ゆびさき、きみ光年
理科の授業が終ると先生がみんなにプリントを配り始めた。おいおい、つぎ昼休みだぜ?はやく解散してくれよ…

『課外授業のお知らせ 夏の星空観測』

ん…?なんだ、課外授業…って、響きがえろいな…。ここからは課外授業よ…あ!せ、せんせい!!お、俺そんな…!!安田くんは特に成績がよくないからァ…先生が特別にみっちり教えてあ・げ・る…?!見たいな?!いやあそれなら是非うけてぇけどさ!!先生とマンツーマンでみっちり隅々まで教えてほしいけどさ!!理科の先生男だし…。まぁ、そういう課外授業ってビデオの中だけだよな…。出ても出なくても成績には何の影響も無いって言うからそんなもんすぐさま紙ヒコーキにしてゴミ箱に格納してやった。誰がわざわざ学校終ってからクラスの奴らの顔見にくるんだっつうの!!しかも夜って!!俺は忙しいからそんな、星きれいだねー!!してらんねぇっつうの!!なので先生はやく解散させて弁当食わせてください。

「ひーろーくん!!」
「お、おなまえじゃん。どうしたのわざわざA組まで…」
「えっへへー!!」

弁当食ってたらぱたぱた走ってきた可愛い俺の(幼馴染の)みょうじおなまえ。おなまえはC組だから、教室が遠い。急いできたのかちょっとほっぺたが赤くなってて息があがってるのが可愛いちょう可愛いもうほんと大好き。好き好きおなまえちゃんほんと好き。言ったこと無いけど…てか、言えないけど…!!しゃがんで俺の机にあご乗せてうふふうふふって笑ってる。なになに?なにがそんなにおもしろいの?!もしかして誰かに告白された?!え、え?!だ、だめだよ?!俺はぜってぇ認めねぇからね?!かれこれ10年近く?おなまえに近づく男をそれとなく遠ざけてきた俺の苦労を台無しにしてくれる気かあ?!

「これ!一緒に行きませーんか?!」
「『課外授業のおしらせ 夏の星空観測』?」
「そー!!これね、うちのクラスは昨日もらったんだけど、お母さんに聞いたら夜だからだめ!って…でもひろくんと一緒ならいいよ!って!!」
「お、おう…マジで?おばさんそう言ってたの?」
「うん!ひろくんならお願いしたら一緒に行ってくれるんじゃない?って!!ね?!行こう!!」
「お、おう!!」

ぺらんと突き出されたお便り。俺は参加希望の申込書と兼用になってるその紙を探しに急いで理科室のゴミ箱へと走った。

「あ!ひろくーん!!」
「おう!って!そんな薄着でいいのか?!うっすうすじゃん?!」
「えー、うっすうすって…そこまで薄くないよう!夏だもん!暑いし!」

なにあれなにこれ?!なんかしゅるしゅる?!しゃかしゃか?!よく、あーうまく表現できないけどおなまえが着てる服すげぇ薄くてピンクでこちゃこちゃしてて…!!あーのー!!えろい!!えろかわいい!!俺と一緒に居ていいのかな?!これ?!大丈夫かな?!俺が!!可愛い・・・そんでもって…なんか…うっすら化粧してる?いや、唇になんか塗ってるだけ?なんかこう、ぷるんってしてる…う、うまそう…。一生懸命自分と戦いながら集合場所の公園に行くと結構生徒が集まってて先生も嬉しそうに観測用の器具諸々を並べていた。おーあー…ううん…けっこう…いや、だいぶ。興味がねぇ…。実際おなまえが行こうって誘ってなかったら俺全然来る気なかったし…。おなまえは女子の友達見つけちまうと嬉しそうにそっちに駆けてった。…帰りも送ってかなきゃいけねぇし…ベンチ座ってまってるか…。なんか暇つぶし持ってこればよかったなあ…。先生が点けてたランタンを全部消すと、公園はちょっと驚くくらい真っ暗だった。あれが夏の第三角形だ、デネブ?ベガ?なんちゃらかんちゃら先生が空に指をさしながら説明してる。ふーんとかへーとか生徒の生返事が後に続いた。みんなは望遠鏡を覗きたいがために来たっぽい。ロマンチックだねぇええ。ベンチでだらーんとしてると、すとんと誰かが隣に座った。暗い中でちょっと慣れてきた視界に入る隣のやつの手。ゆびさきにくっついた小さな形のいい爪にはきらきらと輝くラメがねっとりと塗られている。

「星、きれいだよ!ひろくんも望遠鏡見ればいいのに!」
「んー、あの行列には並びたくねぇしなあ…どうだった?」
「すごいよ!なんかね!手が届きそうなの!!わたしつい手伸ばしちゃったもん!!」

届くはず無いのにね!ときゃはきゃは笑うおなまえ。隣に座ってるっていうのは結構相手の顔見るの気まずくて、俺はずっとベンチに放られたおなまえの左手を見てた。そんな…マニキュアなんて普段しないから塗り方がへたくそなおなまえ。根元にたくさんラメが残っててごてごてしてる。爪の先にはもうラメが残ってなくてたまにキラッと光って、あっ居たの?みたいな薄い感動があった。ちいさなラメの粒が青とか緑とかオレンジとか黄色とか色んな色に光っててまるで星空の縮小図だ。それが5個、おなまえのゆびさきに乗っかって、俺を魅了する。手を繋いでしまいたい。あー、どうせ手も繋げない…ただの幼馴染のくせにさ、おなまえの事気にしてる男子を片っ端から殴ったり蹴飛ばしたり諦めろ!って説教したり…俺はおなまえのなんだってんだ?!幼馴染さっ!!わくわく星空を指差してきゃっきゃきゃっきゃはしゃぐおなまえ。いま星が光って見えてるのは、本当はもう何年も前にガスの塊が宇宙で燃えてたからなんだって、その光がやっと今地球に届いたんだって。星捕まえるのってやっぱり無理なのかなあ?遠いもんね!!しかも燃えてるんだし!!そうやって考えるとすごいよね!!本当にっ!!楽しそうに天体観測してるおなまえの横で俺は、手をわきわきさせてまだおなまえの手を繋ごうか、どうかを悩んでる…。あー!!やだなああ!!!こういうじれったいのは性に合わねぇええ!!こんなに近くに感じるのに、おなまえのゆびさきはこんなに遠くて…でもなんだか今日は…どうしてだろう。手を伸ばせば届きそうな気がするんだ…だから

「おなまえ…」
「ん?なあにひろくん?おトイレ?」
「…手、繋いでもいい…ですか?」
「…もちろん。どうぞ」

(とどいちゃったよ!!)

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