思って見てみたらみょうじだった。なんかもう死にそうな顔してて本当に辛そうな顔してて、声かけようと思ったけど、一瞬迷って押しとどまっちまった。なんにも口実が無い…。俺の足元に転がってるサッカーボールがささやく『俺をつかえよ』ボール転がしてそれ取りにいく振りして話しかければいいじゃん!俺天才。ってボールをみょうじのほうに蹴ったら思ったより力入っちゃってみょうじの顔面にクリーンヒット。冷や汗が止まらなかった。いそいでみょうじのところまで行って声かけるとだいぶぼうっとしててこれはやべぇって思って先生に言っていそいで保健室に連れてった。ハデス先生はすげぇ快くベッド貸してくれたんだけど、こんな状態のみょうじとハデス先生2人っきりにしたらちょっと…それって…だめじゃねぇ?あぶなくねぇ?それってえろビデオの王道じゃんって思ってハデス先生に俺もちょっと休んでってもいい?って訊いたらやばい笑顔で「いまお茶淹れるから」ってソファに通された。それからみょうじとよく絡むようになって俺的には万々歳なんだけど、なんかみょうじはけっこう俺にそっけない。あーただのクラスの男子なんだなあって感じ。だから俺からちょっかいかけるしかなくて授業中とかよく悪戯してやるんだ。んで、なんやかんやで二人で飼育小屋の掃除をすることになった。俺的には万々歳なんだけど…

さっきからみょうじミミちゃん(ウサギ)抱っこしたまま動こうとしない…え?なんで?動物と自由に触れ合う会じゃねぇよな?掃除だよな?なんで俺一人でホースもブラシもやらなきゃいけねぇの?

「おいみょうじミミちゃんばっかだっこしてないで掃除しようぜ?」
「だってミミちゃんが寂しそうな顔するんだもん」

そう言ってミミちゃんを持ち上げて俺の方に向ける。ミミちゃんは小さい鼻をぴくぴくさせてから土まみれの後ろ足をばたつかせた。

「ちげぇよこれは早く下ろせみょうじ馬鹿野郎って顔だ」
「はぁ?!何よそれ?!」

挑発してやればみょうじは案外あっさりとミミちゃんを放した。ミミちゃんはまさに脱兎のごとく藁が敷きつまれた寝床に入っていった。これでやっと掃除が進む…

「じゃあホース貸してよ」
「いやホースは俺だろ?」
「意味わかんない」
「みょうじほうき似合うって!ほうきにしとけ」

そうやってふざけあってホースの取り合いをしてたらなんでかホースが暴発。手を放したらぐねんぐねんと怒り狂った怪物(蛇系)みたいに床の上を暴れだした。水しぶきがとんで俺とみょうじはぎゃ-ぎゃ-言って笑いながら狭い飼育小屋を逃げ回った。床にたまった水溜まりで足を滑らせたみょうじの後ろ姿が俺の前で崩れそうになっている。

「あぶねぇ!」

ばっと一歩踏み出してみょうじの二の腕をぐっと掴んで俺の方に引き寄せた。あ…これってすげぇいい雰囲気なんじゃね?

「あ安田」
「大丈夫かみょうじ?」
「ちょっといいかな?安田とみょうじ…」

金網越しには何故かずぶ濡れになって立ち尽くしている先生。すげぇ怒ってる…俺は足下でしているおかしな音に気付いて目線を落とすとちょうど暴れまわっていたホースを踏んでいて方向と勢いがおかしくなった怪物は監視に来た先生にその一撃を喰らわしたようだった…

せっかく良い雰囲気だったのに…!!

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