オレンジ・ペコーにほろ酔い
あ-もう!お母さんのばかあ!!夕方なら駅まで車で迎えにこれるって言ってたのに!!電車の時間メールしたら『ごめんねいけません(o^∀^o)』って!!謝る気ないじゃん!ケータイにもとから登録してある顔文字使って余計にイライラするような文面に仕立てあげて!!あなたの可愛い娘の足がお陀仏したって構わないって言うのか!!友達と遊びに行ってたくさん歩いて足痛くてたくさんお買い物して荷物いっぱいなのに!!今から家まで…歩いて…。お腹空いたのに…。

自宅最寄り駅の自動改札を通り抜けてプレハブみたいな建物から出ると橙色のおっきな夕日が回りの空を浸食するみたいにぼやぼやと輝いていた。きれいだけどさ…これから歩くんでしょ?感動半減だわ。はぁ…でもずっとここに居るわけにもいかないし…。覚悟を決めて両手に握ったショップバックをふんっと握り直す。歩いて帰るのが無理だ!って距離じゃないんだ…けど…ね。目線を可愛いパステルピンクのエナメル素材てかてかのパンプスにおとす。…スニーカーにすればよかったな…。絶対に靴擦れおこす、ていうかもう足痛いもん。

「…はぁ」

ちりんちりんちりん!軽いけど鋭い自転車のベルの音がしつこく響いた。

「みょうじじゃん!」
「安田…?」

ちょっと離れたところから夕日を背負った自転車がぶんぶんと手を振りながら私の名前を呼んだ。安田だ。私には自転車に乗ってやかましく私を呼ぶ安田が白馬に乗った王子様に見えた。乗っけてもらおう!!私の前にしゅ-っと自転車を止めた安田が片足だけ地面に着けて私の方にちょっと傾く。

「すげぇ荷物だな。迎え待ち?」
「お母さん迎えに来れなくなっちゃって…。安田後ろ乗せてよ!」
「え、いいけど…俺の自転車ハブ付いて無いから足置くとこねぇよ?」
「いいよ裸足でぶら下げとくから!」

じゃあ荷物カゴにって言って私の手から荷物を奪って(って言い方は良くないな…)カゴに入れてくれた。私はそこでパンプスを脱いで手に持ったまま荷台にまたがった。危ないからつかまっとけよって後ろの私を肩越しに見ながら笑った安田がちょっと…かっこよく見えた。返事して安田のお腹のあたりに腕を回す。出来るだけ…胸が当たらないようにちょっと安田の背中に距離を置いて座ると安田が凄く不満そうな声でみょうじーって睨んできた。

「だって…恥ずかしいもん」
「出発しねぇよ?」
「…えろやす」

走ってくれないのは困るからきゅっと安田の背中にくっついてやった。安田はよしよしって言いながら自転車のペダルをぐんっと踏み込んで出発した。パンプスを履いてちょっと蒸れていた足に風があたって気持ちがいい。夕日が眩しいから安田の背中に隠れるみたいに頭を屈めるとなんかしゃべってる安田の声の震動が背中とひっついたところからあったかく伝わってきた。

「これ何買ったの?いっぱい袋あるけど」
「あ-服でしょ?化粧品と-服と…下着」
「下着が入ってる袋どれ?」
「なんで?」
「見ていいですか?」

靴持ってない方の手でお腹をつねってやろうと思ったけどなんだ?!安田お腹にお肉がない!!無い訳じゃないけど掴めない!!私みたいなぷにぷにがない!!なんでなんで?!学校で休み時間に私のお菓子ほとんど食べちゃうくせに…!!ちくしょう!!むかつくからひっかいてやった。服の上からじゃ絶対に痛くないけど…

「おい!運転中にあぶねぇよ!くすぐんな!」
「ひっかいたんだよばか!」

自転車がふらついてがたがたした道に入る。うあ!!お尻痛い!!

「…あのさ」
「なに?」
「ちょっと靴どけてくんない?」
「え-だって履いたら落ちちゃうよ」
「靴がさ…ちょっとあれなとこに当たってンだよね…」
「…!!えっち!!」

今度は手を放して頭をぺしんって叩いてやると「みょうじが下着とか言うから!」って変な言い訳された。私の所為ってか?!

「…みょうじが処理してくれるんなら…」
「はッ?!」
「…」
「…」
「なぁ…みょうじ?」

ぐうううぅぅぅ

「…ぅ」
「色気無ッ!!」

ううううっさい!!えろばかやすだ!!手に持ってたパンプスをちょっと前のめりになってカゴに投げ入れると夕日を反射してパンプスがてらっと輝いた。安田がなんかぼそっと呟く。

「その気無いなら胸押し付けんなよ…うぅ」

泣くほどの事じゃあないでしょ?!

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